マイホーム売却時の税金がどうなるのか、気になる方は多いかもしれません。結論からいえば、マイホーム売却時に使える特例により、譲渡所得は節税できます。ただし、特例を使うには資産を譲渡した日の属する年の翌年の2月16日(2019年は2月18日)から3月15日までに申告をしなくてはなりません。昨年(2018年)に自宅を売却された方、またはこれから自宅を売却される方はぜひ確認してみてください。
マイホーム売却前に知っておきたい 譲渡所得の定義
マイホームの売却を検討するときに覚えておきたいのが、譲渡所得の基本です。そもそも譲渡所得とは、資産の譲渡による所得のことで、土地や建物、株式、金、骨董品、宝石類、船舶、ゴルフ会員権などが含まれます。資産の譲渡とは、お金のやりとりがあったかにかかわらず、所有資産を移転させるすべての行為を指します。移転させる行為とは具体的に売買、交換、競売、財産分与などです。
また、個人だけでなく法人に対して資産を贈与した場合も、譲渡所得に該当します。さらには、1億円以上の有価証券などを所有している一定の居住者が国外転出等をする場合にも資産の譲渡に該当します。
マイホーム売却前に知っておきたい 不動産の譲渡所得の原則
資産の中でも土地や建物などを譲渡した場合には、分離課税制度という給与所得など、ほかの所得とは合計しないで個別に課税する制度が採用されています。注意したいのは、不動産の所有期間によって譲渡所得に対する所得税の税率が変わってくる点です。
・長期譲渡所得(譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年超の場合)
課税長期譲渡所得金額×(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)
・短期譲渡所得(所有期間が5年以下の場合)
課税短期譲渡所得金額×(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)
上記のうち勘違いしやすいのは、長期譲渡所得の条件である「所有期間5年超」という部分です。一例を挙げると、平成25年11月10日に購入した資産を平成30年11月11日に譲渡した場合、保有期間は5年超です。しかし、これでは長期譲渡所得扱いになりません。なぜなら、あくまでも条件は「譲渡した年の1月1日で5年超」だからです。つまりこのケースだと、平成31年1月1日以降に譲渡した場合に長期譲渡所得になります。
なお、土地や建物の譲渡所得がある人は、下記の書類を作成して、ほかの所得と共に申告するのが原則です。
- 確定申告書B
- 分離課税用の第三表
- 計算明細書など
さて、次の項目からは、マイホームの譲渡所得を節税できる特例を紹介していきます。
マイホームの譲渡所得は3,000万円まで特別控除枠がある
マイホームを売って譲渡所得が生じても「3,000万円までは控除を受けられる」という特例があります。この特例の特長は、「所有期間の長さに関係なく」控除を受けられる点です。さらに、要件が少なく使い勝手がよいという魅力もあります。このような特例では、要件が細かく設定されている場合が多く、「要件をじっくり読むと該当しない」というケースもよくあります。しかし、この3,000万円までの特例は要件が少ない分、使える方の割合が高いでしょう。主な要件は次の通りです。
- 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とその敷地や借地権を売ること
- 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること(その期間空室でも貸付にしていた場合でも適用可)
- 売り手と買い手が配偶者(親子や夫婦等、内縁関係を含む)、直系血族、同族会社でないこと
ただし、明らかに特例を受けるために入居した家屋や、別荘などの趣味や娯楽のための家屋は適用除外とされています。マイホームが対象なので当然といえるでしょう。特例が適用されるには、確定申告書に土地・建物用の譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)を添えて確定申告することが必要です。場合によって、住民票や戸籍の附票の写しなどが必要になるので、事前に確認しておきましょう。
3,000万円まで特例とセットで使いやすい軽減税率の特例
