遠藤 功(ローランド・ベルガー日本法人会長)×入山章栄(早稲田大学大学院教授)

平成の敗北,遠藤功,入山章栄
(画像=THE21オンライン)

「現場力」×「世界最先端の経営学」

不景気にあえぎ続けた平成が終わり、新たな時代が幕を開ける。令和以降、日本企業はグローバル競争を勝ち抜き、再び世界的地位を取り戻せるのか。グローバル化するビジネスシーンを、日本のビジネスパーソンは生き残ることができるのか。現場を知り尽くしたコンサルタントである遠藤功氏と、世界最先端の経営学を研究する入山章栄氏が、日本企業、そして日本人の勝算について徹底的に語り尽くす!

「敗北の時代」を経てリベンジマッチが始まる

平成の30年間は日本企業にとってどんな時代だったのか。その総括から対談は始まった。

遠藤 「平成の30年間は、日本企業にとって敗北の時代だった。それを認めて日本はもう一度勝機をつかまなければならない」。経済同友会代表幹事の小林喜光さんの言葉に、私も同感です。入山さんはいかがですか?

入山 残念ながら、私も同意見です。日本企業にとって敗北の時代だったと捉えています。平成元年と現在の「世界企業の時価総額ランキング」を見れば、それが一目瞭然です。

平成元年は上位30社のうち24~25社は日本企業でしたが、平成31年は上位30位に1社もありません。最上位のトヨタ自動車でも30位以下。惨敗です。

遠藤 その原因とは?

入山 グローバルイノベーションで負けたことだと思います。今はIT技術のおかげで、世界共通言語の英語でサービスを立ち上げれば、創業直後にグローバル展開できる。アメリカや中国のベンチャー企業は、最初から50億人のマーケットを相手に、一気にプラットフォームを広げる戦略を採用してきました。日本企業が得意とする競争の型とは違います。

経営学では、競争の型は大きく分けて3つあるとされます。

スケールメリットを活かしてマーケットの独占を図る「IO型」、複数の企業が切磋琢磨しながら差別化して勝ち残る「チェンバレン型」、イノベーションを起こして勝ち抜く「シュンペーター型」です。現場のオペレーションに強い日本企業が強さを発揮するのは「チェンバレン型」。

それに対して、今のグローバル競争の主流は、「シュンペーター型」で新しいことをどんどん始めて、一気に独占を図る「IO型」で勝つモデルです。フェイスブックやウーバー、エアビーアンドビーは好例です。だから、一気に時価総額が伸びたわけですが、日本ではこういったベンチャー企業が出てきませんでした。

遠藤 グローバルなプラットフォームを作る競争が続くと、日本企業に勝ち目はない。

とはいえ、私は日本企業がすべて負けているとは思っていません。平成の時代でも、トヨタ自動車、ユニクロ、オリエンタルランドなどは上手くやってきた。その共通点は、複数の企業の力を結集した総合力です。

例えば、トヨタは部品のサプライヤーや鉄鋼メーカー、ユニクロも東レなどの協力によって、世界に通用する付加価値を生み出してきました。このように企業の力を集結すれば、日本企業も出る幕があると思います。

入山 私もそう思います。それに、日本は1回戦では負けたかもしれませんが、まもなく2回戦が始まります。それは何かといったら、「モノ」の戦いです。

今後、IoTが進み、モノを通じて利用者情報を収集・活用する時代になると、それに対応する良質なハードが求められる。つまり、『モノづくりの復権』が期待できるのです。

良質なモノづくりができる国といえば、ドイツと日本です。日本のモノづくり企業にとっては、最後にして最大のチャンスが巡ってきます。この戦いに負けたら終わりですが、勝てば日本は巻き返せるはずです。