★原油安、米中協議メド立たず、英国の無秩序EU離脱の3重苦。 現地12日の米国株市場は続落です。主要株価指数の下落率は0.2-3%というものばかりですから、小幅にとどまっています。 今週はもともと月間では、一番下がりやすい確率の一週間ですから、6月4日以来の上昇サイクルが、一巡してもおかしくないところだったわけです。ただその割には今のところ大した下落にはなっておらず、せいぜい押し目程度のものにとどまっています。 要因は、いくつか重なっています。
(原油安) 米国の原油在庫(週間発表)が思いのほか積み上がっていたことから、WTI先物が4%の大幅下落となり、51ドル。これが資源株を押し下げました(ダウ工業株の下げの主因)。
(米中協議不確定) また、依然として米中協議は次の協議日程が決まりません。昨日は香港で二度目の「逃亡犯条例」改正案を巡る大規模デモでした。香港政府は群衆に包囲されて審議入りできず、予定であった20日までの採決が危ぶまれており、この問題が中国をして対米強硬姿勢をとらざるをえない状況にしています。 トランプ大統領は、米中協議にとくに期限を設けないとしています。
(英国首相選挙戦開始) くわえて、英国での首相選挙が始まりました。合意無き無秩序なEU離脱に進むか、またこの問題が再燃化しています。 いずれも決定的な悪材料にはなっていません。原油安はむしろ景気減速であるなら、景気には下支えになる効果すらあります。 以上のようなネガティブな背景が重なっている割には、米国株の下げはきわめて限定的だったということになるでしょう。欧州市場でもドイツDAX、英国FT100、いずれも0.3-4%の下落にとどまっており、すべての移動平均線を上回っています。
★米国主要指標の定点観測。 前日、50日線を下回ったナスダックに続き、昨晩は資源株に足を取られてダウ工業株が、ごくわずかですが50日線割れ。最大のリスク指標であるジャンクボンドもごく微弱ですが50日線割れです。 総合株価指数のS&P500はぎりぎり踏みとどまっています。 反対に、景気先行指標のダウ輸送株指数とリスク度の高いラッセル2000小型株指数は逆行高だったのでした。これはある意味驚異的な動きです。ただなかなか最初のハードルである25日線を抜けません。これで3日トライ中です。 マネー循環を示す米10年国債利回りは再び低下、2.1270%となり、せっかく前日に6月3日以来の底這い状態から抜け出したと思われたのですが、また底辺のレンジに舞い戻ってしまいました。 幸い、VIX(変動、恐怖)指数は6月5日以来、ずっと上は200日・25日線の密集地帯、下は50日線の狭いレンジに挟まれたまま、ちょうどその中間値でまったくの横這い、落ち着いています。
★全体的に物色は、散漫。 どうしても柱というものがまだはっきりしてきません。 昨日の相場展開をざっと見渡しても、かなりばらけた個々の材料に左右されています。 決算を受けて日東製網3524や丹青社9743が大幅高。個人的には日東製網は面白いかと。 このほか、東京都が急発進防止装置の費用補助を表明したことを手掛かりに、カー用品関連の物色が拡散。オートウェーブ2666はストップ高となり、バッファロー3352は買い殺到でストップ高比例配分。ほぼこの動きは投機と断定してもいいでしょうから、完全に割り切り対応でしか乗れるものではありません。 反対に下げたほうの材料ということでは、スプリントとTモバイルの合併が暗礁に乗り上げてきていることから(アメリカで)、ソフトバンクGが指数の下げに寄与してしまいました。 またアメリカで世界最大のゲーム見本市E3が開催されていると言う状況でも、新作ゲームの発売時期が遅れるという任天堂が3%超の下落となっていました。そもそもクラウドゲームが今回の見本市の焦点だと言われていましたから、いまだに据え置き型に大きく依存したスタンスの任天堂は、アゲンストです。 ゲーム系の銘柄は、コロプラ3668をはじめとして、このE3という恰好の買い材料・口実があるにもかわらず、全般に大きく売られるものが多かったようです。 業種別動向では、昨日上昇した中に、精密、鉄鋼、非鉄といったシクリカル(景気敏感)系が浮上してきていたことから、今週始まった相場の軟調さ、小天井というものは、株式相場そのものの調整というより、物色の交代、銘柄の入れ替えという性格も、もしかしたらあるのかもしれません。 引き続き物色の変化に注目していきましょう。(提供:Investing.comより)
著者:増田経済研究所 松川行雄