1970~1990年代に国産スポーツカーの存在感をグローバルで示し続けてきたGT-R。人気大衆車スカイラインの流れを受け継ぎながら、ポルシェなどに匹敵する加速性能、走行性能を追求してきました。最新のGT-Rはさらに独自の領域で進化し続けています。

大坂なおみ選手にちなんだ記念GT-Rに予約殺到

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(画像=PIXTA)

2018年に日本人初の全米オープン優勝者になった大坂なおみ選手は、優勝を果たした後に日産自動車のブランドアンバサダーに就任しました。就任発表時に、「好きな車種は?」という質問に対してGT-Rと即答。日産自動車からGT-Rを寄贈されたことが話題になりました。また、大坂なおみ選手のブランドアンバサダー就任を記念して、記念モデルのGT-Rが限定50台生産されることも話題を集めました。

記念モデル車の価格が1,260万4,608円であるにもかかわらず、予約受付を開始して約2週間で上限の50台に到達するなど、GT-Rの人気の根強さが見て取れます。

GT-Rの歴史 1960~1970年代の第1世代 1990年代の第2世代

GT-Rと聞くとスポーツタイプを想像する方が多いかもしれません。しかし、第1世代のGT-Rは大衆型セダンやスカイラインから派生しました。ベースになっているのは、1960年代後半に人気を集めていたC10です。

マイナーチェンジに合わせてフレーム剛性を維持しながら軽量化を実現するなど、より空気抵抗を軽減して運動性能を高めた2ドアハードトップクーペもモデルに加わります。その後、KPGC110をベースとしたGT-Rが1973年に登場しましたが、わずかな台数の生産で終わり、その後しばらくGT-Rは生産されませんでした。

しかし、16年が経過した1989年、世界的に高い技術を追求することを目標に掲げていた日産の集大成として第2世代のGT-Rが登場します。第1世代を復活させたというだけでなく、当時のハイテク先端システムと高性能エンジンが搭載されているのが特徴です。「1989年:R32型」「1995年:R33型」「1999年:R34型」といった3車種の開発を最後に再びGT-Rの生産が中止になりました。

ハイテクだったゆえに部品の欠品に悩まされる第2世代GT-R

最後に生産された第2世代のR34型でも、生産終了から17年経過し、最も古いR32型でさえ約2万台が残存しているといわれます。いかに第2世代の人気が高かったかが分かるのではないでしょうか。しかし、ここにきて第2世代は大きな問題に直面しています。それは純正部品の欠品です。GT-Rのオーナーは、購入して大事に飾っておくのではなく実際に運転して楽しむケースが目立ちます。

そのため、いくら根強い人気があって20年以上経過した現在に数多くの車体が残っていても、部品がなければ車検に通らないので廃車になってしまうのです。そこで、日産は2017年11月に「NISMOヘリテージ」を設立し、欠品している部品の再生産・再供給に取り組み始めました。しかし、時代の変化とともに車に使用している部品が大きく変わっているため、部品の入手が困難を極めるものもあります。

今後は、同じ素材を使った生産方法による復刻部品のほか、素材や製造方法が復刻部品とは異なっているリプレイス部品、既存部品を修復して再生するオーバーホールプログラムも組み合わせながら純正部品の欠品に対応していくことが予定されています。

オリジナリティを追求した最新第3世代GT-Rの実力

GT-Rは、C10・C110・R32・R33・R34といった各スカイラインの派生の枠で作り上げられてきました。つまり、既存の車に対して新しい開発要素を継ぎ足すだけで、結果的に価格の高騰やオリジナリティの欠如が生じることになります。しかし、「丸目のテールランプや直6エンジンがあってこそスカイラインだ」というように、「スカイラインの派生こそGT-Rだ」というファンもいます。

コンセプトを変えることは、ファンを失うことにもつながります。そこで、GT-Rは原点の「究極のドライビングプレジャーの追求」を変えることなく、「洗練されたグランドツーリング性能」と「圧倒的な速さ」を求めました。独自性の高いエンジン性能やフォルムを新たなGT-Rに取り込むことで、スカイラインの派生の枠にとどまらない新しいステージに突入しています。

