質の良い眠りを得るための習慣②
④入浴の習慣
汗をかかない程度のお湯に5~10分入る
入浴は良い睡眠をサポートします。しかし、熱い風呂に入ると体温が上がり、交感神経が優位になって、身体は覚醒状態になってしまうのでNG。少しぬるいかなと感じるくらいの38~40度くらいのお湯に5~10分くらい入るのがお勧めです。
また、深部体温をうまくコントロールすることも質の良い睡眠を得る秘訣の一つ。入浴で深部体温を少しだけ上げることで血行が良くなり、その後は身体の末端から熱を逃がして深部体温を下げていきます。深部体温が下がり始めると眠くなってくるので、眠る2時間前くらいまでに入れば、スムーズに入眠できます。
⑤寝るときの習慣
眠れないときは一度ベッドから出ること
良い睡眠を得るには、寝るとき以外はベッドに横にならないことを心がけましょう。人は、場所と行動をセットで記憶するクセがあるので、日常的にベッドでスマホを触ったり本を読んだりしていると、いざベッドに入っても身体が勝手に覚醒モードになってしまいます。
また、眠気を感じるまでベッドに入らないことも重要。「毎日○時に寝よう」と決めてベッドに入って眠れないことが続くと、「ベッド」と「眠れない記憶」が勝手に結びつき、不安や緊張となって眠りたくても眠れなくなってしまうのです。眠れない状態の慢性化を防ぐためにも、目安として15~20分眠れなかったら一度ベッドを出てリセット。
大切なのは眠った時間ではなく睡眠の質です。気持ちの切り替えをしてリラックスモードになるよう心がけを。なお、夕食後あたりから照明を間接照明のような暖色系の明かりにすると、身体は眠るモードになってきます。
⑥仮眠の習慣
昼寝の条件は「15時までに20分以内」
昼食後などに短時間の仮眠をとって自律神経をリセットすると、スッキリして午後の作業効率がアップします。仮眠をとる際に注意するのは、「15時まで」と「20分以内」にすること。これ以上遅い時間、または長い時間寝てしまうと、目覚めたあとに眠気が残ったり、夜眠れなくなる原因になったりします。
また、仮眠をとる直前にコーヒーや緑茶、エナジードリンクなどのカフェインを含む飲料を飲むのがお勧め。カフェインの覚醒効果が現れるまで20~30分ほどの時間がかかるので、仮眠の直前に摂取すると、ちょうど起きたい時間にカフェインの覚醒作用が現れ、起きやすくなります。
【コラム】疲労と睡眠の深い関係とは?
そもそも睡眠の目的とは、「眠る」ことではなく、「前日までの疲れを回復させる」ことです。では、疲労を回復させる「質の良い睡眠」はどうすればとれるのでしょう。
運動で身体が疲れる場合も、デスクワークで目や頭が疲れる場合も、どちらも「脳にある自律神経の中枢」が関係しています。自律神経とは、呼吸、消化吸収、血液循環などを調整している神経で、身体のほとんどの器官は自律神経の中枢にコントロールされています。さらに自律神経には、身体を活発にする交感神経とリラックスさせる副交感神経があり、相互にバランスをとっています。このバランスが乱れると自律神経の中枢に疲労が溜まっていくのです。
自律神経の中枢は、睡眠のリズムもコントロールしているため、自律神経の中枢が疲弊すると、睡眠リズムや深度の統制が悪化し、自律神経の中枢の疲労が回復せずに、疲れたまま朝を迎えるという悪循環が生まれてしまいます。
質の良い睡眠を得るためには、日中は自律神経が円滑に働く習慣を心がけ、夜間は自律神経が休まる状態と環境を整えてあげることが重要なのです。
梶本修身(かじもと・おさみ)
大阪市立大学大学院 医学研究科疲労医学講座特任教授/東京疲労・睡眠クリニック院長
1962年生まれ。大阪大学大学院医学研究科修了。2003年より産官学連携「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者を務める。ニンテンドーDS『アタマスキャン』のプログラムに携わる。『スッキリした朝に変わる睡眠の本』(PHPエディターズ・グループ)など、疲労と睡眠に関する著書多数。(『THE21オンライン』2018年11月号より)
【関連記事THE21オンラインより】
・疲れを溜めない「戦略的『睡眠』習慣」とは?
・眠りのプロが厳選したお勧め快眠グッズ
・日本は世界的に見て“睡眠不足の国”?
・スッキリ目覚めて疲れが残らない睡眠術
・「質の良い眠り」を得るための睡眠HACKS12【後編】