マイクロソフト創立者のビル・ゲイツ、世界名だたる投資家であるウォーレン・バフェット、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ、元ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ、さらにテスラ創業者のイーロン・マスク、これら世界的な著名人には共通点がある。無論、いずれも世界屈指の大富豪だが、寄付に積極的な姿勢を示していることでも知られている。
2010年にビル・ゲイツとウォーレン・バフェットは、「ギビングプレッジ」という慈善事業への寄附プロジェクトを立ち上げた。米国在住の富豪に呼びかけて、生前または死後に所有資産の半分以上を慈善事業に寄付することを公式ウェブサイト上で誓約(プレッジ)してもらうというものだ。
これに呼応したのが冒頭の面々で、ほかにもマイクロソフトの共同創業者であるポール・アレン氏、ソフトウエア大手オラクルの創業者ラリー・エリソン氏、映画監督のジョージ・ルーカス氏などが賛同した。ポール・アレン氏は2018年10月に他界しており、すでに寄附が実行されているはずだ。
このように頂点を極めた富裕層ほど、慈善事業に意欲的に取り組む傾向が顕著である。つまり、そういった活動の場こそ、世界の富裕層が最終的に辿り着く社交場なのだ。
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世界の大富豪が慈善のための財団を設立する理由とは?
古くから欧米では、チャリティー(慈善)一つの文化として根づいてきた。一部の新進富裕層は他人から賞賛されたくて高額の寄附を行っているかもしれないが、欧州の元貴族にとっては当然の行為であって、むしろそういったことで騒がれて世間の耳目を集めるのを避けたがるという。
しかも、グローバルな規模でビジネスを成功させてきた実業家の大富豪にとっては、慈善活動が新たな夢の追求にも直結しうる。これまでのように大きなプレッシャーを抱えながら収益性を追求する必要もなく、自分が将来的に有望だと考えている分野に手厚い支援を行うことが可能なのだ。
しかも、慈善活動は税制上の特典も得られる。日本よりも広範の対象への寄附に対する控除が認められているうえ、ファンデーション(財団)やトラスト(信託)といったスキームを用いれば、それらに投じた資金が課税の対象外となる。
日本でも税制上のメリットが大きい公益財団法人を設立することが可能だが、一般財団法人と比べると難易度が高い。その点、海外ではビル・ゲイツ氏が現役引退後に夫人と設立した「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」をはじめ、このスキームを用いた慈善活動が活発だ。
一方、信託も欧米の富裕層の間ではよく利用されているスキームだ。信託を設定してそこへ資産を入れれば、所有権が移転して課税対象とならないばかりか、万一破産してしまったとしても、差し押さえを免れられる。
しかも、資産の「委託者」という立場となるので、それを運用して得られた利益を享受できる。加えて、このスキームを用いれば円滑に相続を進められることから、富裕層の間でよく活用されているのだ。
同じような志を持つ仲間とともに財団を設立し、寄附を通じて次はどういった分野を支援するのかを協議する−−。これが富裕層における社交場の最終ステージで繰り広げられている光景だろう。
よく耳にするものの、意外と実体が知られていないロータリークラブ
単に寄附を行うだけにとどまらず、日頃から地道に活動し、地域に密着した社会貢献に努めている富裕層も少なくない。その一例がロータリークラブである。