老後に漠然とした不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。少子高齢化が進み、年金制度を維持することが難しくなってきているというニュースを聞いたこともあると思います。
預貯金には金利があまりつかない状況ですから「預貯金だけでなく運用もした方がいいかも」と思う方も多いでしょう。
今回は貯金だけでなく運用も考えているという方向けに、運用の基本的な考え方をご紹介します。
貯金から運用のその前に
運用は資産形成に有効な手段ですが、当然リスクがあります。誰もが資産運用しないといけないわけではありません。では、資産運用すべきなのは、どのような方なのでしょうか?
まずは生涯収支を考えよう
運用が必要かどうか、「生涯収支」を作ってみると簡単に確認できます。生涯収支とは現時点から生涯の収入と支出をざっくり推測してみる、いわば一生分の家計簿です。
年齢 | 30 | 31 | 32 | 33 | 96 | 97 | 98 | 99 | 100 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
収入 | 350 | 353 | 357 | 360 | 150 | 150 | 150 | 150 | 150 |
支出 | 300 | 320 | 300 | 400 | 250 | 250 | 250 | 250 | 250 |
収支 | +50 | +33 | +57 | ▲40 | ▲100 | ▲100 | ▲100 | ▲100 | ▲100 |
貯金 | 200 | 233 | 290 | 250 | 900 | 800 | 700 | 600 | 500 |
上記のように、100歳までの収支を簡単に表にまとめます。収入は手取りの金額で記載し、支出は車両費や家賃、保険料などの項目に分けて作成します。退職金や車検費用など、毎年は発生しない金額も忘れずに記入しましょう。
日本FP協会が提供する各種ツールを利用すると、簡単に作れるのでおすすめです。
https://www.jafp.or.jp/know/fp/sheet/
生涯収支を作成したら、貯金がマイナスになる時期がないかチェックしてみてください。単年で収支がマイナスになるのは許容範囲ですが、貯金がマイナスになる状況は避けたいものです。
特に収入がなくなる老後の状況は厳しくチェックしましょう。収入がある現役の間に、十分な老後生活が送れるだけの資産を築けるかが重要です。
貯金だけで目標達成が難しいなら運用を選択肢に
生涯収支をチェックした結果、マイナスになる時期がありそうなら家計計画の見直しが必要です。無駄な支出がないか、チェックしましょう。
支出の見直しだけでは貯金のマイナスがなくならない場合、あるいは十分な老後資金を築くことが難しそうな場合に、初めて運用が選択肢になってきます。
逆に、貯金だけで十分な生涯収支を達成できそうなら運用は不要といえます。
運用商品の基礎知識
生涯収支を作成して「私は運用が必要かもしれない……」となった場合、まずは運用の基本的な知識を身につけましょう。
株式・不動産・債券……主な金融商品を知ろう
運用する主な金融商品は株式と不動産、そして債券です。それぞれ特徴がありますが、値動きがある商品で、いずれも元本保証ではありません。一般には、株式>不動産>債券の順にリスクが高いとされています。
不動産は実際に買い付けてもよいですが、REIT(リート、不動産投資信託)を利用すれば少額から投資可能です。これらに投資するには、証券会社で口座を開設する必要があります。
国内だけじゃなく海外にも投資できる
運用商品は国内だけでなく、海外にもあります。日本より優れた投資地域があると判断すれば、海外へ投資することも選択肢のひとつです。
海外への投資の場合、為替のリスクに気をつけましょう。円高になればマイナス要因となり、逆に円安になればプラス要因です。
政治情勢やマーケットが不安定な国もあります。一概にいえませんが、一般に新興国の方が運用リスクは高い傾向にあります。
リスクとリターンの関係
資産運用はリスクが高いと怖いイメージがありますが、その分リターンも期待できます。自分の人生にどの程度のリターンが必要なのか判断し、適切な金融商品を選択しましょう。
投資信託(ファンド)ってどんな商品?
株式や債券などの金融商品をいくつか詰め合わせた「投資信託」というものもあります。株式などの金融商品にはそれぞれたくさんの銘柄がありますが、投資信託は、運用のプロが私たちの代わりに選別し、商品を1つにパッケージしているイメージです。
投資信託の種類
運用方針 | アクティブ型 | 平均を上回る運用を目指す |
---|---|---|
インデックス型 | 平均を目指す | |
組み入れの仕方 | 単一資産型 | 株式だけ、債券だけのように1つの資産のみ |
バランス型 | 複数の資産を組み入れる |
投資信託は主に4つの種類があります。一般にリスクの高さはアクティブ型>インデックス型、単一資産型>バランス型となります。
運用初心者にとってうれしい投資信託の3つのポイント
投資信託は運用初心者にとってうれしいポイントがいくつかあります。
分散投資が簡単にできる
投資信託は基本的に複数の銘柄が含まれますので「分散投資」の効果が期待できます。1つに資産をまとめないことでリスクが低減し、効率的な運用が期待できます。
少額から投資可能
投資信託はネット証券で100円から投資可能です。「いきなり大きなお金を運用に回すのはちょっと……」という方でも気軽に始めることができるでしょう。
非課税制度が豊富
iDeCo | 運用益が非課税。所得税も安くなる。60歳まで解約不可 |
---|---|
NISA | 運用益が非課税。いつでも解約可能。個別株もOK |
つみたてNISA | 運用益が非課税。いつでも解約可能。投資信託だけが利用できる |
通常、運用で得た利益には税金がかかります。しかし、投資信託であれば、運用で得た利益に税金がかからない制度を使うことができます。よりお得に運用ができるので、投資信託を買う場合は活用することをおすすめします。
貯金と運用のバランスが大事
運用はあくまで第二の選択肢であり、貯金だけで十分な資産形成が可能なら、無理に行わなくても大丈夫です。運用をする場合でも貯金を基本に考え、過度に運用に回しすぎないよう心がけましょう。
文・若山卓也(ファイナンシャル・プランナー)/fuelle
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