要旨
- ロシアの2018年10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比2.7%増と、11四半期連続のプラス成長となった。また、2018年の実質GDPは前年比2.3%増と2017年の同1.6%増から加速し、3年連続のプラス成長となった。しかし、2018年の実質GDPが前年から加速したのは、比較的高水準で推移した原油価格によって、外需寄与度がマイナスからプラスに転じたからであり、内需は力強さを欠いている。
- 2019年のロシア経済は、マイナス材料が目立つため、2018年から実質GDP成長率が鈍化するだろう。マイナス材料としては、前年を上回る政策金利や前年を下回る原油価格、世界経済の減速の他、実質可処分所得の減少や付加価値税率引上げ前の駆け込み需要の反動が民間消費に水を差すことが挙げられる。ただし、2024年までの内政目標の実現に向けた国家事業に係る政府部門の消費や投資が景気を下支えし、底割れには至らないだろう。
- 近年のロシア経済が低成長に陥っているのは、潜在成長率が低下しているためと考えられる。この状況を打開すべく、プーチン大統領及び連邦政府は「2024年までの9つの内政目標と目標の実現に向けた13分野の国家事業」を掲げている。これらの事業は、短期的には政府消費や公的固定資本形成の拡大による景気の下支え、そして中期的には潜在成長率の上昇につながると期待される。しかし、国家事業の実現性に対する懸念と欧米による経済制裁が解除される見込みは薄いことから、後者については大きな効果が得られるとは考えにくい。