地方で育った多くの人は、進学や就職をきっかけに都会で生活するようになり、そこで納税をしているだろう。そのため都会の自治体は多くの税収を得られるが、地方の自治体の税収は減っていくことになる。ふるさと納税は、「都会で納税しているけれど、少しでもふるさとのために何かをしたい」という声をきっかけに2008年から始まった制度だ。
ふるさと納税サイトでは利用率No.1(※)でもあり、20万点以上のお礼の品を掲載しているふるさとチョイスを運営するトラストバンクの須永珠代社長にインタビュー。自治体とふるさと納税をしたい人との懸け橋となってきたパイオニア的存在である須永さんに、成長を支えた事業の理念を伺った。(取材、構成・秋乃麻桔/写真・森口新太郎)
※ふるさとチョイス調べ。調査委託先:マクロミル、対象者:直近1年以内に「ふるさと納税」のポータルサイトを利用したことがある全国の20〜60代の男女1035人、調査期間:2018年10月11日〜12日
起業したことをきっかけに、ふるさとに目を向けるようになった
——ふるさと納税の制度は、自治体間での競争の激化などを背景に、昨年から総務省が全国の自治体に対し、返礼品額の比率を寄付額の3割までとするなどの規制を2019年度の税法改正に盛り込む事態に発展しました。その点、御社は法改正の前から「地元のためになるお金」ということに注力されてきました。その思いをお聞かせください。
正直なところ、ふるさと納税が今ほどブームになる以前からかかわってきた私からすると法改正されて「やっと(ふるさと納税制度が)元に戻ったな」という印象です。
地域に寄与するためにふるさと納税という制度は生まれました。今回の法改正で「返礼品の割合は寄付額に対して3割まで」という規制ができ、各自治体のふるさと納税活動における費用を含め、全体で5割以下の募集経費とすることを求められるようになりました。トラストバンクでは7年前、当時からふるさと納税に力を入れていた自治体職員と共に、「やっぱり半分はちゃんと自治体が使うお金として残さないといけないよね」っていう話をしていたんですよね。
本来は総務省が規制しなくても、その状態にあることがおそらく望ましかったのですが、そうせざるを得ない状況になった、ということかと思います。
――「地域に寄与するために」という目的からブレないよう、サイトを作っていた、と。そのこだわりはどこから来ているのですか?