現在の日本社会は急速に進む少子高齢化を背景に、年金の財政バランスが崩れ、将来世代の受け取れる年金額が目減りするのでは、との懸念が高まっている。「老後不安」や「年金破綻」といった言葉もメディアで飛び交うようになり、今まさに自助努力による老後資産の形成が求められている。そこで本稿では、豊かな老後生活を送るための効率的な老後資金作りとして3つの方法を紹介する。

方法その1:つみたてNISA

年金,老後
(画像=Narin Nonthamand/Shutterstock.com)

つみたてNISAとは、少額からでも長期・積み立て・分散投資をサポートするために、政府が積極的な利用を推進している非課税制度だ。具体的には、一定の投資信託や上場投資信託(ETF)から得られた分配金や譲渡益に対し、通常20.315%かかる税金が非課税となる。

利用できるのは、日本に住む20歳以上の人で、非課税となる投資上限額は年間40万円、非課税期間が最長20年間と定められている。例えば、40歳から60歳までの20年間、毎年投資上限額の40万円ずつ積み立て投資を行ったとしよう。合計800万円の老後資産を形成することになり、その間の運用益は非課税なので、利益の全てを取得できることになる。

この制度を活用する際の注意点として知っておきたいのは、つみたてNISAは、銀行口座のように複数の銀行で口座を開設できないことだ。つまり、つみたてNISAは1人1口座である。つみたてNISAを申し込む金融機関を選択する際は、投資できる金融商品の種類やサポート体制などを十分に吟味したうえで決めるようにしたい。

なお、投資信託を保有する際には、「信託報酬」という管理手数料がかかってくる。つみたてNISAは最長20年間にも及ぶ長期の資産運用となるため、信託報酬をいかに抑えるかが運用パフォーマンスに直結してくる。投資信託の購入の際には、信託報酬が低い投資信託を選択するよう心がけたい。

方法その2:iDeCo

次にご紹介するのが、私的年金制度である個人型確定拠出年金、愛称「iDeCo(イデコ)」を活用した老後資金作りだ。iDeCoは、公的年金である国民年金や厚生年金とは異なる仕組みを取っている。文字どおり自己責任で掛け金を拠出し、運用も自分自身で行い、積み立てた資産の受け取りも自分となる。

iDeCoは5,000円から1,000円単位で始められるため、投資初心者にとっても比較的低リスクで投資をスタートできる。投資できる投資商品はiDeCoを申し込む金融機関によって異なるが、基本的には元本確保型の定期預金や保険から、リスクを積極的に取りにいく株式型の投資信託まで、バラエティーに富む商品ラインアップとなっている。

そしてiDeCoを活用する最大のメリットが、「拠出時・運用時・受取時」の3段階で税制優遇を享受できることであろう。

まず拠出時には、拠出金額の全額が所得控除の対象となり、所得税および住民税を節税できる。次に運用時には、つみたてNISA同様に、通常20.315%かかる税金が非課税となる。そして受取時には、年金形式で受け取る際には「公的年金等控除」の対象に、一時金として受け取る場合には「退職所得控除」の対象になり、いずれも税金を抑えられる。

ただしiDeCoを利用する場合、原則60歳まで積み立て資産を引き出せないので注意したい。

方法その3:個人年金保険

公的年金にプラスアルファとして、私的年金である個人年金保険による老後資金作りも一策だ。個人年金保険は、定められた保険料の払込期間に保険料を納めることで、契約の際に定められた年齢から一定期間(5年や10年など)年金を受け取れる金融商品である。公的年金だけでは、老後資金が足りなくなる可能性の高い人たちに有効な保険といえるだろう。

個人年金保険は、年金の受取期間で終身年金、有期年金、確定年金の3つに分けられる。終身年金と有期年金は遺族に年金がないが、確定年金は遺族に年金がある。外貨建ての個人年金は高い利回りが期待できる反面、為替レート次第では元本割れのリスクもある。さらに、年金支払期間中は、管理費などの運用コストがかかる場合があるので注意したい。個人年金保険料控除で、所得税と住民税が節税できるのも個人年金保険の良い点だろう。

本稿では老後資金の作り方として3つの方法を紹介してきた。それぞれの商品特性を把握したうえで、より効率的な老後資金作りを実践してみてはいかがだろうか。