投資マネーは再び地方へ
不動産証券化のプレーヤーや投資家たちの関心が高いとはいえ、都市部にはJリートの投入基準に見合う優良物件が少なくなり、投資機会が減っていることは否めません。物件の取得状況を見ると明らかです。
東日本大震災の復興やオリンピック関連施設の建設などで、職人に払う人件費や資材費が高騰し、2012年以降、建設費の値上がりが続いているためです。特に職人不足による人件費の高騰は、人材育成ができないまま高齢化を迎えてしまった建設業界全体の問題とも言えますので、短期間で解決できるものでもありません。
では、東京で資金投下できない場合、プレーヤーたちの資金はどこに向かっているのでしょうか? それは地方です。地方への投資は2004年ごろからすでに始まっていましたが、リーマンショックの影響などもあり、2008年以降は影をひそめていました。その投資戦略が今再び脚光を浴びています。大阪・名古屋のほか、秋田や静岡、沖縄などでも資金が投入され、投資家たちは地方での投資機会を見つけるために、地銀や地場の不動産会社との関係構築を急いでいます。国内プレーヤーが足踏みするような案件でも、個人投資家や海外投資家は資金投下のスピードを高めて、投資機会を得るために積極的になっているようです。この点は最近の日本の不動産投資市場の特徴と言えるのではないでしょうか。
オフィス市場、空室率低下で賃料上昇に期待
最後に、用途別証券化対象不動産の中で、一番割合が多いオフィス(34.1%)の空室率と賃料についてみてみましょう。日本の賃貸オフィス市場は6割が東京区部に集中しています。リーマンションショック以降、東京オフィス市場の空室率は高水準が続いていましたが、5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)の6月末時点のオフィス空室率は6.45%まで低下し、賃料は底打ち後、6カ月連続で前月比を上昇しています。
また、全国のJリート保有物件の空室率を見てみると、オフィス、商業施設、住宅、物流施設とも低下傾向にあることが分かります。一部の市場関係者からは優良オフィスは品薄感があるという声も聞かれ、2014年は優良オフィスの明確な賃料上昇に期待が寄せられるところです。