貿易収支(季節調整値)は8ヵ月ぶりの黒字
財務省が3月18日に公表した貿易統計によると、19年2月の貿易収支は3,390億円と5ヵ月ぶりの黒字となり、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:3,102億円、当社予想は3,650億円)通りの結果となった。輸入が前年比▲6.7%(1月:同▲0.8%)と減少幅が拡大する一方、輸出が前年比▲1.2%(1月:同▲8.4%)と減少幅が縮小したため、貿易収支は前年に比べ3,529億円の改善となった。
輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲0.6%(1月:同▲9.0%)、輸出価格が前年比▲0.6%(1月:同0.7%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲6.5%(1月:同0.5%)、輸入価格が前年比▲0.1%(1月:同▲1.4%)であった。
季節調整済の貿易収支は1,161億円(1月:▲2,922億円)と8ヵ月ぶりの黒字となった。輸入が前月比0.1%のほぼ横ばいとなる一方、輸出が前月比6.7%の高い伸びとなったことが貿易収支の改善につながった。ただし、2月の貿易黒字は、中華圏の春節の影響で1月が大幅な赤字となった反動による部分も大きい。1、2月の平均では貿易赤字となっており、基調として貿易収支が黒字に転換したとはいえない。
2月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=62.5ドル(当研究所による試算値)と、1月の62.7ドルからほぼ横ばいとなったが、足もとの原油価格(ドバイ)は60ドル台後半まで持ち直しているため、通関ベースの原油価格は3月以降上昇することが見込まれる。貿易収支(季節調整値)は再び赤字となる可能性が高いだろう。
アジア向けの輸出低迷が続く
19年2月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比4.1%(1月:同10.2%)、EU向けが前年比4.7%(1月:同▲1.5%)、アジア向けが前年比▲1.3%(1月:同▲14.4%)となった。
季節調整値(当研究所による試算値)では、米国向けが前月比▲1.8%(1月:同4.7%)、EU向けが前月比3.3%(1月:同▲2.8%)、アジア向けが前月比1.2%(1月:同▲1.5%)、全体では前月比6.5%(1月:同▲4.8%)となった。19年1、2月の平均を18年10-12月期と比べると、米国向けは4.0%高いが、EU向けが▲1.3%、アジア向けが▲5.1%、全体では▲2.8%低くなっている。
2月の輸出数量は中華圏の春節の影響などで大きく落ち込んだ1月からリバウンドしたが、アジア向けの戻りは弱かった。アジア向けの輸出数量指数(季節調整値)は18年1-3月期から4四半期連続で低下した後、19年1-3月期も前期比マイナスとなることが確実である。IT関連の落ち込みを中心に、アジア向けの輸出は基調として減少している。
また、日本の輸出数量に対して先行性のあるOECD景気先行指数(OECD+非加盟主要6カ国)は18年入り後低下傾向が続き足もとでも下げ止まっていない。すでに欧州、新興国経済の減速は明確となっているが、好調が続いていた米国経済もここにきて拡大ペースが鈍化している。外部環境が厳しさを増す中、輸出は当面低調な推移が続くことが予想される。
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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任
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