さまざまな顧客データを管理・分析して、最適な広告配信などのアクションに移すためのプラットフォームであるDMP(データマネジメントプラットフォーム)は、ここ数年Webマーケティング分野において重要なキーワードとして見聞きする機会が増えています。流通・小売業界にも大きな影響力があります。一方で導入の難しさや仕組みの複雑さなどのため、一般の人にとってはハードルが高いのも事実です。DMPについて今ひとつ分からないと感じて敬遠したりするマーケターも多いのではないでしょうか。そこで今回は、DMPの基本や導入のポイントなどを解説します。

問い合わせフォームまで来てくれた顧客を追いかける

DMP
(画像=Panchenko Vladimir / Shutterstock.com)

DMPとはData Management Platformの略で、インターネット上で蓄積された顧客データを管理するプラットフォームです。蓄積された顧客データとは例えば、問い合わせ時などに取得したユーザー情報やツールで取得したサイト内の行動履歴などです。

これらのデータを活用することでユーザーをセグメント化し、問い合わせフォームまで来たが離脱したユーザーだけをターゲットにした広告を配信したり、過去に購入歴のあるユーザーだけにリピートを促すキャンペーン情報を配信したりといった「One to Oneマーケティング」が可能になります。

オープンDMPとプライベートDMP

DMPは、「オープンDMP」と「プライベートDMP」の2種類に分類されます。それぞれの特徴は次のとおりです。

オープンDMP

オープンDMPとは、ユーザーの行動履歴や属性などのデータを蓄積しているクラウド型のデータプラットフォームです。広告配信時に、自社では把握できないさまざまなデータを活用することができます。

プライベートDMP

プライベートDMPとは、企業が独自で蓄積しているマーケティングデータで、購買情報やユーザープロファイル、行動履歴、興味関心などのデータを蓄積・管理できるプラットフォームです。

近年ではプライベートDMPとオープンDMPを組み合わせて膨大なデータを広告配信に活用できるようになっています。

企業がDMPを導入するメリット

さまざまなマーケティングデータを一元管理できる

DMPの最大のメリットは、別々に管理されていたマーケティングデータを一元管理できることです。自社データだけでなく、外部が提供するデータも併せて効率的に分析し、マーケティングに生かすことができます。また、自社サイトへのアクセスデータや広告効果のデータなどから、自社がターゲットとしているユーザーの姿が浮き上がってきます。個々のユーザーに最適な広告やコンテンツを提供できるため、より効果的なマーケティング施策を実施できます。

顧客のニーズを可視化できる

DMPにより、ターゲットの興味や関心を分析してニーズを可視化できます。今まで顕在化していなかった見込み顧客の属性や行動が明確になります。DMPで蓄積されたデータを解析することで、未開拓だったターゲットを発見し、顧客拡大を図れます。

自社や外部のさまざまなデータを効果的に分析することで効率や精度も高くなるため、マーケターのリソースを本来のマーケティング活動に割くことができ、マーケティングのPDCAサイクルの回転が速くなります。DMPは、データを管理・分析することから、ビジネスにつながる次のアクションを起こすためのツールとして、活用の幅が広がっています。

DMP導入前に目的と利用機能を明確にする

デジタルマーケティングを取り巻くアドテクノロジーの仕組みは複雑で、システムの導入費用も高額になるケースがあります。「なんとなく役立ちそうだから」とDMPを導入すると、有効に活用できません。導入の目的を明確にして、導入後に行う作業やそのための体制を検討しておくべきです。

DMPを導入した後に、見込み客を顧客化するなど効果的なアクションにつながるためには、MA(マーケティングオートメーション)など他システムとの連携などが必要になる場合もあります。DMPで何ができて、何ができないのかなどを含めて、全体のシステムを設計することが大切です。

また、目的の明確化と同時に、必要なDMPがオープンタイプなのかプライベートタイプなのかを決める必要があります。近年は、プライベートタイプとオープンタイプを併用することで多彩なデータを取り込んで、より精度の高いマーケティング施策につなげるケースが増えています。

DMPは、国内外のさまざまなベンダーがサービスを提供しています。導入に際しては、費用や目的、機能、他サービスやアプリとの連携などを比較して、自社に最適なベンダーを選定する必要があります。

人工知能の活用やベンダー連携に期待

今後はDMPの多機能化が進むと考えられます。現在のDMPはデータ蓄積の機能は優れている一方で、活用するための機能は弱い傾向にあります。DMPで直接アクセス解析などを行えれば利便性が高まります。また、DMPに人工知能(AI)を搭載する動きも出てきています。今後はDMPに蓄積されたデータを元にしたレコメンド機能による広告の自動生成や配信サービスが充実してくるでしょう。

最近はDMPのベンダー同士が連携して、機能の相互補完によってより強力なプラットフォームの構築を目指す動きも出ています。導入費用や開発工数の削減につながると期待されています。一方で多くの企業が、保有している多種多様な顧客のビッグデータを有効活用できずにいる状況も続いています。

DMPはOne to Oneマーケティングを加速させる有効なツールである一方、目的や導入体制が不明瞭のままではうまく活用できず宝の持ち腐れになってしまう可能性もあります。ただDMPを導入するのではなく、どのような目的のためにどのように役立てるのかということを明確にした上で、導入を検討する必要があります。

文・J PRIME編集部(提供:JPRIME


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