会社員は、税金や年金保険料などが、毎月の給与から天引きされています。そのため、一般的には、会社勤めの人が住民税を滞納することはありません。しかし、退職して自営業になったときや、一時的に無職の時期は、うっかり滞納してしまう可能性があるのです。

このとき、どのようなペナルティーがあるのでしょうか。また、金銭的な事情などで支払えない場合には、どうしたらいいのでしょうか。詳しくご説明します。

住民税の仕組み

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(画像=Andrii Yalanskyi/Shutterstock.com)

住民税の仕組みについて、福岡市を例にとって、ご説明します。

住民税の計算の基となるのは、前年の1月1日から12月31日までの給与額です。この1年間の給与額から「給与所得控除額」を引き、「給与所得」を算出します。具体的には、次のような金額になります。

例えば「65万999円以下」は0円、「65万1,000円以上、161万8,999円以下」は「給与額-65万円」、「161万9,000円以上、161万9,999円以下」は96万9,000円などです。

算定された「給与所得」に8%をかけた金額が市民税、同じく2%をかけた金額が県民税となります。つまり、給与所得の10%が住民税ということです。

住民税の納付時期は、会社が6月から翌年5月までの毎月の給与から住民税を天引きして、翌月10日までに会社員の住民税をまとめて自治体に納めます。

ただし、出張旅費、通勤手当(月額最高10万円まで)、雇用保険失業給付などは、非課税所得となります。給与所得を算出する際には、これらを除外したうえで、住民税を計算します。

住民税を滞納するとどうなる?

中学校の社会の時間に、「国民の三大義務」という言葉を習ったはずです。

教育を受けさせる義務、勤労の義務、納税の義務の三つです。この中の納税の義務は、国や地方自治体を運営していくうえで基礎となる税金を納めることを義務としているものです。

もし税金による収入がなかったら、国や地方自治体のサービスが立ち行かないだけでなく、国民や住民の生活を脅かすことになります。そのため、滞納者に対しては、国税庁や都道府県は厳しい対応を取っています。

時々テレビの特集などで、税金を滞納した人に対して、国税査察官(いわゆるマルサ)が、差し押さえするなどの場面を見た人もいるのではないでしょうか。

もちろん、住民税の滞納者に対しても同様です。住民税を期限までに納税しないと、文書や電話などで確認のための連絡が来ます。この時点では、早急に納める旨のお願いをする程度です。

しかし、その後自治体に相談や連絡することなく、滞納した場合には、納税を強く促す「督促状」が届きます。それでも納税されない場合は、自治体の徴収職員が、滞納者の勤務先、金融機関、取引先などに対して、財産調査を行います。

そして、給与、預貯金、自動車、不動産などで、差し押さえ可能な財産があれば、差し押さえ手続きに着手することになります。自宅や勤務先に直接赴いて、現金、動産(家財道具、骨とう品)、不動産などを差し押さえることもあります。

差し押さえた財産のうち、現金以外のものは、公売にかけて現金に換金し、滞納した税金に充てられます。

住民税を支払えないと思ったら?

各自治体では、納税の猶予制度があります。これは、特別な事情があれば、住民税の納期の延長(延納)を認めるという制度です。

特別な事情について、福岡市を例にとって説明します。福岡市では、次の事柄に当てはまれば、納期を遅らせたり、分割して納付したりすることを認めています。

・災害を受けたり、盗難の被害にあったりしたとき
・本人や家族が病気になったり、負傷したりしたとき
・廃業や休業したとき
・一度に納付することで、生活の維持や事業の継続が困難になるおそれがあるとき

以上のような事情がある場合、申請を行って了承されれば、納期の延長や分割での納付が可能です。ただし、原則的に猶予期間は1年以内とされています。

最も避けたいのは、案内の電話や通知、あるいは督促状が来ても、無視する行為。住民税を請求する自治体から見れば、悪質な滞納者です。

住民税を期限内に支払えないと思ったら、まず担当窓口、担当者に連絡を入れて、事情を説明しましょう。このような行動を取ることによって「今は支払いが難しいけれど、支払う意思はあります」というアピールになります。

担当者も一人の人間ですから、目の前で誠意を見せている人に対して、「期限を絶対に守ってください。そうしないと、資産を差し押さえます」という対応はしないはずです。とにかく、自分の事情を話して、遅れてでもきちんと払う旨の説明は必要です。

会社に勤めている限り、住民税の滞納は想定外の事態ですが、転職のために会社を辞めた場合などでは、十分あり得るでしょう。期限内に全額を納めることが難しいと思ったら、できるだけ早く、担当者に相談することが大切です。

文・井上通夫(行政書士・行政書士井上法務事務所代表)/fuelle

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