現在のGT-Rには、主に以下の3つの種類があります。

・GT-R Pure edition
・GT-R Black edition
・GT-R Premium edition

・GT-R Pure edition
GT-Rの性能がどんなものかを堪能したい方は、エントリーモデルの「GT-R Pure edition」(1,063万1,520円(税込み))がよいでしょう。

・GT-R Black edition
上質な黒基調の内装やレカロシートなどにこだわりたい方は、「GT-R Black edition」(1,253万9,880円(税込み))がおすすめです。

・GT-R Premium edition
専用内装色やBOSEのサウンドユニットなどのラグジュアリーさを求める方は「GT-R Premium edition」(1,210万5,720円(税込み))という選択もあります。

GT-Rは、標準的なモデルでも1,000万円を超えているのが特徴です。

レース仕様の本格派モデルを選びたいなら「GT-R NISMO」

GT-Rには、標準車をレース仕様にモデルアップした「NISMO(ニスモ)」と呼ばれるモデルがあります。標準車との主な違いは、最高出力を20馬力増加したほか、より空気抵抗をなくすボディや冷却性能を追求した点です。街中で走行できるスーパーカーとしての快適性を高めている「GT-R NISMO」。搭載している性能面や機能面で、同様の機能を備えた車種の中でにおいて割安と評価する方も少なくありません。

環境性能に積極的に取り組むスタンスも GT-Rの特徴

第1世代のGT-Rが排ガス規制に該当してしまい、第2世代ではそれらに対応したモデルが発売されました。このように、車は地球環境に影響を与えるものであるため、環境への配慮が求められているのです。GT-Rを生産している日産では、「人とクルマと自然の共生」を目指して以下の3つのチャレンジを行っています。

・CO2排出量低減
・エミッションのクリーン化
・資源循環

GT-Rは、排出ガス規制値よりも窒素酸化物や非メタン炭化水素など、排出量の25%の低減で国土交通大臣から低排出ガス車として認定されています。また、資源の有効活用のためにリサイクルしやすい構造や材料を採用したことで、リサイクル可能率95%以上を達成しているのです。「スポーツカーだから環境性能は2の次」というスタンスは、もはや通用しない時代といえるでしょう。

エンジン職人が1基ごとに組み立てるGT-Rのエンジン

労働人口の減少や大量受注に備えるために、ロボットを使った大量生産が当たり前ですが、GT-Rのエンジンの生産過程はいまだに職人の技が支えています。GT-Rでは、エンジンを一人の匠が1基ごとに組み立てています。トランスミッションも同様です。エンジンやトランスミッションは、F1を製造する際と同様、ちりやほこりのない専用のクリーンルームで組み立て作業が行われます。

GT-RやF1などの高性能な車は、わずか0.1mm以下の誤差が生じても走行に影響を与えてしまいます。そのため、GT-Rの製造過程では、ロボットなどの先進的な生産技術が発達しても職人の指先の感覚に勝るものはないと考えており、徹底したこだわりで1台1台の生産を行っているのが特徴です。

国産車なのに資産価値が保ちやすいのもGT-Rの魅力

大手中古車サイトなどで第3世代のGT-Rの価格をリサーチしてみると、「修繕歴がない」「走行距離が1万キロオーバー」「年式が5年前」といった条件でも、800万~900万円台で取引が行われているケースがあります。ポルシェなどの外車の中には、年数の経過とともに値上がりするものもあるでしょう。

GT-Rの場合、(希少価値の高い初期モデルなどを除けば)値上がりまでは期待できませんが、年数の経過による資産価値の減少は防ぎやすいといえます。資産価値重視でスポーツカーを所有したいと考えている方は、匠のこだわりが詰まっているGT-Rを購入することも一つの選択肢といえるでしょう。(提供:Wealth Lounge


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