不動産経済研究所によると、2018年12月の初月契約率は49.4%となり、1991年8月以来の50%割れとなりました。不動産バブルの崩壊の予兆だと分析する業界関係者もおり、いま資産防衛の検討の気運が高まりつつあります。

初月契約率とは何を意味するのか

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(画像=kurosuke / Shutterstock.com)

初月契約率とは、発売初月に成約となった戸数の割合のことを指します。例えば、2019年3月に発売された分譲マンション100戸のうち、その月内に80戸の契約を決まった場合には、初月契約率は80%となります。一般的には初月契約率は70%が好調と不調の分かれ目とされています。

不動産経済研究所は首都圏と近畿圏における分譲マンションの初月契約率を毎月公表しており、都市における分譲マンションの新規販売の売れ行きを測る指標として、不動産マーケットなどで注目され続けてきました。

金融危機が起きた2008年より低水準

首都圏における分譲マンションの初月契約率の年間平均は、2007年から2017年までの10年間では最低が2008年の62.7%、最高が2013年の79.5%でした。2013年をピークに減少基調が続いており、12月単月で49.4%を記録した2018年の年間平均は62.1%までさらに落ち込む結果となりました。

2008年と言えば、アメリカでサブプライムローン問題の深刻度が増し、米リーマン・ブラザーズの破綻を契機とした世界金融危機が起きた年です。つまりその2008年を下回る初月契約率を2018年は記録してしまったわけです。このことは不動産マーケットにおけるバブル崩壊の前兆を予感させるには十分すぎるインパクトを持っていると言えます。

また、マンションの開発業者は一般的に販売時期を細かく分けるなどして初月契約率が70%前後に落ち着くように戦略上調整しますが、もはやそのコントロールが効かないほどの事態に陥っていると指摘する見方もあり、事態の深刻さを危惧する声は少なくありません。

初月契約率の低下を招いた要因とは?

初月契約率の悪化にはいくつかの要因があるとされています。その一つが分譲マンションの平均価格の高止まりです。首都圏における1戸当たりの分譲マンション価格は2014年に1992年以来の5000万円台に達し、2018年は5871万円まで上がっています。

つまり4年間で約800万円も価格が上昇したことになり、2016年に日銀が導入したゼロ金利政策の影響で住宅ローンの金利は低い状態が続いているものの、一般のサラリーマン家庭には手が届きにくい価格帯になってきているということです。

消費者の生活スタイルの変化が初月契約率を引き下げている要因の一つと考える業界関係者もいます。

最近は車を持たない世帯が増えていると言われています。こうした世帯の場合は駅から近い分譲マンションを好み、郊外の物件は選択肢に挙がりにくくなります。このような理由で消費者の間で購入の選択肢が狭まると結果的に売れ行きがスローダウンし、初月契約率が下がることにつながるという理屈です。

バブル崩壊に備えた資産防衛手段とは?

こうした状況を考えると、不動産バブルの崩壊に備えた資産防衛手段を考える時期にいま差し掛かっていると表現しても、それは決して言い過ぎとは言えないでしょう。

バブルの崩壊に備えた防衛手段として考えられる対策の一つが分散投資です。バブル崩壊による影響は不動産価格の下落だけに留まりませんが、投資商品と投資先の国・地域を分散させることで、結果的に下落リスクを小さくすることにつながります。

具体的に言えば、国内・海外の株式や債権、不動産などにバランスよく投資し、投資先も日本を含む先進国や新興国などを組み合わせるといった具合です。分散投資の一環として、資産を貴金属や腕時計などのモノにして持っておく人もいます。

バブル崩壊の余波がどこまで到達するのかは、起きてみなければ分からないという側面もあります。しかし自分の資産を守ることができるのは自分しかいません。初月契約率の推移と各マーケットの状況を注視しながら対策を行っていくことが、いま各個人に求められているのです。

文・J PRIME編集部(提供:JPRIME


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