企業年金を年金として受け取るには、長期の勤続年数が必要になる場合が大半です。転職した人が、リタイア後にまとまった退職金や企業年金がないという状況にならないように、企業年金を持ち運びできる制度が徐々に整えられています。企業年金の持ち運びには、いろいろなケースがありますから整理しておきましょう。

転職したら企業年金は一時金を受け取るか持ち運ぶ

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(画像=PIXTA)

2005年10月より、企業年金(厚生年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金)は、それぞれの企業年金および企業年金連合会との間で、積み立てた年金資産を持ち運びできるようになりました。この仕組みのことを「企業年金の通算制度」といいます。(確定拠出年金から厚生年金基金と企業年金連合会への移換はできません)

通算制度を利用して退職の都度、一時金で受け取るか、将来の年金として持ち運ぶかは本人が自由に選べます。それぞれの場合のメリットやデメリットをよく考えて決めましょう。

一時金で受け取る場合は、「老後の資金」としてより「一時金としての使い道があるか」、「企業年金以外の資産がいくらあるか」などによって検討します。一つの年金制度にまとめる場合は、企業の破たんや運用に対するリスクを分散できないデメリットも考慮する必要があるでしょう。

企業年金がある会社に転職する場合

法律上は年金資産を持ち運ぶことが可能ですが、基金や会社のルールによってはできない場合もあります。退職前に、加入している企業年金にはどのような方法が選べるのか、確認しておきましょう。

厚生年金基金に加入している人で2014年4月1日以降に会社を退職した場合は、厚生年金基金の「独自部分」を脱退一時金として受け取るか、受け取らずに企業年金連合会に移換するかを選ぶことができます。ただし、厚生年金基金は、今後10年以内に基金制度の廃止を検討することが決まっています。今度、基金が廃止される可能性は高いと言えるので注意が必要です。

転職前の会社の企業年金脱退後1年以内かつ転職先の企業年金に加入後3ヵ月以内など、規則によって異なりますが、移換して転職後も年金資産を積み立てて将来の年金につなげることができます。

確定給付企業年金は、一時金を受け取るか年金として受け取るか選択することができます。転職先の確定給付企業年金、厚生年金基金、確定拠出年金に移すことも可能です。ただし、移す場合は、転職先によって規則がありますので早めの手続きが必要です。

年金資産は、制度で転職先に移換できない場合もあります。その場合は、企業年金連合会に移すことができます。複数の会社に勤めた場合にはそれぞれの企業年金を通算してもらえます。

企業型確定拠出年金に加入している場合は、転職先の企業型確定拠出年金、確定給付企業年金に移すことができます。個人型確定拠出年金(iDeCo)と同時加入が認められている場合もあります。

企業年金がない会社に転職する場合

転職先の会社に企業年金制度が導入されていない場合は、積み立てた年金資産はどのようになるのでしょうか。

厚生年金基金に加入している場合、2014年3月31日までは、年金資産を企業年金連合会に移すことになっていました。2014年4月から脱退一時金に相当する額は、企業年金連合会へ、基本部分は厚生年金基金に残すことになりました。これは加入期間が1ヵ月以上あれば受け取ることができます。脱退一時金に相当する額は個人型確定拠出年金(iDeCo)に移換して、運用・拠出も可能ですし、次の転職先の企業年金へ移換することもできます。

確定給付企業年金の場合は、3年以上勤務した場合に脱退一時金を受け取るか、受け取らずに企業年金連合会に移換することが可能です。20年以上勤務など会社によってルールがありますが、企業年金連合会からも老齢年金が支給されますので、受給のときは忘れないように手続きをしましょう。厚生年金基金の場合と同様にiDeCoに移換もできますので、運用・拠出を続ければ年金資産を増やせますね。

企業型確定拠出年金からはiDeCoに移換できます。脱退一時金を受け取った場合は、確定拠出年金で積み立てた分の年金を受け取る権利はなくなります。さらに勤続3年未満で退職した場合には、会社から受け取った掛け金の一部または全額を返さなければならないなど、会社によって規則がありますので確認が必要です。

公務員に転職する場合は?

厚生年金基金、確定給付企業年金、どちらも企業年金連合会へ移換することができます。iDeCoに移換すると、掛け金に1万2,000円(月額)の条件はありますが拠出を続けられます。

自動移換を避けるために必ず手続きしよう

確定拠出年金は加入している会社を退職した翌日から6ヵ月以内に手続きを行わない場合、積み立てた年金資産は、自動的に国民年金基金連合会に移換されます。そのままにしておくと、手数料がかかる上に確定拠出年金の加入者期間と認められないので、受給開始が遅くなる場合があります。必ず確認して期限内に手続きを済ませましょう。

文・藤原洋子(ファイナンシャル・プランナー)/fuelle

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