これまで空き家問題は、地方や過疎地のこととして語られるシーンが目立ちました。しかしこの問題は今、大都市にも確実に広がっています。しかも東京23区内、その中でも人気エリアと言われる都心でも膨大な空き家が存在します。これからの不動産経営は増え続ける空き家との戦いです。突破口はあるのでしょうか?

東京都心の千代田区・中央区・港区でも空き家率10%超

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(画像=PlusONE / shutterstock)

空き家問題が目をそらせないところまで深刻化しています。全国の空き家数は820万件を突破(平成25年)、ここ20年で1.8 倍に増加……このような結果を聞いた時、空き家は過疎地や地方都市の問題と感じる方もいるでしょう。あるいは、首都圏でも限られたエリアの問題という印象を持つ方もいるかもしれません。

しかし、空き家問題が深刻化しているのは地方も大都市も変わりありません。東京都でも現在進行中の問題なのです。東京都都市整備局のデータによれば、東京23区でもっとも空き家数が多い区は大田区の6.2万戸。空き家率では豊島区の15.8%が最高です。

といっても、大田区や豊島区が抜きん出て空き家が多い訳ではなく、他の区も10%前後の空き家率がほとんどです(江東区など一部を除く)。東京の中でも一等地が集中する都心3区の空き家率は、千代田区13.3%、中央区10.6%、港区12.9%と軒並み10%超。空き家問題の深刻さがえます。東京都の大きな流れとしては、空き家率自体はここ20年10%前後で推移していますが、空き家のストック数自体は着実に積み上がっています。

〈東京都内の空き家数の推移〉
平成10年 62.4 万戸
平成15年 66.5 万戸
平成20年 75.0 万戸
平成25年 81.7万戸
出所:東京都都市整備局「空き家の現状と取り組み【資料集】

東京都内の空き家の7割以上を賃貸物件が占めている

もうひとつ抑えておきたい現実は、空き家のかなりの割合を賃貸物件が占めていることです。この傾向は、全国平均よりも東京都内の方が顕著です。東京都全体の空き家数は81.7 万戸あります。このうち、59.8万戸を賃貸物件が占めます。つまり、東京都内の空き家の7割以上を賃貸物件が占めているのです。

空き家になっている59.8万戸の賃貸物件から、腐食や破損がひどい物件を除くと43.7万戸。この膨大な住宅が活用されず、放置されているのです。今後、この賃貸物件のストック数が増えていけば、エリア内の家賃相場を大きく下げたり、空室リスクを極端に高めたりする要因になりかねません。

マンションなどの非木造住宅の方が空き家は多い

ここまでの内容を読んで、「空き家数を押し上げている賃貸住宅は築年数の経った木造アパートでは?」と感じる方もいるかもしれません。しかし、空き家になっている共同住宅の構造を比べると、木造10.1万戸に対し、非木造は37万戸になっています。つまり、アパートなどの木造の3.7倍もマンションなどの非木造の空き家があるということです。

とりあえず人口が集中している東京都内に投資マンションを買えばなんとかなるだろう……といった考え方はリスクがあることをこれらのデータは教えてくれます。

築5年以内の新しい物件でも空き家リスクがある

最後に見逃せないのは、空き家になるのは「古い物件に限らない」という事実です。下のデータでわかる通り、空き家の約1割を「築年数5年以内」の物件が占めているのです。築浅物件は空室にならないという思い込みは捨てましょう。

〈空き家となっている住宅の築年数〉
5年以内 9.3%
6-10年以内 5.7%
11-15年以内 7.7%
16-20年以内 9.2%
21-25年以内 11.1%
26-30年以内 11.3%
31-35年以内 12.1%
36年以上 33.6%
出所:東京都都市整備局「空き家の現状と取り組み【資料集】

とはいえ不動産投資は“入居者さえいれば”安定した資産運用になります。この大空室時代のリスクを回避しながら、経営を成立させる方法はないのでしょうか?セオリーで言えば「人気駅の駅近物件に絞る」「入居者付けが得意な管理会社をパートナーにする」などの策が有効でしょう。いずれにしても、これからの不動産投資には、より綿密なプランニングが求められます。

文・J PRIME編集部 (提供:JPRIME


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