不動産投資のリスクを、実際に現場で起きている問題から学ぶ!
不動産投資のトラブルは、ミクロで見るとさまざまな事情や状況で多岐にわたりますが、法的な結論はシンプルで、いくつかのポイントを抑えておけば、トラブル回避は充分に可能です。そこで、私たち弁護士が実際に相談を受けた案件から、よくあるトラブルをご紹介。なぜ問題が生じたのか、そしてどのように解決したのかをわかりやすく解説します。
雨漏りが発生しました!
岐阜県在住 木村さん(59歳、女性)からのご相談
父の遺産を有効活用しようと思い、2年前に個人オーナーが所有していた賃貸用の中古アパートを購入しました。ところが、買ってから半年が過ぎたあたりで雨漏りが発生しているとの連絡が入りました。ただ、借主さんが良い人で、大した雨漏りでもないし、忙しくて工事に立ち会う時間もなく、とりあえず、修理しなくてもいいと言ってくれたので、そのままにすることにしました。
それから1年と半年が過ぎた頃、大きな台風の影響で雨漏りがひどくなり、借主からとてもこのままでは住めないので引越すと言われてしまいました。しかも、雨漏りを修理するためには、調査費用も含め、たくさんのお金がかかるようです。
そこで、こんなことになるのであれば、このアパートを買わなかったので、契約を解除することはできないでしょうか。
よくあるトラブル(4)「瑕疵担保責任」
これで解決!
ご相談は、いわゆる瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)の問題です。瑕疵担保責任とは、買った物件について、買った時点では明らかになっていない、通常の注意を払っても発見出来ない欠陥(瑕疵、たとえば雨漏りや家の傾きなど)があった場合、売主が買主に対して負う契約解除や損害賠償などの責任のことです。ただ、売主に瑕疵担保責任を追及するためには時間制限があり、原則としては瑕疵の発見から1年以内、宅建業者から買った場合には2年以内、新築住宅の場合には基本構造部分に限り10年以内にしなければなりません。
ご相談の件は、雨漏りが買った当時に通常の注意を払っても発見できない欠陥に該当するかという問題もありますが、今回の件は瑕疵であり、個人オーナーから買ったので、発見から1年以内に請求しなければならないところ、1年以上が経過しているので、契約の解除も損害賠償請求もすることができません。
瑕疵担保の問題は、そもそも隠れた瑕疵なので、発見するのに時間もかかりますし、発見しても改善が難しい場合も多く、改善策を協議しているだけで1年や2年が過ぎてしまうときもあります。そのため、瑕疵担保責任で注意しなければならないことは、時間制限に気をつけて、とにかく早めに売主に瑕疵があったこと、契約解除や損害賠償を請求することを証拠に残る形式(たとえば内容証明など)で伝えることです。
もっとも、瑕疵のない物件を買うことが第一ですので、しっかりと物件の調査をして、物件の状態を十分に把握している不動産業者と付き合うことが大事です。また、万が一、瑕疵のある物件を買ってしまった場合には、時間制限があることに注意し、早めに弁護士などの専門家に相談することが大切です。(提供:ヴェリタス・インベストメント)
弁護士 種⽥ 和敏(たねだ かずとし) 弁護士(第二東京弁護士会)。池袋の城北法律事務所に所属。1982年に滋賀県大津市に生まれ、神奈川県藤沢市で育つ。2005年に東京大学法学部を卒業後、東京都港区役所に5年間勤務、成蹊大学法科大学院(夜間コース)を修了、2011年に弁護士登録。借地借家の問題を中心に不動産関係の法律問題に取り組む。著書に『だけじゃない憲法』(猿江商會)。