過当競争から抜け出す「ひらめき」の作り方

ラテラルシンキング,木村尚義
(画像=THE21オンライン)

ビジネスにロジカルシンキングは不可欠だが、ロジカルに考えるだけでは競争に勝てない。また、ロジカルシンキングを得意とするAIがどんどん進化する中で、人間には別の思考が求められている。その一つが、「ラテラルシンキング」だ。そこで、ラテラルシンキングの専門家・木村尚義氏に話を聞いた。

「どん兵衛タクシー」は業界を超えた発想から

ビジネスパーソンにお馴染みのロジカルシンキングは、思考を「縦に掘り下げる」ことで、最適解にたどり着くものです。

理にかなった思考法ですが、ビジネスの世界において、ほぼ全員がこれを実践した結果、どの会社も製品やサービスがすべて似ているという現象が起きてしまっています。速く泳ぐための最適解を探した結果、魚類のサメも哺乳類のイルカも似たような形になったのと同様の現象です。

どの会社も製品やサービスが似ていると、当然、自社のユニークネスが薄れます。消費者にしてみれば「どれを選んでも同じ」になるので、自社を選んでもらえる確率が減ってしまっているわけです。

この状況を打破するのに役立つのが、ラテラルシンキングです。日本語に訳すと「水平思考」。簡単に言えば、発想を「横に広げる」思考法です。

この思考法を活かして注目を浴びたユニークなサービスには、例えば、「どん兵衛タクシー」があります。車体や内装にあしらった「どん兵衛」の広告料金を運賃に充てることで、お客は無料で乗れるというシステムが、昨年、話題になりました。

これは、インターネットの世界では当たり前の広告モデルを、リアルな世界のタクシーへと「横に広げた」アイデアです。

逆に、もともとリアルな世界にあったビジネスモデルを、インターネット上へと広げた例もあります。アフィリエイトも、米国の中古車業界にあった、お客を紹介したらキャッシュバックが入るシステムの応用です。業界を越境して考える、「横の思考法」が使われた好例です。

現在、副業を奨励する企業が増えていますが、これはラテラルシンキングの活性化を図っていると考えられます。他業界の情報に多く触れることで、イノベーションを促そうとしているのです。