もうひとつ、使いやすくメリットの大きい特例に「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」もあります。内容は、一定の要件を満たしていた場合には(下記参照)、長期譲渡所得の税額を通常よりも低い税率で計算できるものです。なお、これは前項で紹介した「3,000万円までの特別控除枠」と組み合わせて使えるのもポイントです。特例を受けるための主な要件は以下の通りです。
- 現在住んでいる家屋(と合わせて敷地)を売るか、過去に住んでいた家屋や敷地の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 売った年の1月1日において売った家屋や敷地の所有期間が10年を超えていること
- 売った年の前年および前々年にこの特例を受けていないこと。また、マイホームの買い換えや交換の特例といった各種特例の適用を受けていないこと
- 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと
具体的な内容として、通常の長期譲渡所得は「課税長期譲渡所得金額×20.31515%」という計算式でした。これに対して、この特例を使うと6,000万円以下の部分は「課税長期譲渡所得金額×14.21%」、6,000万円を超える部分は「(課税長期譲渡所得金額-6,000万円)×20.315%」が適用されます。
特例の適用を受けるためには、確定申告書に土地・建物用の譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)、売った居住用家屋やその敷地の登記事項証明書を添えて確定申告することが必要です。場合によって、戸籍の附票の写しなどが必要になるので、事前に確認しておきましょう。
妻や子と共有名義にすると6,000万円まで控除枠が拡大
先に解説した3,000万円までの特別控除枠の特例をうまく活用することで、さらに特別控除枠を広げることができます。これは簡単に実行でき、大きな節税効果があります。相続対象の土地・建物が被相続人の単独名義だと、3,000万円までしか特別控除枠がありません。この単独名義を子や妻との共有名義にすると、特別控除枠が2倍の6,000万円(ただし、一人あたりの控除枠は3,000万円)まで広がります。
共有名義にするタイミングは原則、被相続人の生前であればいつでも可能です。注意点としては、特例が適用されるには、共有者各自が確定申告を行う必要があるほか、敷地だけの共有では控除枠を広げることができません。
共有名義による6,000万円までの控除枠拡大 参考事例
前項で紹介した、共有名義によって控除枠を6,000万円まで拡大する特例の理解を深めるために、国税庁の公式サイトで紹介されている参考事例を見ていきましょう。夫と妻でマイホームを共有名義している事例です。マイホーム売却によって発生した譲渡益は5,000万円。内容的には、家屋・敷地ともに「夫5分の3」「妻5分の2」の割合で共有しています。これらの条件に基づき、夫と妻の譲渡所得を計算すると次のようになります。
夫:譲渡益3,000万円-特別控除枠3,000万円(最高3,000万円を適用)
妻:譲渡益2,000万円-特別控除枠2,000万円(最高3,000万円のうち2,000万円を適用)
上記の計算によって夫と妻ともに譲渡所得は0円になりました。
マイホームを売却するときはこの3つの特例を要チェック
ここで紹介した3つのマイホーム売却時の特例は、一定の節税効果があり、さらに使いやすい特徴があります。マイホーム処分時には必ずチェックするようにしましょう。
- 自宅売却時の3,000万円までの特別控除枠
- 自宅売却時の軽減税率(ただし長期所有のみ)
- 自宅売却時の共有名義による6,000万円までの特別控除枠
これらの特例のメリットは、譲渡所得を確定申告することで得られます。スムーズに利用するためには、税務署や顧問税理士に事前相談するのが賢明です。なお、それぞれの特例の細かい要件などを知りたい方は、下記の国税庁サイトをご参照ください。
- 「マイホームを売ったときの特例」(3,000万円まで特例)
- 「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
- 「共有のマイホームを売ったとき」(共有による6,000万円まで特例)
(提供:Wealth Lounge)
【オススメ記事 Wealth Lounge】
・相続対策は「不動産評価」が決め手!その3つの具体策
・ビジネスジェットはなぜ日本で広がらないのか?3つの誤解を解く
・世界が混迷する今だから学びたい投資の原則!「相場の神様 本間宗久」の言葉
・企業もふだんの行いが見られる時代!投資の評価軸として広がる「ESG」とは?
・「相続対策の不動産投資」と「通常の不動産投資」。決定的な違いとは?