定額料金でサービスを利用するサブスクリプションサービス(以下、サブスク)が広がりを見せています。音楽や動画、Webメディア、ファッションなどでスタンダードになりつつあるサブスクは、自動車業界にも及んでいます。2019年2月と3月からサービス開始で話題が集まるトヨタ(レクサス)のサブスクに勝算はあるのでしょうか?

サブスクを本格化させる国内大手・海外の高級車メーカー

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(写真=PIXTA)

自動車メーカーによるグローバルなサブスク合戦がはじまっています。まず、国内自動車メーカーのサブスクでは、先陣を切ってトヨタ自動車が2019年前半からスタート。サービス形態は、2種でプリウスやカローラスポーツなどの一般車種を対象にした「キントワン」(3月開始)、そして、高級車レクサスに限定した「キントセレクト」(2月東京都内開始)です。

一方、海外の高級車もサブスクが顕著で、メルセデス・ベンツは2018年より米国でサブスクの試験運用を開始しています。約30種類のモデルの中から選択した価格帯で自由に乗り換えが可能です。また、国内中古車販売大手のIDOM(旧ガリバーインターナショナル)では、BMW日本法人と提携し、定額でBMW・MINIの新車に乗れるサービスを開始しています。

料金は、最も安いプランで月額7万9,800円(税抜き)です。さらに、VOLVOも2020年代半ばまでに同社製品の半数をサブスクで提供すると発表しており、今後、国内大手と海外高級車メーカーとの競争激化が予想されます。

各自動車メーカーがサブスクに移行する理由とは?

では、各自動車メーカーがサブスクに移行するのはどのような背景があるのでしょうか。1つは、エンジン車から電気自動車へのシフトが世界的な流れになることです。それにより、自動車メーカーの優位性であったエンジン技術が電動化によって基盤を失う可能性があります。電気メーカーやIT企業などでも基盤を開発できるようになれば、従来のビジネスモデルを見直す必要に迫られる可能性もあるでしょう。

もう一つは、AI技術の進展に伴う自動運転車の普及です。自動運転車については国内・海外メーカーともに研究・開発を進めていますが、本格的な普及が進む2020年代以降はノーマルな高級車の買い控えが起こると予想されています。そうなると、これまでのような売り切りで終わりの完結型ではなく、携帯電話のような固定会員を増やしていかないと経営の安定化が図れない可能性があるのです。サブスクへの移行は、そういう時代を見据えての戦略であるといえます。

レクサスのサブスクは月額19万4,400円で6種乗り換え可

トヨタ自動車が打ち出したサブスクサービス「キント」の名前の由来は「西遊記」に出てくる筋斗雲(きんとううん)からきており、すぐに現れ、思いのままに移動できる身軽なイメージを打ち出しているようです。6種のレクサスが利用できる「キントセレクト」は、月額19万4,400円(税込み)。利用者は3年の間、半年ごとに新車に乗り換えることが可能です。

この月額費用に 自動車税や任意保険などの諸費用も含まれます。2019年2月のサービス開始時点では東京都内のレクサス店舗限定ですが、2019年の夏以降は全国都市部にも拡大する予定となっています。トヨタは「キントワン」「キントセレクト」の2つのサービス開始で、サブスクの強化に向けた布石を打っているのが現状です。

消費者の車への関心が「所有する」から「利用する」に移りつつある現在、今後、競合各社がどのようなサブスクサービスを打ち出していくのか注目されます。

最新車種に乗り続けられるがレクサスのサブスクのメリット

ただ、定額で音楽や動画の配信を受けられる薄利多売のサービスとは根本的に違います。レクサスのサブスクサービスにしてもかえって割高になるとの評価もあり、メリットはコスト安とは別のところにあるといえるでしょう。たとえば、キントセレクトを利用すると、3年間の総額は約700万円(19万4,400円×36ヵ月)となり、対応車種レクサスを購入できることになります。

そのため、レクサスのサブスクのメリットは「半年ごとに新しい車種に乗り換えられる」という部分です。これまでは、高級車を所有することがステータスでしたが、サブスクの時代は最新の高級車に乗り続けることがステータスになるのかもしれません。(提供:Wealth Lounge


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