「われわれは、GoogleやFacebook、その他の企業と競合することになるだろう」。これは巨大銀行、投資銀行を展開するJPモルガン・チェースCEO、ジェイミー・ダイモン氏の言葉です。

この発言からもわかるように、銀行は非金融業から参入する企業を強く意識しています。事実、Google、Apple、Facebook、Amazon、Alibabaに代表されるテクノロジー企業が、自社の持つ技術とプラットフォームを武器に、金融関連事業に乗り出しています。

FinTechによって銀行業界も変わる!

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(写真=J.Score Style編集部)

FinTech(フィンテック)とは、金融とITを融合させた事業を創出し、イノベーションを起こす取り組みのことです。利用者の利便性を向上し、経済が活性化すると期待されています。2015年に、Paypal、SquareなどのFinTech企業が、伝統的な金融機関を上回る数十億ドルを調達し、グローバルでFinTechが本格化した年となりました。

もともとFinTech企業の事業領域はリテール決済が中心でしたが、事業が成熟するにつれて、既存の金融機関ではなかなか生み出せなかった、独創的なアイデアでビジネスを創出する動きが活発になり、領域を広げています。

アクセンチュアの「フィンテック、発展する市場環境:日本市場への示唆」によると、2015年、日本におけるFinTechに対する投資額は、前年と比較すると20%増であり、中国の455%増、インドの1,115%増と比較すると、まだまだ黎明期の段階です。

とはいうものの、日本政府においても、FinTechの拡大へ積極的な姿勢を打ち出しています。FinTechサポートデスクを設置し、法令面でも規制緩和に取り組んでいます。

FinTechには2つのタイプがあります。既存の金融機関と直接競合する「競合型」と、既存の金融機関を補完する、あるいは関連する機能を提供する「共生型」があります。アメリカでは共生型へのシフトが強まっていますが、イギリスは規制が有利に働くことから競合型が多くを占めます。日本では、政府が共生型支援へ動き出しています。

銀行業界はオープンイノベーションへ

共生型支援として政府が打ち出した施策が、銀行とFinTech企業とのオープンイノベーションの促進です。2018年4月に施行する銀行法の改正において、FinTech企業との連携方針を公表することが銀行に義務づけられました。また、オープンAPIを提供する努力義務を金融機関に課しました。

オープンAPIは、残高・入金情報の取得など、銀行機能の一部を外部に開放するものです。FinTech企業はセキュアに銀行のシステムにある利用者のデータを取得あるいは更新するサービスを提供することができます。

この銀行法改正により、銀行はオープンAPIをプラットフォームとしたイノベーションの創出に迫られています。銀行においても、当初は、FinTech企業を「脅威」と受け止めていましたが、最近では、自行がさらなる進化を遂げるために、技術力を持つFinTech企業と連携することを重視するようになりました。

FinTech企業の設立に動く銀行も

オープンAPIの具体例としては、FinTech企業の運営する経費精算システムで、振込ボタンをクリックすると、自動的に指定された銀行に振込依頼を行うというものがあります。このシステムには「更新API」を使用しています。

現在、銀行から提供されているAPIは、残高や入出金情報を取得する「参照系API」がほとんどです。更新する機能を銀行が提供するということは、データの保全やセキュリティのリスクを考えると、画期的な出来事でした。

みずからFinTech事業に乗り出す銀行も存在します。2020年の東京オリンピック・パラレンピック開催をにらみ、複数の銀行が共同でデジタル通貨を発行する構想に取り組んでいます。中国のアリペイと接続してインバウンド需要を取り込み、決済手数料をクレジットカードよりも下げることで普及を目指しています。

デジタル通貨というと仮想通貨が話題ですが、価値が乱高下しているため、決済手段として使いにくいのが現状です。円と等価で交換でき、決済手数料を抑えたデジタル通貨が誕生すれば、キャッシュレス決済を促進できるという狙いがあります。

FinTechへの挑戦で生活の質の向上を

FinTech企業にとっても、銀行の顧客基盤を活用できることで、事業拡大が期待できます。銀行がFinTech企業と積極的に連携することで、イノベーションはますます活発になり、近い将来、本格化を迎えるでしょう。

お金に関連することは、すべての人の生活に深くかかわります。金融サービスが劇的に向上した時、私たちの生活の質も大きく向上するに違いありません。(提供:J.Score Style

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