閉塞する日本経済を打破するのは「これがいい!」という「好み」だ
ビジネスではロジカルな思考が不可欠。特に、コンサルタントはロジカルな思考に長けている――。それが常識だろうが、コンサル業界で活躍してきた山口周氏は、ロジカルな思考には限界があると感じているという。いったい、なぜなのか? お話を聞いた。
ロジカルな日本企業が感性のアップルに完敗!
ビジネスパーソンにとって武器になる思考は、ロジカルシンキング――。これまではそれが当然視されてきたが、コンサルタントの山口周氏は、「今は『論理と理性』だけでは勝てない時代になった」と話す。さらに、現在、求められているのは「直感と感性」であり、個人の美意識を組織の意思決定に用いるべきだと提唱する。
「そのことを私が痛感したのは、2007年頃でした。
当時、私は携帯電話のプロジェクトに参画していました。その頃の携帯電話は、どのメーカーのものもそっくりでした。なぜなら、各社とも市場調査によって意思決定をしていたからです。消費者にインタビューをして、『二つ折りが使いやすい』『このボタンは小さくて押しにくい』といった意見を聞き、『市場調査でこんな結果が出たので、二つ折りでボタンが大きめの製品を作りましょう』と経営層に提案していたわけです。これは、マーケティングのセオリーに従った、論理的な思考プロセスです。
ところが、どのメーカーも同じような市場調査をして、同じような結果が出たために、同じような製品ばかりができてしまった。そんな中、2008年にアップルが日本でiPhoneを発売し、あっという間に市場シェアを奪ってしまいました。
論理的で優秀だとされていた日本企業の社員やコンサルタントが、『俺はこれがカッコイイと思う』という直感と感性で意思決定をするスティーブ・ジョブズ率いるアップルに完敗したのです。
このとき私は、『論理的・理性的な方法論の先に日本企業の復活はない』と確信しました」