前週末発表された米雇用統計については、6月非農業部門雇用者数が市場予想16.0万人増に対して、結果は22.4万人増になったことから、一時ドル円は108.634円まで上値を拡大しました。ただ、平均時給(前月比/前年比)については+0.3%/+3.2%予想が+0.2%/+3.1%、失業率も3.6%予想が3.7%になったこともあり、ドル円で109円を目指すような動きにはなりませんでした。一部ではFRBの7月の利下げが後退したのではないかとの見方もあるようですが、現在の課題は労働市場でなく景況感であること、トランプ政権の執拗なまでの利下げ要求もあり、7月での利下げが現段階でのコンセンサスであると考えられます。

ドイツでは、独・5月製造業受注が市場予想-0.2%から-2.2%に大幅に悪化し、ドイツ経済省は「製造業新規受注の低迷は今後数ヵ月続く可能性が高い」との見方を示しています。ビルロワドガロー仏中銀総裁が、「必要ならば中銀は断固として行動する」と発言しているように、ECBの早期利下げ観測は急速に織り込まれてきていると考えられます。引き続き、7月にECBがフォワードガイダンスを変更、9月に超過準備の階層化を導入せずに10bpの利下げを行うとの見方に変更はありません。

本日のオープニングでは、トルコリラの下落が目立ちました。要因としては、利下げをなかなか断行しないチェティンカヤ・トルコ中銀総裁をエルドアン大統領が解任したことが挙げられます。後任にはウイサル副総裁が昇格したものの、市場では、中銀の独立性が危ぶまれるとの懸念からリラ売りが先行しています。これで、トルコ中銀についても今月の利下げの可能性が一気に高まったと考えられます。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

今週の注目材料としては、10日、11日に行われるパウエルFRB議長の半期議会証言でしょうか。特に、10日下院での議会証言に注目が集まっており、ここで市場は7月の利下げを本格的に織り込みにいくのか、それとも、堅調な労働市場を背景に9月以降に利下げを先送りするのかに注目が集まります。一見堅調な労働市場に見えるものの、一部では不完全雇用率が上がっていること、さらには労働力人口が減少していることで、非農業部門雇用者では測りきれない数字が嫌気されており、利下げを先送りするほどの内容ではないとの指摘もあります。ただ、先週末の雇用統計の内容を鑑み、50bpの利下げというシナリオはほぼなくなったと考えていいのかもしれません。

リスクイベントとしては、ウランの濃縮度について2015年の核合意における上限3.67%を超えて5%のウランを製造する方針を発表した、イラン情勢が意識されそうです。米国との軍事衝突はもちろんですが、EUを初め、世界各国で非難の声が挙がっており、今後のヘッドライン次第ではリスク回避の動きが強まる可能性があります。

もう一つのリスクイベントとしては、米中通商協議です。G20サミットでは、一旦今後の協議継続で合意したものの、中国側が交渉合意には米国が関税措置を撤回することが不可欠との立場を崩していないとの報道が流れています。既に、ムニューシン米財務長官・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表と劉鶴中国副首相が電話での協議を行っていると報じられていることから、再び問題の長期化が意識されれば、ドル円の上値は徐々に重くなってくるかもしれません。

持ち値付近まで戻るも、109円レジスタンスは健在

ドル円については、強い雇用統計の動きもあり、持ち値付近の108.50円付近に戻ってきています。ただ、109円レジスタンスは健在であり、ショートポジションについては、引き続きキープで考えます。108.50円でのドル円ショート、損切りは109.00円上抜け、利食いについては、107.10円での設定です。

海外時間からの流れ

メイ英首相に代わる次の保守党党首選で、ハント外相と決選投票を争うジョンソン前外相は、ジャビド内相から支持を獲得したと報じられています。英紙タイムズで6日公表されたユーガブの調査では、保守党員の74%がジョンソン氏を支持、ハント氏は26%だったこともあり、ジョンソン氏勝利が早々に決する可能性があります。カーニー英中銀総裁が、「英国の合意なきEU離脱は英経済にとって大きなリスクである、こうした大きなイベントには『移行期間を設けることが望ましい』」と発言し、EU離脱推進派から非難されていますが、それでもジョンソン氏が圧勝しそうなことを鑑みると、国民感情としては、早く問題を終結させたいということなのかもしれません。

今日の予定

本日は、独・5月鉱工業生産、独・5月貿易収支/経常収支などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。