サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)による土地活用が資産家から注目されています。高齢者住宅協会によれば、2011年に創設されたサ高住は、2019年4月時点で約24万4,444戸(7,344棟)です。常に前年数を上回り続けています。その魅力は、超高齢社会で広がる市場と、郊外や地方でも経営しやすいことですが、一方で取り返しのつかないリスクもあります。注意ポイントをまとめました。
サ高住とは?サ高住が増え続ける背景とは?
介護施設にはサ高住と有料老人ホームがあります。この2つの違いは、介護サービスの違い、生活の自由度、契約形態の違いがあります。有料老人ホームには介護付有料老人ホームと住宅型有料老人ホーム、健康型有料老人ホームにわかれます。介護付有料老人ホームは介護保険制度上の「特定施設入居者生活介護」の指定を都道府県から受けている高齢者施設です。住宅型有料老人ホームはホームのスタッフが介護サービスを提供することはなく、入居者が要介護となった場合は訪問介護などの在宅サービス事業所と契約し、そこのスタッフによる介護サービスを受けながらホームで生活をします。健康型有料老人ホームはお元気な状態をなるべく維持することを目的とした設備が充実しているのが特徴です。
サ高住とは、サービス付き高齢者向け住宅の略で、安否確認と生活相談がセットになったバリアフリー構造の住宅のことです。介護サービス提供のための施設と勘違いされることもありますが、実際には「住居提供」が主な施設が目立ちます。例えば、国土交通省のレポートによると、サ高住が提供しているサービスでは「状況把握・生活相談(100%)」「食事の提供(95.9%)」などの簡易なサービスが高い割合となっており、入浴や家事サポートなどを実施する施設は半分程度にとどまります
こういったサ高住の機能を踏まえると、介護が主の「有料老人ホーム」や「特別養護老人ホーム」とは根本が異なるといえるでしょう。最近は、「アクティブシニア」の言葉に象徴されるように、年齢を重ねても趣味や社会活動に積極的な方々が増えています。この元気なシニアが増加している流れを追うように、サ高住の棟数とその事業者に土地・建物を提供するオーナーの人数ものびています。
不動産経営の目線でみるとサ高住には問題点も
サ高住は、これから本格化する超高齢社会を支える重要な仕組みです。その一方で、不動産経営の視点からみると問題点もあります。具体的には、サ高住の事業者撤退(経営破綻)リスクです。これを理解しやすくするため、サ高住をスタートするまでの流れを確認してみましょう。
1.遊休地などにサ高住向けの建物を建てる
2.建設会社(もしくは不動産会社)が運営事業者を紹介してくれる
※または、建設会社のサブリース(一括借り上げ)
3.土地・建物のオーナーは賃料収入を得られる
一般的に、サ高住の建設費用を負担するのは土地オーナーです。その見返りとして、オーナーには賃料が入ってきます。流れをみると分かる通り、シニア向け住宅という点を除けば、一般のアパートやマンションなどの賃貸経営とほぼ変わらない仕組みです。そのため、もし高齢者のニーズがない立地に建物を建てれば、将来的に事業者は撤退。建物費用の負担だけが残る結果になります。
たとえ、一括借り上げのサブリース契約だとしても、定期的な契約見直しがあるため、賃料値下がりがあれば、オーナーの収入も減る可能性が高いといえるでしょう。そうなれば、資産が目減りしたり、空き物件を相続した家族に迷惑をかけてしまったりする可能性があります。
サ高住は過当競争になるリスクがある
もちろん、サ高住の土地活用に参入する前には、周辺の高齢者数や人口動態、競合物件の状況といった基本的なマーケティングはされるでしょう。しかし、この結果を全面的に信頼して安易にスタートするのはリスクが伴います。サ高住は、総量規制のある有料老人ホームなどとは異なり、(原則)要件さえ満たせば自由につくることが可能です。参入障壁が低いため、競合施設が増え、過当競争になる可能性があります。
サ高住には補助金や税制優遇の魅力も。経営計画はしっかり立てよう
サ高住による土地活用をしたい理由として、補助金や税制優遇などを挙げる方もいます。例えば、次のような優遇措置があります。
・建設費の10分の1までを補助
・固定資産税を5年間、税額を2分の1~6分の5の範囲内で市町村が条例で定める割合を軽減
・家屋の不動産取得税を1,200万円/戸まで控除 など
この他にもいくつかの優遇策がありますが、これらのすべてを活用できたとしても、莫大な建設費用は相殺できません。限定された優遇措置があるという理由で、莫大な費用負担をするのは本末転倒です。一般の賃貸経営同様、経営計画を甘く考えてしまうと、資産を目減りさせ、将来、家族に迷惑をかける可能性があります。
サ高住は、市場をシビアに考えて、それでもやる価値がある場合に選択できる土地活用法といえるでしょう。(提供:Wealth Lounge)
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