(本記事は、辻盛 英一氏の著書『営業は自分の「特別」を売りなさい』=あさ出版、2018年10月23日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
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相手にとって価値ある何かを与える
突然ですが今、あなたが100万円を持っているとして、お客さまに、
「この100万円をあげるから、100万円の保険に入って」
「100万円あげるから、100万円分の商品を買って」
とお願いすれば、ほとんどのお客さまが保険に入ったり、商品を買ってくれたりすることでしょう。
実はこれこそ、3段階目、「ステージ(3)ギブ&テイクセールス」の基本的な考え方です。
もちろん、現金を渡すことなどはありませんが、「相手にとって、価値がある何かを与えることが売上となって返ってくる」ことを知り、せっせと与えているのが、このステージにいる営業マンの特徴です。
「ステージ(2)行動力セールス」の段階では、まだ「与えること」が、まわりまわって売上になって戻ってくることを理解できていません。
でも「行動力セールス」から抜け出そうと、お客さまと仕事以外の話をする時間をつくれば、お客さまが本当に求めているものが見えてきます。
そして、お客さまの要望を満たそうとするうちに、なぜか売上が上がることを経験し、「価値を与えると、成果となって返ってくる」ことがわかるのです。
会社全体で「ギブ&テイクセールス」を行い、成功している企業が実際にあります。
建設資材を扱うある会社では、ゴルフ好きの社長さんが営業全員に、「ゴルフのスコアが80を切るまでは営業に行くな!」と言って、会社のなかに練習場をつくり、ゴルフレッスンを受けさせて、上達するまでは、営業に行かせません。
取引先のなかには、必ずゴルフをする人がいます。
営業マンは顧客に「おっ、キミ、うまいね。教えてよ」と言われたら喜んで教え、「その代わり、仕事をする時間がなくなるので、オーダーをください」と言って、注文をいただくのです。
「価値ある何か」は、相手の役に立つ情報かもしれませんし、人脈かもしれません。
1年先まで予約がビッシリのレストランの席を取ったり、融資を受けたいと考える社長さんに銀行を紹介したりすることも「価値」の1つでしょう。
また、英語やテニスを教えたり、海外大物アーティストのコンサートチケットを入手したりするのも「価値」になります。
試しに、「お客さまのためになること」をやってみてください。
「これをやったら、あのお客さまは買ってくれるかな?」と、心のなかで思っていることでいいのです。
必ず思いもかけない形で、売上となって戻ってくることがわかります。
お客さまの喜びが売上になる
「ステージ(3)ギブ&テイクセールス」にいる営業マンは、「営業とは、価値を与えること」だと考えています。
そして、その考えどおりに、与えることで売上を手にしています。
私が保険会社に転職したばかりの頃は、「ギブ&テイクセールス」のステージでした。
当時やっていたことは、大手都市銀行に勤務していた経験を活かし、中小企業の社長さんに、資金繰りの改善策を提案すること。
その見返りとして、「きみのおかげで余裕資金ができたから、保険に入ってあげるよ」と言ってくださった方に買っていただいていました。
「ギブ&テイクセールス」のステージに達すると、「お客さまを説得しなければ!」「もっと、たくさんのお客さまに会わなければ!」といった、「パワーセールス」や「行動力セールス」で感じる精神的なプレッシャーから解放されます。
その点で、日々の仕事で感じていたストレスは激減するでしょう。
ただし、「ギブ&テイクセールス」をしている人の特徴は、常に「自分の与えたことが、売上となって戻ってくる」のを期待している点です。
実際、私もずっと「このぐらいやったら、2〜3万円の保険に入ってくれるかな?」と考えながら、様々な提案をしていました。
実はこれこそ、次の「ステージ(4)コンサルティングセールス」との最大の違いです。
「コンサルティングセールス」になると、人の役に立てることが純粋な喜びとなり、自分の仕事に関係なく、人のためにできる限りのことをしようと考えます。
