不動産投資のリスクを、実際に現場で起きている問題から学ぶ!
不動産投資のトラブルは、ミクロで見るとさまざまな事情や状況で多岐にわたりますが、法的な結論はシンプルで、いくつかのポイントを抑えておけば、トラブル回避は充分に可能です。そこで、私たち弁護士が実際に相談を受けた案件から、よくあるトラブルをご紹介。なぜ問題が生じたのか、そしてどのように解決したのかをわかりやすく解説します。
家賃を払わない借主を追い出したい!
東京都在住 佐々木さん(53歳、男性)からのご相談
都内で賃貸物件を所有していますが、借主が家賃を滞納してもう3か月になります。管理会社から借主に連絡をすると、借主は「すぐ払う。」とは言うのですが、実際に約束の支払はなく、ウソの繰り返しです。
家賃が入らないと困るのでどうにかしたいですし、今の借主はウソばかりついて信用ができないのでもう出て行ってもらうしかないと考えています。
裁判は時間もお金もかかると思うので、私の気持ちとしては家賃を払わないのであれば部屋を使う資格がないでしょうから、勝手に鍵を変えて借主が部屋を使えないようにしてしまいたいです。
家賃を滞納する借主を追い出すにはどうすればよいでしょうか?
また、家賃を滞納された場合に、どうすれば支払ってもらえるのでしょうか?
よくあるトラブル(5)「家賃不払い」
これで解決!
オーナーにとって、家賃滞納は最も避けたい問題かもしれません。ただ、どんなに借主を慎重に選んでも、長い契約期間の中で借主の生活環境が変化し、借主が家賃を支払えなくなる可能性はあります。そこで、家賃滞納が発生したときにどう対応するかを知っておくことは重要です。
まず家賃滞納があった場合に、相談者のようにもう出て行ってほしいと思うオーナーは多いでしょう。おおよその目安としては、3か月の家賃滞納があれば契約を解除しても裁判所から違法だと後に否定されることはないと考えていいと思います。逆に言うと、家賃の支払が数日遅れただけでは解除はできないので慎重な対応が必要です。
ただ、契約を解除したからといって借主がすぐに出て行ってくれるとはかぎりません。このような場合は裁判で建物の明け渡しを求めるしかありません。家賃を払わないのだからといって鍵を勝手に変えてしまうのは違法です。借主が任意に出て行ってくれない場合、裁判をするしかありません。ただ、裁判には時間もかかりますし費用もかかります。迅速に最小限の経済的ダメージを目指すなら、家賃滞納が始まったタイミングで早めに弁護士に相談することをお勧めします。もちろん、やはり裁判にならない方がいいので、借主とオーナーの間にしっかりとした管理会社を入れ、できるだけ家賃滞納が起こらないようにすることも重要だと思います。
また、滞納家賃の回収についても、家賃を払えなくなった借主本人からは現実的には困難です。だから、支払能力のある保証人をつけるか、家賃保証会社と契約をすることをお勧めします。支払能力のある保証人とは、家賃滞納した際に最終的には差し押さえができる人、具体的には堅実な勤め人や不動産を所有している人ということになります。これらの選定や保証会社との契約は素人大家さんには難しい問題ですので、管理会社にお任せするのも良いと思います。
いずれにしても、不動産経営に家賃滞納のリスクはつきものですが、予防としては、良い管理会社を選ぶこと、事後的な問題処理には、出来るだけ早く弁護士に相談することが大切です。(提供:ヴェリタス・インベストメント)
弁護士 種⽥ 和敏(たねだ かずとし) 弁護士(第二東京弁護士会)。池袋の城北法律事務所に所属。1982年に滋賀県大津市に生まれ、神奈川県藤沢市で育つ。2005年に東京大学法学部を卒業後、東京都港区役所に5年間勤務、成蹊大学法科大学院(夜間コース)を修了、2011年に弁護士登録。借地借家の問題を中心に不動産関係の法律問題に取り組む。著書に『だけじゃない憲法』(猿江商會)。