米フェイスブックの仮想通貨「リブラ(Libra)」に対する各国当局からの警戒感が高まる。
16日は米上院銀行委員会、翌17日にはG7財務省・中央銀行総裁会議で「リブラ」の脅威について議論が交わされた。いずれの会議でも個人情報の不正利用やデータ流出が相次いだフェイスブックの管理体制が問題視されたうえで、「マネーロンダリング、個人情報保護、利用者の資産保全に対する懸念が解消されない」との認識で一致、「重大な問題があり、早急な対策を要する」と総括された。
こうした懸念や批判に対してフェイスブックは「リブラは、VISAやマスターカード、PayPal、eBay、Uberなど28社が加盟する “リブラ協会” が運営する。フェイスブックは支配的な立場にない」、「拠点はスイスに置き、スイス金融当局の監督下に入る」、「サービスの開始に際しては各国の規制に従う」、「国家や通貨当局とは競合しない」など、ガバナンスの健全性と既存の金融システムとは対立しないことを強調する。
とは言え、「リブラ」が法定通貨と連動していること、そして既に世界27億人もの潜在ユーザーを抱えていることのインパクトは大きい。IMFも既存の法定通貨圏とは異なる “超国家的なデジタル通貨圏” が生まれる可能性について警告する。将来、「リブラ」口座が決裁や送金において一定のシェアを占めてくれば自ずとEC上のモノの価値はダイレクトに「リブラ」で表現されることとなるだろう。また、リブラ協会本部は「リブラ」と交換された法定通貨を直接運用することも可能だ。結果、既存の銀行が持つ信用創造機能は低下、中央銀行の金融政策機能の適用範囲も狭まる。
米FRBパウエル議長は「リブラには最高水準の規制を」と呼びかける。テロ資金への悪用も指摘される。サイバーセキュリティにおける課題も大きい。テクノロジーの進歩とビジネスモデルの革新が一定の社会的リスクを伴うことに異論はない。ただ、旧来のシステムや現在の体制への盲信、随順はいかがであろうか。「リブラ」のリスクや規制の在り方を突き詰める必要はあろう。しかし、と同時に現在の延長線上にない通貨の未来についてもっともっと深く考えてみたい。現状にしてもたいして上手くやれているわけではないのだから。
今週の“ひらめき”視点 7.14 – 7.18
代表取締役社長 水越 孝