はじめに~身体調節機能を持つカンナビジオール(CBD)の特性~

医療用大麻
(画像=ShutterstockProfessional / Shutterstock.com)

今、医療用大麻(マリファナ)が注目を集めている。それは文字通り医療目的で使用される大麻(マリファナ)を指し、主に鎮痛剤や身体機能調節用途として使用されるものである。(本稿では原料としての大麻は「アサ」もしくはそのまま「大麻」とし、大麻を乾燥させるなどして加工したものを「大麻(マリファナ)」と表記する。

大麻という言葉から、特に我が国ではネガティブなイメージを持たれることが多いのではないだろうか。日本の法律上、免許を持った者のみが大麻の栽培を許されていることに加えて、所持・使用についても法律上厳しく規制されている。栽培の免許を持たない一般人が大麻を所持することは違法とされており、過去に著名人が大麻を違法に所持していたことにより逮捕される事態が生じてきた。結果として大麻(マリファナ)=非合法麻薬というイメージが定着したというわけである。そもそも日本において大麻の取り扱いが上記のように厳しく制限されているのは第2次世界大戦後に施行されたポツダム省令に由来する。

大麻(マリファナ)は薬用植物の「アサ」から作られる。その「アサ」に100種類以上のカンナビノイドという成分が含まれており、カンナビジオール(CBD)はその1つである。実は今カンナビジオール(CBD)を入れた飲料や食品が注目を集めている。カンナビジオール(CBD)が身体機能調節効果を持つといわれており、医療用大麻(マリファナ)にも同様の効果があるといわれている。更には病気や身体機能の不調を改善し食欲増進効果などもあるとされている。そのためにカンナビジオール(CBD)はセルフ・メディケーションのためのツールとして非常に注目されているのである。たとえば有名企業ではコカ・コーラ社がカンナビジオール(CBD)入りの製品開発を検討し始めたことが話題となっている。

留意すべきなのが大麻(マリファナ)とカンナビジオール(CBD)の区別である。重要なのは大麻(マリファナ)とカンナビジオール(CBD)いずれにも含まれているテトラ・ヒドロ・カンナビオール(THC)という成分の配合量である。テトラ・ヒドロ・カンナビオール(THC)とは精神に作用する成分で摂取しすぎると精神錯乱や幻覚・幻聴を引き起こす可能性がある。そのため日本でも厳しく規制されているのだ。医療用でも嗜好用でも大麻(マリファナ)にはそれが0.3%超含まれている。一方でテトラ・ヒドロ・カンナビオール(THC)が0.3%以下しか含まれていないのがカンナビジオール(CBD)なのである。近年{カンナビジオール(CBD)が他の自然由来成分と比して広い医療効果がある可能性が注目されている}(https://www.mylohas.net/2018/08/173387cbdoil.html)のである。先述したようにカンナビジオール(CBD)を飲料や食品に使用する動きが徐々に拡大しつつあり、同製品を中心としてマーケットの拡大が期待されている。しかしながらカンナビジオール(CBD)を巡っては各国で法律上の扱いが大きく異なっていることに留意する必要がある。

諸外国と日本におけるカンナビジオール(CBD)の立ち位置

カンナビジオール(CBD)を含めた大麻(マリファナ)関連製品については国や地域によって法律上の取り扱いが異なっている。例えば米国ではマサチューセッツ州やカリフォルニア州をはじめとして10州で医療・嗜好用大麻(マリファナ)の使用が合法とされている。またニューヨーク州でも医療用に限って合法とされている。同じく北米大陸のカナダでも医療・嗜好用大麻(マリファナ)が合法となっている。特に米国では「精神作用の少ない」カンナビジオール(CBD)に関してはコーヒーに入れて飲用することが薦められており、デザートに入れた製品が開発されるなど「カンナビジオール(CBD)先進国」として利用が進んでいる2022年にはカンナビジオール(CBD)を使用した製品だけで1億9,000万ドル規模に成長することが期待されているのだ。米国を筆頭にこの流れがさらに加速していくことが予想される。

他方で日本を含めたアジア・マーケットにおいて大麻(マリファナ)を嗜好用として合法化している国はまだないものの、医療用に関して言えば韓国やフィリピンで使用が認められている。日本では医療用・嗜好用共に大麻(マリファナ)の使用は非合法とされており、仮に日本人が旅行などで嗜好用大麻(マリファナ)合法国にいたとしても日本人による使用は禁止されている。

