資産の大小にかかわらず、投資において最も重要なのは“適切に資産を増やしていくこと”にほかなりません。その点をふまえ、投資家は自らの資金を投じていくわけですが、その過程ではさまざまな理論や法則が生まれてきました。投資をする限り誰しも「確実に資金を増やしたい」と考えているものです。しかし実際には、確実に資金を増やす方法など存在しません。だからこそ、理論や法則が追求されてきたのです。
もっともその中には、怪しげなものも含まれています。とくに「絶対増える」や「間違いなく儲かる」などの言葉を使って宣伝されているものの多くは“眉唾物”であるといえるでしょう。投資において100%は存在しない以上、市場ルールに則ったまま、損をしない(リスクをとらない)投資を行うことはできません。投資に関する理論や法則について学ぶときは、そうした前提を忘れないことが求められます。
投資の本質は「リスクとリターン」
そもそも投資の本質は、リスクとリターンのバランスにあります。この場合のリスクとは、将来に対する不確実性のことです。またリターンとは、その不確実性に対するプレミアムを意味しています。つまり、「その投資にどれほどの将来的な不確実性があるのか」「その不確実性から得られる見返りはどのくらいあるのか」を想定し、資金を投じるのが投資なのです。これは、あらゆる投資の原則といえます。
もちろん自らの資金を投じる以上、「より確実なものに投資したい」と考えるのは当然でしょう。ただ、情報量が均衡しているシーンにおいて、リスクとリターンのバランスが大きく崩れることはありません。つまり他の投資家と同じ情報の量・質で投資するのなら、リスクが少なくなればリターンも減少し、リスクが増えればリターンも増えることとなるのです。その原則から目を背けることは許されません。
現代ポートフォリオ理論における3つの特徴
このような投資の原則をふまえると、少ないリスクで大きなリターンを得られる投資が存在しないのは明らかです。しかし、そうした事実があるにもかかわらず、リターンを変えずにリスクを減らす方法を研究し続けたのが、1990年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者ハリー・マーコウィッツでした。彼の提唱した「現代ポートフォリオ理論(MPT)」はまさに、投資のリスクだけを減らす方法を学術的に証明しています。その特徴は次のとおりです。
分散効果
投資の格言として有名なものに「すべてのタマゴをひとつのカゴに盛るな」というものがあります。この意味は、すべてのタマゴ(資産)を同じカゴ(投資先)に盛ってしまうと、落として(投資に失敗して)しまった場合にすべてのタマゴが失われてしまうということです。そうではなくマーコウィッツは、あらかじめ複数の資産に資金を分散しておくことで、より確実にリターンを得ることが可能になることを証明しました。これが「分散効果」です。
相乗効果
ただ、いくら投資先を分散していたとしても、それぞれの資産が似たような値動きをしていればリスクを低減することにはなりません。たとえば円高になったときに価値が下落しやすい輸出関連株を複数保有しているだけでは、それぞれの損失をカバーできず、リスクは減りません。そうではなく輸出関連株と輸入関連株に分散投資するなど、何らかの事象が発生した場合にカバーできる銘柄を保有しておくことで、リターンを変えずにリスクを減らすことができるのです。これを「相乗効果」と言います。
効率的フロンティア
分散効果と相乗効果を前提に、市場から最適な組み合わせの投資先を選定していけば、最大のリターンと最小のリスクを実現する組み合わせを見つけられます。そして市場の全銘柄からなる最適なポートフォリオを模索し、リスクとリターンの集合点をグラフ化したときに発生するのが、弓なりの曲線「効率的フロンティア」です。
ここで重要なのは、その曲線自体ではありません。効率的フロンティアを超える投資は存在せず、また効率的フロンティアを下回る投資は合理的ではない、という2つの事実です。つまり最適なポートフォリオは効率的フロンティア上に存在していることになります。
最適解としてのマーケット・ポートフォリオ(MP)
マーコウィッツは、効率的フロンティア上にある点とリスクがない資産の接点を「マーケット・ポートフォリオ(MP)」と名付け、これを最も低リスクで高リターンな株式投資だと結論づけました。それに近いものとしては、アメリカのS&P500や日本のTOPIXなどが挙げられます。もちろん理論としての限界はあるものの、インデックス投資がひとつの最適解とされている背景には、現代ポートフォリオ理論の存在があるということです。資産形成の王道として、ぜひ押さえておきましょう。(提供:YANUSY)
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