前週末の海外時間では、米中通商協議は為替に関して最終合意に至ったものの、米国による関税率引き上げを回避するような合意には達しておらず、協議は24日まで延長されることになったため、ヘッドライン待ちの情勢であったものの、トランプ大統領より「中国との貿易協議において知的財産権保護や技術移転、農業、サービス、通貨やその他多くの問題で大きく前進したことを報告できてうれしい」、「3月1日に予定していた中国に対する関税引き上げを延期するだろう」との発言が本日の東京時間に出てきたことから、ドル円は110.80円台まで反発しています。

現在も米中閣僚級会談が行われており、引き続きヘッドラインには最大の注意を払わなくてはならないでしょう。ただ、前週末からドル高、ドル安に振れる材料は出てきているものの、いずれもレンジを受ける動きには至っていないため、余程のサプライズがない限りは110円台を中心とした動きがドル円は継続する見通しです。

気を付けないといけない点としては、米国が中国に対して人民元相場を切り下げないという公約を取り付けた場合でしょうか。明確にこの公約が前面に出てくるようであれば、日米通商協議において日本はかなり後手に回る形でのスタートになります。特に、ドル円がレンジ安値圏から反発した最大の要因としては黒田日銀総裁の「円高になり経済・物価に対して影響が出た場合、2%の物価目標達成に必要ならば追加緩和を検討」との発言です。この発言の理論が崩れてしまいますし、米国は円安誘導と考えられる措置には一層厳しいスタンスで臨むことが予想されます。その場合は、ドル円は下落すると考えらますが、ドル安でなく円買いになる可能性が高く、他のクロス円にも影響は波及しそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

週末動きがあった内容としては、英テレグラフ紙が「メイ英首相はEU離脱期限の2カ月延長を検討している」と報道しているようにポンドの動きがメインになっています。一時ポンドドルで1.2970ドル付近まで下落したものの、1.3070ドル台まで反発しており、ようやく何かしらのアクションがあるのではないかと考えられています。ただ、一部ではメイ英首相は、EUとの離脱協定案の是非を問う英議会での採決は今週には行わず、3/12までに行うと表明したと報道されており、EU離脱期限の2カ月延長が早期に決まらないと先行き不透明感からポンド売りが強まるかもしれません。

米中通商協議、ブレグジット関連の報道以外では、トランプ大統領は27日-28日の2日間の日程で北朝鮮の金正恩・労働党委員長との二回目の首脳会談を行う予定です。昨年のシンガポールでの会談以降、具体的な成果は出ていないため、トランプ大統領は今回は何らかの具体的成果を狙うものと見られています。ミューラー特別検察官のロシア疑惑に関する最終報告書が月内あるいは3月初めにも出来上がると言われており、また、メキシコ国境の壁建設費用を捻出するために、国家非常事態宣言を行ったものの、民主党などの反発は極めて強く、来年の大統領選で再選されるためにも、トランプ大統領は結果を求めているでしょうし、具体的に前進するものと考えています。

また、26日、27日にパウエルFRB議長の半期議会証言が注目されます。焦点としては、本年度FRBは追加利上げができるかどうかという点でしょうか。FOMC議事要旨から大きく乖離する内容になるとは考えづらいものの、FED高官の発言内容がややハト派よりからニュートラルになってきており、状況によっては、現在のレンジを抜けるイベントになるかもしれません。

ユーロドルのロングメイクは1.1320ドル

前週末の海外時間にて、ようやくユーロドル1.1320ドルのロングメイク成功です。1.1300ドルがサポートラインとして意識されることや、欧州関連の報道で悪材料が出尽くした感があるため、ロングでの戦略としています。1.1280ドル下抜けを撤退目途として、1.1320ドル付近でのロング、利食いについはまずは1.1380ドルを上抜けるかどうかの見極めです。

海外時間からの流れ

米中通商協議においては、24日まで延長されたことで、もしかしたらという思惑がドル円の動きを停止させましたが、本日のヘッドラインにて順調であることが確認されました。こうなると、焦点は「人民元相場を切り下げないという公約」が盛り込まれるかどうかでしょう。この公約が盛り込まれないのであれば、円安方向に向かうでしょうし、盛り込まれれば円高に向かうはずです。ただ、どちらにしても、ドル円のレンジを抜けるまでの材料にはならない公算です。

今日の予定

本日は、主要な経済指標は予定されておりません。要人発言としては、カーニー・英中銀総裁の記者会見が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。