それでは日本では「アサ」の抽出成分であるカンナビジオール(CBD)すらも非合法とされているのかというと実はそうではない。実は「アサ」のどの部分から抽出されたかによって合法・非合法が分かれていることに注意する必要がある。日本の法律上は「アサ」の茎と種からの抽出物であれば合法とされている。他方で穂・葉・根から抽出した成分を使用した場合は非合法になる。 購入者にとっては目の前にあるカンナビジオール(CBD)入りの製品の原材料が一体「アサ」どの部分の抽出物なの知ることが難しい。したがって一般的には正規の販売業者からのみ購入することが薦められていることに加えて、カンナビジオール(CBD)を含めた大麻(マリファナ)の法律上の取り扱いが日本とは異なる米国からの輸入製品も避けるべきとされている。

このようにカンナビジオール(CBD)や大麻(マリファナ)はセルフ・メディケーションにおける有用性が注目されているものの、取扱いに関しては各国でバラつきがあり、非常にセンシティブな商品には違いない。しかしながら筆者はこのカンナビジオール(CBD)に関しては日本においても今後活用がさらに広がっていく可能性があると考えている。

おわりに ~カンナビジオール(CBD)マーケットの展望~

身体機能調整効果をはじめとして医療上の効果が期待されているカンナビジオール(CBD)は種・茎からの抽出物であれば日本でも合法であり、今後活用が拡大していく蓋然性は決して低くない。実際にカンナビジオール(CBD)を使用した製品を取り扱う専門店が徐々に出始めていることをご存じだろうか。ECサイトでの取り扱いも始まっており、今後正規販売者であることが一目で分かるような認定制度などが普及すればより一層カンナビジオール(CBD)マーケットは拡大していくことが予想できる。無論、非正規業者をいかにして駆逐するかが大きな課題になりうる。そのためにも正規・非正規の棲み分けが非常に重要となってくる。

昨今セルフ・メディケーションや自己免疫力の重要性が認識されつつある中でカンナビジオール(CBD)はそのためのツールとして今後も注目される蓋然性が高く、現代社会を生きる人々の救世主になりうるのかが注目されている。

他方で大麻(マリファナ)は今後日本でも非合法のままなのだろうか。実は米国で合法化が進んでいることが日本にも影響する可能性があるというのが卑見である。そもそも日本で大麻(マリファナ)が非合法化されたのは第2次世界大戦の敗戦によってポツダム省令を施行したことが始まりだった。当該法令の施行に際しては当時のGHQ、すなわち米国の意向が反映されているものと考えられ、その米国で大麻(マリファナ)が合法になりつつあるならば、いずれは日本もそうするべきだという論調が出てくる可能性もあり得る。

以上のように未だネガティブなイメージがつきまとうもののその効果効用が認められつつあるのが医療用大麻(マリファナ)、あるいはカンナビジオール(CBD)なのだ。今後北米を筆頭にその使用の合法化がさらに進んでいくのか、それがどういった形でそれ以外の地域へ波及していくことになるのか注視すべき展開である。医療用大麻(マリファナ)やカンナビジオール(CBD)がストレス社会の救世主としてもてはやされ、同マーケットがより拡大する日も遠くない。

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)
元キャリア外交官である原田武夫が2007年に設立登記(本社:東京・丸の内)。グローバル・マクロ(国際的な資金循環)と地政学リスクの分析をベースとした予測分析シナリオを定量分析と定性分析による独自の手法で作成・公表している。それに基づく調査分析レポートはトムソン・ロイターで配信され、国内外の有力機関投資家等から定評を得ている。「パックス・ジャポニカ」の実現を掲げた独立系シンクタンクとしての活動の他、国内外有力企業に対する経営コンサルティングや社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。

岡田慎太郎(おかだ・しんたろう)
株式会社原田武夫国際戦略情報研究所グローバル・インテリジェンス・ユニット リサーチャー。2015年東洋大学法学部企業法学科卒業。一般企業に勤務した後2017年から在ポーランド・ヴロツワフ経済大学留学。2018年6月より株式会社原田武夫国際戦略情報研究所セクレタリー&パブリックリレーションズ・ユニット所属。2019年4月より現職。