個人型確定拠出年金、愛称「iDeCo(イデコ)」は、2017年1月より、基本的に20歳以上60歳未満のすべての人が加入できるようになり、iDeCoのすそ野が拡大している。豊かな老後を送るため、加入を検討されている方もいるだろう。そこで今回は、iDeCoの概要や、同じく制度の利用が促進されているNISAとの違い、iDeCo活用の注意点などを解説する。

iDeCoとは

iDeCo
(画像=Watchara Ritjan / Shutterstock.com)

豊かな老後を過ごすために、資産形成を行うための私的年金制度が「iDeCo」だ。日本は今、急速な高齢化が進み、年金に対する不安は増すばかり。そこで、iDeCoを活用した「自助努力」による老後資産の形成が促されている。

iDeCoは、自ら掛け金を拠出し、自己責任で資産運用を行い、積み立てた資産を、自分自身で受け取る仕組みだ。銀行預金とは異なり、元本保証の金融商品ではないものの、超低金利の銀行に預けるよりも、着実に資産形成を図れるだろう。iDeCoでは、掛け金は5,000円から1,000円単位で拠出できるため、リスクを抑えながら、少額の積み立て投資を実践することが可能だ。

iDeCoの税制優遇制度とは?

iDeCo最大の特徴は、「掛け金の拠出時」「資産運用時」「積み立て資産の受取時」の3段階で、税制優遇メリットを享受できることだ。

まず、「掛け金の拠出時」には、掛け金の全額が「所得控除」の対象となり、その結果、所得税および住民税が軽減される。次に、「資産運用時」には、運用益に通常課せられる20.315%の税金が非課税となる。例えば、投資信託を購入し1万円の運用益を上げた場合、通常約2,000円の税金が課されるところ、iDeCo口座を活用することで非課税となり、運用益全額を再投資することができる。つまり、複利効果で資産を大きく増やせる可能性があるのだ。

最後に、「積み立て資産の受取時」には、年金形式で受け取る場合には「公的年金等控除」、一時金形式で受け取る場合には「退職所得控除」として、それぞれ節税することができる。まず、公的年金などの年間収入が65歳未満だと70万円まで、65歳以上だと120万円までは非課税となる。一時金形式で積み立て資産を受け取る場合、具体的な控除額の計算方法は以下の通りである。

  1. 勤続年数(iDeCoの積立期間)が20年以下
     40万円 × 勤続年数(80万円に満たない場合は、80万円)
  2. 勤続年数(iDeCoの積立期間)が20年超
     800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20年)

NISAとの違いはどこ?

iDeCoと同様に、一般NISA(少額投資非課税制度)も、利用拡大が進む税制優遇制度である。大きな違いは、一般NISAの非課税期間が最長5年なのに対して、iDeCoでは、拠出時・運用時の税制優遇メリットを何十年にもわたって享受することが可能な点だ。20代や30代の若年層のうちに運用を始め、60歳まで続けるというように、長期間での資産形成を検討している場合は、iDeCoを選択したほうが、税制優遇メリットを十分に受けられるだろう。

iDeCoには一般NISAにはない、拠出時の節税効果も期待できる。掛け金の全額が所得控除されるため、所得税・住民税を抑えられるのだ。

iDeCo活用の注意点

最後にiDeCoを活用する際の注意点だ。まず、原則60歳まで資産を引き出せない。iDeCoは老後資産の形成を図るための制度だから、銀行のATMで日々の生活資金を引き出すように、資金を頻繁におろすことはできない。

また、iDeCoを利用する際、加入時や運用期間中にさまざまな手数料が発生し、この手数料はiDeCo口座を申し込む金融機関によって異なる。一般的にiDeCoを活用した資産運用は、長期間に及ぶため、手数料をいかに低く抑えるかが、運用成績に大きく影響する。そのため、金融機関を選ぶ際は、手数料をしっかりと比較しておこう。手数料比較には「iDeCoナビ」(https://www.dcnenkin.jp/ )の手数料比較ページが参考となるはずだ。

今回は、iDeCoの概要や、同じく制度の利用が促進されているNISAとの違い、iDeCo活用の注意点などを解説した。iDeCoのメリットと注意点を踏まえたうえで、ゆとりある老後生活を送るための資産形成を実践されてはいかがだろうか。