収益不動産を購入する際に、月々のキャッシュフローは誰もが確認することでしょう。一方、売却時期や売却金額目安等の出口戦略について深く考える不動産オーナーは意外と少ないのが実情です。それでも不動産投資は購入~売却まで完了してはじめて投資として成功したか否かが分かるものです。そこで本稿では、不動産投資の出口戦略と売却時の税務申告について考えていきたいと思います。

不動産投資の出口戦略は重要事項

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(写真=sommart sombutwanitkul/Shutterstock.com)

不動産売買仲介業者は、物件紹介時シミュレーションの中に売却時期や売却金額の目安も提示してきますが、そもそも将来の不動産市況は完全に読み切れるものではありません。不動産投資は投資である以上、未来については誰も分からないものです。

未来が読めない以上、不動産オーナーの中には、出口戦略を一種のリスクと捉えてあまり深く考えたがらない傾向のある人も一定数存在しています。しかしそれはあまり良い経営スタイルではありません。たとえ収支シミュレーションのように厳密に見積もることは難しいまでも、将来の売却時期や売却目標額についてある程度の目安を立てておいた方が不動産投資は成功につながりやすいからです。

では、出口戦略を具体的に考えるにはどのような切り口で臨めば良いのでしょうか。

売却時期と売却金額シミュレーション

出口戦略シミュレーションをするにあたって、まず考えることは売却予定の時期を決定することです。なぜなら売却予定時期を決めることによって、購入した不動産の売却予定時期における築年数が分かるからです。次いで今の市況で同じ築年数、その他の条件が類似している物件の成約事例や売り出し価格を参照してみましょう。そうすると大体どの程度の金額で売却できるのかの輪郭が浮かび上がってきます。

当然のことですが、物件の購入価額が安いほど、売却時の利益が大きくなる可能性が高くなります。また、安く購入していれば、ローン借入額も少なく済み、当然月々のローン返済額も少額となるので、その後の賃貸経営を考えてもプラスの要因となるでしょう。購入時に安く購入するというのは不動産オーナーにとってはぶれてはいけない基軸となります。

なお、この出口戦略では完全に予想できないものもあります。5年先、10年先に想定している築年数、その他条件が同じ物件を売却した場合に、平均利回りがどうなっているのかという点です。たとえばエリアの物件価値が上昇し、平均利回りが下がっている状況であれば、想定より高く売れますし、逆の状況であれば、想定より安く売らざるを得ません。

シミュレーションはあくまでもシミュレーションです。しかし出口戦略を通じて売却までの計画を立てることによって、購入すべきでない物件の購入を見送るという大事な判断ができるようになります。だからこそ売却予定時期と売却金額のシミュレーションは、不動産仲介業者の提示のみならず、自分でも行う事を推奨します。

個人と法人の譲渡所得課税の違い

売却予定時期については税金面も考慮に入れておきたいところです。たとえ同じ不動産であっても、個人所有の不動産なのか、法人所有なのか、いつ売却するのかなどによって税率が異なってくるためです。

・個人所有は期間で税率が変わる

個人所有であれば、購入した年月から売却した年月の属する年の1月1日時点までの期間が5年以下の場合は、短期譲渡所得となり、税率が約40%発生します。一方、購入した年月から売却した年月の属する年の1月1日時点までの期間が5年超の場合は、長期譲渡所得となり、税率が約20%まで下がります。

売却益が出なければこの税率はあまり重要ではありませんが、最初のシミュレーションでは、売却益を見込む不動産オーナーの方が多いと思うので、売却益が発生した時の税率まで考えて、売却予定時期を考えていく視点も必要です。

・法人はいつ売っても税率は同じ

また、法人で不動産を所有する不動産オーナーの方もいますが、法人の場合は、短期譲渡所得、長期譲渡所得という区分がありません。区分がないということは、いつ売却しても税率は同じとなります。

法人はその法人の課税所得の金額によって税率が異なります。そのため、一概に税率が何%だとは言い切れません。ただし、課税所得が800万円以下であれば、税率は25%弱というのが今の標準税率です。

不動産投資において出口戦略は不可欠なもの

このように出口戦略は不動産投資において欠くべからざる大切なポイントなのです。とくに売却時に大きな利益が出る場合は、税率の違いによって手元に残る金額も大きく違ってきます。そのため、出口戦略を行うにあたっては、税金面も考えるようにしていきましょう。(提供:Owners Innovation

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