(本記事は、酒井レオ氏の著書『全米No.1バンカーが教える 世界最新メソッドでお金に強い子どもに育てる方法』=アスコム、2019年3月16日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

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圧倒的個性を身につける

子供,個性,通知表
(画像=YAKOBCHUK VIACHESLAV/Shutterstock.com)

かつて、日本には職人という各分野のスペシャリストがたくさんいました。そこから、ゼネラリストを育てようという方針のもと、なんでも器用にこなす八方美人タイプの人が増えていき、そしてまた時代はめぐり、スペシャリストが求められるように変化してきています。全教科で平均点以上をとることよりも、何かひとつ、ずば抜けて得意なものがある人のほうが、将来的に専門性の高い職業に就くことができ、どこかで拾ってもらえる確率が高くなります。

なんでも平均的にまんべんなくできる人材は、グローバル化した世の中で求められていないことは、アメリカの大学の合格基準からもわかります。世界の大学ランキングで常にトップ10に入るハーバード大学(日本人はハーバードが好きなようですが、2019年のランキングでは6位)には、入試で高得点をマークしただけでは合格できません。アメリカの大学では、互いを刺激しあって全体を発展させていく「多様性」を創り出すことが重要な役割と考えているため、その子の中に輝く個性があるかを最重要視します。高校生までにどんな活動をし、人にはないどのようなことができるのか、本人の資質をしっかりと見極めます。

もっといえば、出身大学名が物を言う時代もすでに過去のものです。アメリカでは大学ランキングトップ10に入るような名門大学は別として、大学名を名乗る機会はほとんどありません。

その代わりに会話によく登場するのが「GPA(Grade Point Average)」といって、取得した科目の点数で、どこの大学でも共通して重視される成績の指標です。1科目の成績を4点満点(0~4の5段階)で評価し、その平均点がGPAです。

「俺、GPAが3・6」と言えば、大学中にかなり勉強に打ち込んだのだなということがわかります。就職においても、大学を卒業したかどうかより、在学中のGPAとインターンシップやボランティア、仕事の経験が問われます。要するに、学歴より経験値が重視されます。

日本でも最近は、外資系の企業の就職試験でGPAが問われるそうです。社会全体が学歴より実際の経験値やパフォーマンスを問う時代になっているのです。

何者か、から、何ができるか、へ時代は移り変わっているからこそ、圧倒的個性が物を言います。

圧倒的個性を身につけるためには、繰り返しの説明になってしまいますが、その子が夢中になれるもの、没頭できることの邪魔をしない。これに尽きます。間違っても「そんなことの何が楽しいの?」とか、「そんな将来の役に立たないことに時間を使ってないで勉強しなさい」などと、頭から否定するような言葉をかけることだけは絶対にしてはいけません。

あなたが賢い親であるのならば、より理解が深まるような体験ができる場所へ連れて行ったり、関連書籍を購入するなどして、夢中や没頭が圧倒的個性に育つようにさりげなくバックアップをしてあげることです。

子どもが夢中になっていることを絶対にさまたげない

子どもはみんな、自分の〝好き〟を持って生まれてきます。たとえその子の好きが多くの人に理解されなかったとしても、「人生にムダはない」と言われるように、いつか役に立つ日がやってくるでしょう。つい先日も、その自分の考え方が間違っていないと思わせてくれる方にお会いしました。

東京大学の西成活裕教授は、長年、解明されてこなかった渋滞の謎を解き明かした「渋滞学」の専門家です。高速道路も工場の生産ラインも、渋滞が引き起こされる原因は共通していて、「前との距離を縮める」ことだと言います。

この発見のヒントは、子どもの頃に大好きだったアリでした。

「渋滞がなぜ起こるのか。誰も答えを見つけられずにいましたが、私はちっちゃい頃にアリが好きで、毎日飽きもせずにじーっとアリを見ていました。アリは、どんなに列が伸びていても渋滞で止まることがない。この地球に2億年以上生きているアリからヒントをもらい、前との距離を詰めなければいいという答えにたどり着きました」

先生が、〝急がば回れ〟は正しい、とおっしゃっていたのが印象的です。

研究した結果、ちゃんと車間距離を取っていれば渋滞は起こらない。でも、車間距離が空いていれば割り込んでくる人がいて、割り込まれた車の人はブレーキを踏む、そのブレーキが次のブレーキにつながって……そして渋滞が起こる。2億年以上前からこの地球上で生存していたアリの世界には、生き延びるための秩序が備わっていた、というわけですよね。

こんなふうに、小さい頃の何が大発見につながるかはわかりません。子どもが周囲の声も耳に届かないくらい夢中になっているときには、可能な限り、見守ることに徹することが最良であることを西成教授が教えてくれています。

僕自身もかつて、漫画『キャプテン翼』にのめり込んだ時期がありました。片道1時間の通学路を歩きながら翼になりきって、シュートを打ったりしていましたから、周囲からは変な目で見られていたかもしれませんね(笑)。でも、アメリカには「世間体」に当てはまる言葉もありませんし、僕自身、当時はまったく気になりませんでした。

