「今年の日経平均は2018年末と比べて12月末時点で上がると思うか、または下がると思うか」−−。株式会社スマートプラス運営のSNS株取引アプリ「STREAM」を利用する個人投資家234人を対象にアンケートを取ったところ、「上がる」と予想した人が51%で、「下がる」の38%を上回った。
調査は、「あなたが考える2019年の株式市場」というタイトルでのアンケート。冒頭の質問のほかに、「今年の株式相場の難易度」「今年注目のセクターとその理由」「今年最大の注目イベントは何か」なども聞いている。
2019年は「上がる」予想が優勢
冒頭の「今年の日経平均は2018年末と比べて12月末時点で上がると思うか、または下がると思うか」という質問に対し、51%の個人投資家が「上がる」と予想、38%が「下がる」と予想したほか、「変わらない」と回答した個人投資家は11%だった。
昨年はバブル以来の高値となる2万4286円10銭をつけたことから、高値を再度試すと予想する強気の投資家が多いようだ。
相場の動きは複雑になる?
今年の株式相場の難易度は昨年と比べてどうなるかという質問については、「難しい」が多数を占めた。
昨年は、2012年に始まったアベノミクス相場以来、日経平均が初めて年間でマイナスとなった。上り調子だった相場にも一服の兆しがあると考える投資家も多いようだ。
2019年は米中貿易戦争や米国の金融政策の動向など、一筋縄では解決しない問題が山積している。年間でみると強気であるものの、その過程には紆余曲折があるという考え方をする投資家も多いのかもしれない。
国内についても、今年は改元や参議院選挙、消費増税といった重大イベントが多数控えている。2020年の東京オリンピック閉会後の動きを見据えたポジションの調整に関する回答もみられ、相場の動きは例年に比べ一層複雑になると考えている個人投資家も多いようだ。
個人投資家の注目セクターは5GやAI関連
今年注目のセクターとその理由については、自由回答ながら「5G・情報通信セクター」と回答した個人投資家が最も多く、全体の11.8%を占めた。2番目に多い回答は「AI関連セクター」で、9.9%の票を集めた。それ以外にも「バイオ、半導体、物流、フィンテック」といったセクターに期待を寄せる個人投資家の回答が目立った。
5G・情報通信セクターと回答した理由としては、「政策が具体化してきているため」「将来性がある」という内容が主であった。既に通信量の増大が業界の問題となっていることもあり、5Gの導入と年々増加する通信量への対応業務が、同セクターの収益機会とみている個人投資家が多いようだ。
AI関連セクターでは「ディープラーニングにより、人工知能の活用幅が大きく広がった」「AIという単語を日常的に聞くようになった」「あらゆる産業に関係してくる」といった回答がみられた。AIを活用したBtoBソリューションのうち、あらゆる産業に関連する「経費削減」というテーマについて収益機会と目されているようだ。
心配の種は消費増税?
「今年最大の注目イベントは何か」という質問については、52%の個人投資家が「消費増税」と回答した。次点の「改元」、「イギリスのEU離脱問題」がそれぞれ約17%の得票であることを踏まえると、多数の個人投資家の関心は消費増税に向かっていると考えることができる。
2014年4月に消費税が5%から8%に増税された際には、駆け込み需要により、1〜3月にかけて特に個人消費が急伸した。しかし、増税直後に百貨店やスーパーなどの大型小売店をはじめとして、消費の冷え込みが見られ、個人消費に大きな反動減をもたらした。
個人投資家の多くは今回の増税に対して、2014年と同じ状況になることを警戒しているようだ。一方で、ごく短期的な動きとなるだろうが、不動産業については扱う金額が大きく、2%の増税でも大きな差となる。
改元に関しては、今年は従来の祝日以外に、4月30日(火)の退位の日、5月1日(水)の即位の日が追加となる。これにより、4月27日(土)から5月6日(月)まで10日間連続で東京証券取引所は休場となる。
そのため、休場前には、リスクを回避するためにポジションをクローズする過程での乱行下が懸念される。薄商いによる先物マーケットでの投機的な売り崩し、買い上がりにも注意が必要だ。
イギリスのEU離脱は、今年の3月29日に期限が迫っている。1月15日にイギリス議会で離脱案が否決されて以降、一旦はメイ首相が離脱延期に言及する場面も出たが、本質的な議論は依然として平行線が続いている。仮に議会での採決が遅れ、合意なき離脱への現実味が再び高まってくると、マーケットへのネガティブインパクトも大きくなりそうだ。
他人の見解を踏まえた投資判断の重要性
今回は個人投資家に向けて2019年の相場に関するアンケートを実施し、生の意見を聞くことができた。市場参加者の一翼を担う個人投資家の見解は鵜呑みすべきではないが、自身の投資判断を下すにあたり貴重な情報となるだろう。(古田拓也、Finatextグループ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士/菅原良介、同グループ アナリスト)
※本稿における相場の見通し等については、アンケートに参加していただいた個人投資家の個人的見解であり、今後の相場について何ら保証するものではありません。また文中に登場する銘柄についても、これらの取引を勧誘・推奨するものではありません。