「結婚するから扶養に入る」「子どもの扶養、どっちに入れてる?」など、法律用語の中でも馴染み深い扶養ですが、扶養を受ける条件は制度ごとに違うことはご存知ですか?人によっては、家族の年収が1円多くなることで、手取り収入に大きな影響が出ることもあるんですよ。今回は、扶養家族になるための年収上限をチェックしていきましょう。
扶養とは
家族を扶養すると、さまざまな優遇措置を受けることができます。優遇処置の中でも家族を扶養している人への影響が大きいのが、所得税と住民税の扶養控除と、健康保険の被扶養者の仕組みです。
具体的には、所得税・住民税の扶養控除は、所得税と住民税の課税所得(税金の両立を掛ける所得金額)から、扶養している親族に応じて控除(減額)する仕組み。社会保険の被扶養者は、保険組合加入者(扶養者)の被扶養者になることで、被扶養者は保険料の負担なく健康保険組合に加入できる仕組みです。
どちらも扶養に対する優遇措置ですが、税と健康保険では仕組みが違い、優遇を受けるための条件も異なります。
税制上の「扶養控除」を受けるための年収要件とは?
給与に課税される所得税と住民税の扶養控除を受けるためには、扶養の条件に当てはまる必要があります。この条件は、扶養親族一人一人に対する所得制限です。所得制限を1円でも超えてしまえば、控除を受けられません。
税制上の扶養控除を受けるための所得制限は、年間の合計所得金額が38万円以下 (給与のみの場合は給与収入が103万円以下)であることです。さらに、扶養する親族によっては特別控除を受けられたり、課税されない所得があります。以下に、配偶者、子供、親の場合の所得制限を列挙しますので、参考にしてください。
1.配偶者の場合
・配偶者控除……給与年収上限103万円
・配偶者特別控除……給与年収上限150万円まで配偶者控除と同額の控除。段階的に201万円まで適用範囲が拡大します。
2.子の場合
・給与年収上限103万円
ただし、対象になるのはその年の12月31日現在の年齢が16歳以上の子どものみ。
3.親の場合
・給与所得のみなら……給与年収上限103万円
・年金所得のみで65歳未満……年金収入上限108万円
・年金所得のみで65歳以上……年金収入上限158万円
所得税と住民税の控除される金額には違いがありますが、扶養親族の基準に関しては共通です。
また、住民税の場合は、パート収入が100万円以下であっても、住民票がある市区町村によっては住民税の均等割がかかる場合があります。例えば、千葉県木更津市の場合、均等割非課税額は28万円です。このようなケースでも、給与年収上限103万円以内であれば扶養控除の対象になります。
扶養控除される税金額はどれくらい?
扶養控除される額についても見ていきましょう。扶養親族で控除される金額と対象となる条件について、一般の控除対象扶養親族、特定扶養親族、老人扶養親族(同居老親・同居老親以外)でまとめました。
一般の控除対象扶養親族……所得税38万円・住民税33万円
扶養親族の対象は、子ども手当が支給されない16歳以上に限られています。
特定扶養親族……所得税63万円・住民税45万円
特定扶養親族とは、「課税対象年の12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人」をいいます。
老人扶養親族(同居老親等以外の者)……所得税48万円・住民税38万円
老人扶養親族とは、「課税対象年の12月31日現在の年齢が70歳以上の人」をいいます。
老人扶養親族(同居老親等)……58万円・住民税45万円
同居老親等とは、老人扶養親族にあてはまり、さらに納税者本人か配偶者の直系の尊属で、普段同居している人をいいます。病気の治療のために入院している場合は「同居している」とみなされますが、老人ホーム等へ入所している場合には、同居しているとはいえないため注意が必要です。
社会保険の「被扶養者」に入るための収入要件とは?
会社員の場合、全国健康保険協会管掌健康保険(以下「協会けんぽ」)もしくは健康保険組合に加入します。その場合、家族は「被扶養者」として、新たな保険料の負担をすることなく同じ保険に加入できます。その場合の収入要件は、税制の要件と異なる点に注意です。
協会けんぽの場合の収入要件は以下のようになっています。
年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入※180万円未満)かつ
同居の場合……収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
別居の場合……収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
健康保険の場合の年間収入は、昨年実際に受け取った年収のことではありません。所得税・住民税は実際の収入に対して計算されますが、健康保険の年間収入は、年間の見込み額です。また、被扶養者の収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれます。
税・健康保険上の収入要件の違いに注意
税と社会保険、それぞれに異なる扶養の仕組みですが、年末調整や入社・退職のタイミングでしっかり手続きすれば、難しいことはありません。お勤めの方なら、所得税・住民税については年末調整で会社から申告してもらえます。収入要件が税制面と健康保険で大きく異なるので注意が必要ですが、あなたの収入で生活している家族がいるなら、きちんと手続きをしましょう。
文・沼田絵美/fuelle
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