「ギブ&テイクセールス」のステージでは、気持ちはラクになっても、行動する量がさほど減るわけではありません。
なぜなら、与え続けなければ売上が下がるため、ひたすら「ギブ」し続けようとするからです。
つまり、ストレスは減っても忙しさはさほど減るわけではない、ということになります。
「ギブ&テイクセールス」は、営業マンとしてお客さまの喜びが営業成績を上げることを学び、自分がお客さまの役に立っているということを初めて実感できるステージです。
行動力セールスと同様に営業成績を上げることに主眼があるため、営業成績に結びつくことしかやりたくないと思っています。最初のうちはそれでかまいません。そのうち、お客さまに喜んでもらった分だけ営業成績が上がることが楽しくなっていきます。
この経験の積み重ねで、頼られる営業マンになり、次のステージに上がっていくのです。
お客さまに「買いたい」と言われても断る
私が行っていた「資金繰りに悩む社長さんに改善策を提案する」という「ギブ」は、資金繰りが悪化している企業にしか通用しません。
そこで私は、「経営状態がいい会社は、ほかにどんなことに困っているんだろう」と考えるようになりました。
そんなことを考えながらお客さまと話をしていると、相手も何かを感じるのでしょうか。様々な悩みを打ち明けられるようになってきました。
「後継者がいない」「社員が居着かない」などの人の問題から始まり、「新商品が売れない」「本社ビルを引っ越したい」、さらには「ゴルフに行く相手がいない」「野球をするメンバーが集まらない」など。
「ゴルフに行く相手がいない」などの問題は、解決してあげたからといって、保険に入ってくれるとは考えにくいものです。
ですが、「とりあえずお客さまにとって役に立つこと、できることをしていこう」と、私は行動を始めました。
これが、次の「コンサルティングセールス」のステージへと進む、大きなきっかけとなったのです。
「ギブ&テイクセールス」をしていることを意識するようになると、お金のためにしか動いていない自分に気づきます。
そして、だんだんとそんな自分が嫌になり、営業に関係のない、つまり、仕事だけの付き合いではない、人と人としてお客さまとお付き合いができるようになりたいと思い始めます。
それにはまず、営業マンではなく1人の人間としてお客さまにも認識してもらわなくてはなりません。
お客さまのなかから、最初は1人か2人かを選び、あえて「この人には絶対に売らない(売りつける行動をしない)」と決め、お客さまの望むことだけをやり続けるようにします。
すると、必然的にだんだんと関係が深まり、その結果、あなたの仕事に関する分野すべてを任されるようになったり、大切なご友人を紹介してくださるほどに信頼されるようになったりします。
大切なのは、「営業することは忘れて、ひたすらその人の悩みや問題を解決してあげる」ということに徹すること。
「売ってほしい」と言われても売りません。
関係ができてくると、お客さまが気を遣って「せっかくだから、ちょっとくらい買うよ(付き合うよ)」と言って、安価なものを買ってくれようとすることがありますが、このときはしっかり断りましょう。そして、「お付き合いで買っていただくわけにはいきません。お気持ちだけで十分です」としっかり伝えてください。
するとお客さまも、本当に欲しいものは何か、自分にとって価値のあるものは何かを真摯に考え、「これはいいものだから、ぜひ買いたい」と注文を出してきます。
これはつまり、1人で買ってくれる単価がアップするということ。
そんなお客さまの人数が少しずつ増えると、「ギブ&テイクセールス」の特徴である「たくさんの人に与え続けないといけない」という忙しい毎日からも、解放されるのです。
辻盛英一(つじもり・えいいち)
大阪市立大学経済学部卒業、三井住友銀行を経てアリコジャパンに入社(現メットライフ生命保険)。13年連続、トップの成績を収める。その手腕が注目され、社内外から、営業手法を学びたいと人々が訪ねてくるように。現在は法人専門の保険代理店、株式会社ライフメトリクスを経営する傍ら営業マン向けの研修を主催。年間300日はグラウンドで学生を指導していることから、ワークライフバランスの重要性を自ら体現している。
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