- 米主要株式指数は先週、すべての営業日で下落した
- 最近の小型株のアウトパフォームはインフレの上昇を示している
- 米国債は株式がさらに下落することを示している
- ドルとWTI原油は弱気相場入り
2017年9月以来で最も低調な結果となった雇用統計を受けて、先週はマーケットにとって最悪な1週間となった。今週の株式市場は強気相場の終焉を前に最後の上昇となるのか、それとも買いの機会となるのかを疑問に思うだろう。
米国株式市場は先週1週間すべての営業日で下落し、ドルも下落した。S&P 500、ダウ平均株価、ナスダック総合指数、ラッセル2000はそれぞれ日中の安値からは反発しているものの、クリスマスイブぶりの安値で取引されている。
下降トレンド下での上昇
8日のS&P 500は0.21%安であった。原油価格の下落を受けて、エネルギーセクターが1.87%でアンダーパフォームしている。エネルギーセクターは0.7%安の生活必需品セクターや0.21%安のヘルスケアセクターと比べて大幅に下落している。ディフェンシブセクターである公益事業セクターが0.35%でアウトパフォームしている。
週次では、同指数は2.16%安であった。エネルギーセクターが3.84%でアンダーパフォームしており、民主党の推進する「公的医療保険制度」により注目を集めているヘルスケアセクターが3.82%安で、エネルギーセクターに続いて不調なセクターであった。
テクニカル分析の観点では、同指数は2800の水準で下落に転じた。これはクリスマス以降で最も高い水準ではあるが、9月の最高値以降の下降トレンド下における調整局面の上昇であると考えられる。
10月17日の最高値である2816.94は未だ打ち破られていない限り、まだ我々は長期で下降トレンドと見ている。また、8日の同指数は窓を開き、200日移動平均線を下回った。50日移動平均線は100日移動平均線を上抜けする直前である。12月の安値以降の上昇トレンドラインは6日に崩れた。
8日のダウ平均株価は0.09%安、週次では2.21%安となっている。テクニカル分析の観点では、2018年1月以降でS&P500と同様に下方行へ傾いた巨大なヘッドアンドショルダートップを形成している可能性がある。200日移動平均線がネックラインと交わりつつあることに注目すべきである。
8日のナスダックは0.18%安、週次では2.34%となっている。
8日のラッセル2000は0.2%安、週次では4.26%安となっており、ほかの株価指数をアンダーパフォームしている。これまで、我々は貿易協議の進展と一致しない小型株の値動きに疑問を呈してきた。先週の株式市場の下落は概ね貿易協議に進展が見られなかったことに起因するが、またしても興味深いことが起こっている。この場合、投資家は大型株ではなく貿易協議のリスクをまぬがれる小型株に投資するはずである。
ドル高、それほど忍耐強くないFRB
ドル高は輸出企業にとって逆風となるので非難されることが多い。しかし、ドル高であった11月、貿易戦争の懸念が高まっていた際に大型株は売られ、小型株は買われていた。そして、不安が後退した時は、小型株が売られ、大型株が買われた。つまり、ドルは市場の値動きを左右する直接的な要因になっていなかったのである。
一方、ドル高の見通しがこの値動きをもたらしていることも考えられる。ドルは先週0.82%高で、11月上旬以来のレジスタンスラインで留まっている。そして、ドルは6月上旬以降上昇チャネルを形成している。
上昇チャネルの中で、11月の高値(上図:ドットライン)を抜けたことによって利確売りを支える必要がある。ドルは4週連続で200日移動平均線を上回っている。2週間前、ドルは下落して200日移動平均線にタッチしたが、その後上昇し、その週における最高値で取引を終えた。
ドルが堅調に上昇するにつれて、投資家はインフレ圧力の上昇について心配するかもしれない。それにより、過度なインフレを避けるためにFRBは利上げし続けなくてはならなくなることも考えられる。そして、このことにより、さらにドルは上昇するかもしれない。
現在のドル高は、市場がハト派的なFRBが利上げを停止しているとの一般的な見解を軽視していることを意味する。そして、インフレが進んだ場合、市場はFRBはインフレの抑制に取り掛かるとの見方を示している。
ではなぜ突然インフレが進むのだろうか。8日発表の米非農業部門雇用者数によると、平均時給は景気拡大に伴って上昇しており、失業率は歴史的な低水準である。賃金は3.4%増で10年ぶりの高水準となっている。さらに、インフレ率は2%以下なので、賃金の上昇によって購買力も上昇している。低いインフレ率を伴う賃金の上昇は、財への需要を増やし、インフレ圧力を高めるのだ。
8日の雇用統計は2月に2万人増で、17か月ぶりの低水準であった。。失業率の低下は米非農業部門雇用者数が予想を下回ったことを打ち消したが、1月の急激な雇用成長の後で、失業率は底を打って今後高まる可能性がある。
失業率はFRBが経済の健全性を示すために最も重視するデータであり、この失業率上昇の可能性は、中国や欧州の低迷とともに、過去最長の強気相場となっている米国における景気減退の兆しを示すだろう。
また、株式市場の下落が続くという重要なシグナルがみられる。米10年国債利回りは50週移動平均線を下回り、2016年7月以来の上昇トレンドラインを割り込んだ。
先週、利回りは三角持ち合いを下放れし100日移動平均線を割り込んだ。米国債価格への需要が増加するときに利回りは低下する。つまり、投資家が株式などのリスク資産から安全資産である国債へ資産を移すときに国債利回りが低下するのである。
一方、OPECプラスの減産を受けて原油価格は1月末のレジスタンスラインを上抜け後、持ち合い相場になっている。8日の下落はその時のレジスタンスラインまで到達した。
しかし、押し目買いによって12月の底値からの上昇トレンドラインに価格は押し戻そうとしており、ペナントを形成している。100日移動平均線が綺麗にサポートラインになっており、50日移動平均線もそれに加わろうとしている。
ファンダメンタルズ的には、サウジアラビアは原油価格の上昇を確信している。サウジは減産をすることなく米中からの需要が上昇することを見込んでいる。(提供:Investing.comより)
著者:ピンカス コーエン