- 中国の景気刺激策を受けて国際株は上昇
- テクノロジーセクターがアウトパフォーム
- 軟調なインフレ統計を受けて、FRBはハト派的なスタンスを示す
- 強気相場は続くのか、それとも終わるのか
16日で米国株式市場の強気相場は10周年を迎えた。しかし、今後も強気相場が続くとは我々は考えていない。国債利回りや金価格が上昇しており、我々の懸念をさらに加速させている。これらの動きは強気相場が終わりつつあることを示しているのか。
先週の米国株式市場では国際株が上昇し先週の下落をを打ち消した。主要中央銀行は直ぐには金融引き締め政策へ移行しないことが予想される中で、中国政府は景気刺激策を続けることを発表した。このことを受けて、15日のアジア株式市場は上昇し欧州株式市場もそれに続いた。
中国政府は付加価値税の減税を行うと発表し、中国経済の回復への期待を強めた。米国経済における軟調なインフレ統計によって、マーケットは起こりうるリスクに備えていることだろう。14日の英議会でブレグジット延期が可決されたことによって、マーケットからの逆風が一時的に休止していると考えることができる。
中国の景気刺激策は世界経済を牽引するのに十分な効果をもたらすのだろうか。中国の経済成長が世界経済を牽引し始めたのは2008年の大不況の後である。しかし、当時の中国は成長基調に乗っていたが、現在は減速しつつある。中国が国内経済の減退を辛うじて食い止めている状況下では、中国が世界経済を牽引していけるとは考えにくい。
S&Pは先週の下落を打ち消した。ナスダックはアウトパフォーム
18日のS&P 500は0.5%高であった。テクノロジーセクターは0.88%高、不動産セクターは0.98%安、資本財セクターは0.92%安であった。週次では、同指数は2.89%高で11月以降で最大の上昇幅を記録し、先週の下落を打ち消した。0.38%安となった資本財セクターを除いて、すべてのセクターで上昇している。テクノロジーセクターは4.56%となっている。
TradingView:S&P500
テクニカル的には、50日移動平均線で先週の終値から反発しており、今週は12月末以降で、最高値と最高の終値どちらも記録した。クリスマスイブの底値以降で同指数は16.79%高となっている。
15日のダウ平均株価は0.54%高、週次では1.56%高となっている。エチオピア航空墜落事故によるボーイング(NYSE:BA)の下落を受けて、同指数は週次でアンダーパフォームしている。しかしながら、クリスマスイブの下落から15.15%上昇している。テクニカル的には、50日移動平均線は100日移動平均線を上回り、200日移動平均線へ接近している。
ナスダック総合指数は0.76%高でアウトパフォームしている。半導体大手のブロードコム(NASDAQ:AVGO)は期待に答える決算であった。同社の自信に満ちた業績見通しは、2018年第4四半期決算以降半導体業界に失望していた投資家にとっては同社は希望の光である。同社は14日に決算報告を行い、株価は11.79%高となった。終値は8.36%高の290.29ドルで最高値となった。
TradingView:ナスダック総合指数
テクニカル的には、同株は2016年2月からのダブルボトムの可能性があり、先週の終値は2017年11月に記録した以前の最高値から2.5%高いだけであった。
週次ではナスダックは3.78%高で、クリスマスイブの底値から21.4%高となっている。
15日のラッセル 2000は0.13%高、週次では2.08%となっている。同指数はダウ平均と同様に先週の損失を取り戻すことができなかった。注目すべきは、貿易戦争に関して正反対に反応するはずの大型株と小型株が、3週連続で並行して値動きしている点である。テクニカル的には、同指数は100週移動平均線から反発しているものの、50週移動平均線を下回っている。
TradingView:米10年国債
15日の米10年国債は2.6%安で、2週続落となっている。また、利回りが3.26に達した10月以来の下降トレンド下で、先週の下落は三角持ち合いを下放れした。
11月以降の株式市場は強気相場であるのにも関わらず、投資家は国債を保有しているのはなぜなのか。株と債券は通常相関性が見られるが、景気後退が持続すると予想されている中で国債価格が上昇する一方、景気拡大に対して楽観的姿勢もあり株式は上昇している。
テクニカル的には、上図の三角持ち合いは上昇トレンドラインの下で形成されており、2016年のドナルド・トランプ大統領の当選による株式市場の上昇と酷似している。これが、今回の株式市場の上昇を信用できない理由の1つである。
TradingView:金
また、現在のリスクオン市場におけるその他の相反するシグナルは、金が2週続伸となり、国債利回りと同様の値動きをしている点である。日本円だけがこのパターンには当てはまらないが、日銀が景気に対して悲観的であることを考えると理解が出来る。黒田東彦総裁は悲観論に警告しつつも、一方で異次元の金融緩和を継続している
TradingView:ドルインデックス
短期的に国債利回りは低下しているが、ドルは13日に50日移動平均線で反発し、100日移動平均線にサポートされている。200日移動平均線と並行する年初来のサポートラインがさらにその下に控えている。
West Texas crude slipped as the International Energy Agency said OPEC nations have enough spare capacity to make up for any supply shock from the escalating crisis in Venezuela.
国際エネルギー機関(IEA)は、ベネズエラでの供給減を補うだけの十分な供給能力をOPECは持っていると述べ、WTI原油先物は下落した。
ポンドは先週の3つの重要な議会投票によって大きく値動きし、今週末は上昇した。これらの投票を経て、テリーザ・メイ英首相は政治家の支持を勝ち取り、ブレグジットの延期が決定された。(提供:Investing.comより)
著者:ピンカス コーエン