『キャプテン翼』には人生のすべてが凝縮されています。決してマネのできない人間離れした技に何度もトライしては失敗し、自分の限界も教えてもらいました(笑)。それは半分冗談としても、あきらめない気持ち、仲間を信じること、夢に向かって努力すること、人生のステージが上がっていくたびに共感するストーリーが移り変わり、何度でも、何年でも、漫画の世界を楽しむことができました。

それほど読み込んでいた僕ですから、次第に作者の高橋陽一先生が「あ、今回はスパイクの裏側を描くのに手を抜いたな」とか、それこそ重箱の隅をつつくように、細かい点にまで気がつくようになっていったのです。

この実体験から僕は、誰がどこに注目しているかわからないから、どんなときでも絶対に100%で取り組もうと決意しました。バンカメ時代、どんな境遇にあってもあきらめることなく、顧客の利益最優先のスタンスで全力を注げたからこそ、最年少にして営業成績ナンバーワンにもなれました。

夢中になったものから派生して身につけた能力が光り輝くときがいつか必ず訪れます。子どもが何かに夢中になっているときは、その対象がなんであれ、その夢中な時間を存分に楽しませてあげると、その子の個性がより際立つことでしょう。

通知表なんてどうでもいい。得意分野をとにかく伸ばす。

日本の教育は、まんべんなくなんでもできる、すべての教科において平均点以上を求めます。通知表の「もう少しがんばりましょう」に◯がついていたら、平均点まで引き上げるように塾通いをしたり、スポーツ系なら特訓をしたりするでしょう。

でも、将来につながる才能を伸ばしたいなら、下よりも上を見たほうがいいはずです。もちろん、その時期に苦手を克服することで、その子にとって精神的な成長が果たせるなど、親の目から見て別の要素があるなら別ですが、もし僕ならば、苦手なことに時間を割くよりも、得意なことに時間を使うほうを選びます。

だって、考えてもみてください。あなたのお子さんが運動が苦手で、走るのはクラスでも遅いほうだとします。運動会は1ヶ月後。プロの指導者にお金を払って特訓をしますか?DVDや無料動画を見て毎日公園でダッシュしますか? それは、子ども本人の希望ですか?

1ヶ月の練習の成果でタイムが0・5秒縮まったとしましょう。それで、クラスの平均に近づきましたか? 順位がひとつ上がりましたか?

あるデータによれば、小学校高学年男子の100メートル走のクラス平均は16~19秒くらい、いちばん速い子で14秒を切るかどうか。遅い子で21秒くらい。

クラスでいちばん速い子と遅い子を比べれば7秒ほど、平均値と遅い子の間で2~5秒くらいの差はありますが、そもそも比べることに意味なんてないですし、その2秒とか5秒とか7秒で、人生に何か影響しますか?

ダントツでビリになったらかわいそう。そう思うなら、ビリになったことを笑い飛ばせるメンタルを育てることを考えてあげたほうが、よっぽど強い人間が育ちます。

得意分野を伸ばすといっても、運動が得意な子はいっぱいいます。その地域でちょっと目立つくらいでは、プロにすらなれないのが現実です。じゃあ、才能を伸ばす理由はなんなのだといったら、得意なことと好きなことが融合したときに、それがその子の圧倒的な個性になるからです。たどり着きたい場所は、ここです。

サッカーが得意で、ファッションが好きな子がいたら、サッカーのユニホームの生地やデザインの道を選択する可能性が出てきます。サッカーが得意で、物作りが好きな子なら、サッカーボールの材質に興味を持つかもしれません。ただ物作りが好きでボール製造に携わるより、自分自身がプレイヤーとしての経験があったほうが強みになります。

友だちと遊ぶより一人で本を読むのが好きな子の親は、将来、子どもがコミュニケーションで苦労すると心配するかもしれません。しかし、〝好き〟は人を呼び寄せます。

同じく読書好きな子と仲よくなる機会が必ずあるでしょうし、読書で培った幅広い知識や専門知識を活かせる分野と出合ったとき、それが圧倒的個性となって仕事に結びつく可能性も秘めています。いらぬ心配をするよりは、とことん本を読ませてあげることが才能を磨くことにつながります。

子供,お小遣い
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酒井レオ
ニューヨーク生まれ、ニューヨーク育ちのバイリンガル日系アメリカ人。
日本とアメリカ両方の文化に影響を受けて育ち、ワシントン大学卒業後、JPモルガンを経て、コマース銀行(現TD銀行)に入社。その後、バンク・オブ・アメリカに転職し、2007年、史上最年少にして「全米No.1」の営業成績を達成。30代前半の若さにしてヴァイスプレジデントに就任する。 同年、アメリカンドリームに挑戦する人たちを応援したいとの思いから、NPO法人Pursue Your Dream Foundation(PYD)を設立し、銀行業界からグローバルビジネス教育の世界へ転身する。金融、IT、メーカーなどあらゆる業界を対象に、社長・役員のためのエグゼクティブコーチングから、マネージメント研修、新人研修まで幅広く指導を行っている。

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