赤字になってしまったとき、税金はどのように計算されるのでしょうか。日本では、赤字になった法人の救済措置として、税金の還付を受けられる制度や赤字を繰り越せる制度があります。赤字の場合に経営者ができる税金対策についてわかりやすく解説します。

赤字の法人でも均等割が発生する

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(画像=SizeSquare's/Shutterstock.com)

法人が支払う税金というと法人税をイメージしがちです。しかし、実は法人税とあわせて法人事業税、地方法人特別税、法人住民税、消費税などさまざまな税金が発生しています。

利益に法人税率をかけて計算する法人税は、赤字であれば発生しません。法人事業税や地方法人特別税も利益を元に計算されるため、赤字の場合納税の必要はなくなります。

法人住民税には、利益に対して発生する所得割と、利益にかかわらず発生する均等割があります。均等割は赤字であっても、事務所の所在地がある都道府県に対して必ず納めなければなりません。

均等割は都道府県や市町村によって金額が異なります。また、資本金の金額や従業員数によって細かな金額設定がされていることがあります。例えば、東京都の特別区に主たる事務所等がある場合、資本金1千万円超1億円以下で従業員数が50人以下なら、均等割の金額は18万円です。

均等割の他に、消費税も赤字であったとしても発生します。消費税は消費者が負担する税金で、法人が負担するわけではありません。法人は売上に対して消費税分を多く消費者から受け取り、仕入で支払った消費税を差し引いた残額を消費者に代わって国に納めることになります。

法人に負担が発生するわけではないため、赤字であったとしても消費税の納税が免除されることはありません。ただし、実質負担が発生しないとはいえ、納税資金は法人として準備しておく必要があります。赤字の場合も消費税の支払があることを念頭におき、早めに資金を準備しておきましょう。

赤字に転落した年だけ使える欠損金の繰り戻し還付

前期は黒字で当期赤字に転落したという場合、欠損金の繰り戻し還付の制度を活用することができます。欠損金の繰り戻し還付とは、前期納税した法人税のうち、当期の赤字分に相当する法人税の還付を受けられる制度です。対象となるのは青色申告を行っている法人なので、注意しましょう。

例えば、前期1,000万円の利益が出て160万円の法人税を納め、当期600万円の赤字が出た場合、還付される金額は96万円です。還付金は、160万円に当期赤字の600万円をかけ、前期利益の1,000万円で割って計算します。

赤字の場合、借入金の返済や消費税の納税などで資金に余裕がないという法人も少なくありません。そのため、そんな法人の救済措置として設けられた制度です。黒字から赤字に転落した年しか使えないので、該当する場合は活用してみてもいいでしょう。

翌年以降の黒字と相殺できる欠損金の繰越控除

もし資金に困っていない場合や、翌年以降は問題なく利益が出そうな場合は、無理に繰り戻し還付の制度を適用する必要はありません。赤字が出た場合、欠損金の繰越控除という制度によって、翌年以降の利益と相殺することが認められています。こちらも対象となるのは青色申告書を提出した法人なので、注意しましょう。

欠損金の繰越控除とは、赤字を翌年以降10年に渡って利益と相殺できる制度です。たとえば、ある年に赤字が500万円発生し、翌年の利益が400万円であれば、翌年は500万円の赤字のうち400万円分だけを相殺することができます。翌年の利益はすべて相殺されるため、翌年は法人税を支払う必要がありません。

また、翌々年に300万円の利益が出た場合、まだ相殺していない100万円と相殺し、翌々年は200万円に法人税率をかけて法人税を計算します。10年間であれば、複数年に渡って相殺することも問題ありません。

翌々年に200万円の赤字が出た場合は、相殺されていない100万円に翌々年の赤字200万円を上乗せし、累計額は300万円となり、それ以降の年に発生する利益と相殺できます。

欠損金の繰越控除は自由度が高く使い勝手のいい制度ですが、10年経つと赤字が消滅してしまうため、繰越できる期間には十分注意しましょう。大規模な修繕を予定している場合などは、欠損金の状況を確認し、場合によっては時期を変更するなど調整することも大切です。

すぐにでも手元資金を確保したい場合や、消費税の納税資金がない場合は欠損金の繰り戻し還付がおすすめです。急ぎで資金を確保しなくてもいいなら、欠損金の繰越控除を活用しましょう。赤字になったときの状態に応じて、欠損金の繰り戻し還付と繰越控除のどちらかを選択することが大切です。

文・木崎 涼(ファイナンシャル・プランナー)(提供:JPRIME


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