大手企業でもリストラは珍しくない昨今、突然の年収ダウンに直面する人もいるかもしれない。年収がダウンした際、多くの世帯で一番の重荷になるのが住宅ローンだ。年収が右肩上がりであった高度経済成長期とは異なり、これからは年収が下がるリスクを予測した住宅ローンを組むことが求められる。

住宅ローンは年収800万円でいくらまで組めるのか

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(画像=Juan Ci/Shutterstock.com)

住宅ローンの審査基準に関する重要な項目の一つに返済負担率がある。返済負担率とは、税込年収に対する住宅ローンの返済に占める割合のことだ。

例えば、住宅金融支援機構のフラット35では年収400万円未満は30%以内、年収400万円以上は35%以内を基準としており、大手メガバンクでも35%が目安となっている。

年収800万円の場合は、返済負担率を35%以内と考えると年間返済額を280万円までに抑える必要がある。頭金ゼロ、固定金利1%で35年間の返済と考えると月の返済額は23万3,333円までとなり、借り入れ限度額は約8,265万円まで住宅ローンを組むことができる。

実際の返済負担率には、車のローンなど他の借り入れも含まれる。金融機関における住宅ローンの審査では、この他にも勤務先や勤続年数などの基準があるため、あくまで目安としての金額だ。

年収800万円の人が返済負担率いっぱいの住宅ローンを組むと家計は赤字になる?

家計の支出は住宅ローンだけではない。返済負担率はあくまで税込年収を基準にしており、所得税や社会保険などが引かれた税引き後の年収はもっと少ない。

年収800万円の場合、12カ月(ボーナスも含む)で計算すると1カ月約67万円となり、手取りは約48万円だ。

住宅ローン返済世帯の平均消費支出が、約36万円(総務省統計局の2018年「家計調査」より)であることを考えると、実際に返済に回せるのは約11万円程度。返済負担率いっぱいの住宅ローンを組むと、住宅ローンの返済は約23万円なので、約12万円の赤字になってしまう。

いくら返済負担率が35%以内だと言っても、家計が赤字になるような返済計画ではそもそも金融機関の審査も通らない。

たとえ赤字ではなくても余裕のない返済計画を立ててしまうと、万が一、リストラや出向で年収が下がった場合に住宅ローンの返済ができなくなるため非常に危険なのだ。

住宅ローンは年収がダウンするリスクを見越して組むほうがいいが……

家計の平均的な返済余力は22.7%である(国土交通省の平成29年度「住宅経済関連データ」より)。これは勤労世帯の可処分所得から消費支出を引いた場合の数字だ。年収800万円であれば年額が約181万円で、月々の返済は約15万円までに抑える必要がある。老後のために毎月5万円程度の貯蓄をすると、住宅ローンの毎月の返済額は10万円程度だ。

これはあくまで完済に至るまで、同じ年収が続くことが前提だ。実際には突然の出費、金利の上昇、自身の年収ダウンなども考慮して返済計画を立てる必要がある。

例えば、頭金ゼロ、金利1%借入期間35年で月々の返済額が10万円とすると、3,542万円の住宅ローンを組むことが可能である。10年後に金利が2%上がった場合、住宅ローン残債は約2,653万円、借入期間は25年であると返済は約12.5万円となる。この程度の負担ならば、支払いは可能だろう。

怖いのは年収がダウンしたときだ。例えば、年収が800万円から600万円にダウンした場合、月収は約16.6万円減少。貯金の5万円が余力としてあるが月11万円ほど赤字になり、住宅ローンの返済ができない事態に陥ってしまう。

年収が600万円にダウンすることも考慮して住宅ローンを組むとなると、返済余力15%となれば約90万円程度に抑える必要がある。組める住宅ローンは月々7.5万円。金利1%借入期間35年で考えると2,586万円となる。

しかし、首都圏のマンション平均販売価格が5,908万円ということから考えるとこの住宅ローン金額では物件を買うことは難しいだろう(国土交通省の平成29年度「住宅経済関連データ」より)。

住宅ローンは頭金の準備や繰り上げ返済の検討も

上述したように月々の返済を10万円に抑えれば、年収800万円で3,500万円程度の住宅ローンを組むことは可能だ。しかし、首都圏でこの金額ではなかなか気に入った物件を買えないだろう。その際は、頭金の準備や将来の繰り上げ返済を計画することで、リスクを抑えていくことが必要だ。

マイホームの購入は人生を豊かにするかもしれないが、住宅ローンが支払えなくなり手放すようでは本末転倒である。年収ダウンなどのリスクを考慮した無理のない住宅ローンを組むべきなのだ。

文・山本智也(宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター)/MONEY TIMES

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