政府が観光立国を掲げ、訪日外国人を増やすための取り組みをしていることもあり、訪日外国人観光客は年々増加しています。しかし、手放しでは喜べない現状もあります。そのひとつが、1人当たりの消費額が伸び悩んでいることです。
この消費額をさらに拡大させるために注目されているのが、18時から翌朝6時までの「ナイトタイムエコノミー」という考え方です。夜の街を楽しんでもらい、消費をしてもらおうという考え方です。消費拡大に向けて期待されるナイトタイムエコノミー。その現状を解説します。
日本の観光に足りないのは、「夜の満足度?」
現在、日本の観光の課題としてあげられるのが、「訪日外国人一人あたりの消費額」が頭うちになっていることです。国土交通省の「ナイトタイムエコノミー 推進に向けたナレッジ集」によると、現状の訪日外国人の消費金額は、1人当たり15万円、総額4.5兆円です。政府は、2020年までに訪日外国人の消費金額を8兆円にするという目標を定めており、ナイトタイムエコノミーの経済効果が注目されています。
ナイトタイムエコノミーが注目されている理由の一つに、日本の観光は、ナイトライフの満足度が低いことが挙げられます。訪日外国人約1万人に行ったアンケートによると、他国に比べ、日本でナイトツアーやナイトショーを体験したという人は少なく、また、コンテンツ充実度の面でも、諸外国に比べ劣後しているのです(観光庁 2018年度最先端観光コンテンツ Webアンケートから得られたマーケティング調査結果)。
逆に言えば、この部分を拡充すれば訪日外国人の消費は伸びると予想されるため、ポテンシャルが高いともいえるでしょう。
海外では「ナイトタイムエコノミー」のための取り組みが定着
では、海外では、どういった取り組みをしているのでしょうか。代表的なものを紹介します。
ナイトタイムエコノミーで有名な都市といえば、ロンドンとニューヨークでしょう。これらの都市は、それぞれナイトタイムエコノミーの経済規模を算出しています。その額、ロンドンは約3~5兆円、ニューヨークは約2~3兆円と、大きな金額となっているのです。
これらの都市をはじめ、ナイトタイムエコノミーが盛んな都市には主に、3つの共通点があります。1つは有力なコンテンツを持っているということです。ニューヨークのブロードウェイがその最たる例でしょう。また、マカオやラスベガスのカジノも、立派なコンテンツの1つです。
2つ目は、夜間の交通機関です。ニューヨークやロンドンでは、地下鉄の24時間運行や、ライドシェアなどの二次交通が広く浸透おり、観光客は時間を気にすることなくエンターテインメントを楽しむことができるのです。
最後に、法整備です。ナイトタイムエコノミーは複数のステークホルダーが関係するため、効果
的なナイトタイムエコノミー推進体制の整備が求められます。実際、ロンドンやシドニーでは、ナイトタイムエコノミーのための役職があるなど、整備が進んでいます。
日本でも始まったナイトタイムエコノミーの取り組み
こういった中で、日本でもナイトタイムエコノミーの取り組みが進んでいます。その代表的なものが、渋谷区と新宿区がタッグを組んだ「TOKYO Night Time Passport」でしょう。渋谷区、新宿区の指定されたレストランで食事ができるクーポンを販売することで、訪日外国人の消費を活性化させようとする試みです。
また、丸の内では、新東京ビル1階に入る日本政府環境局の外国人向け総合観光案内所で、2018年11月から2019年2月までの間、東京駅周辺を人力車で散策する「ナイト人力車ツアー」が開催されるなど、地域に外国人を呼び、消費してもらおうという動きが進んでいるのです。
ナイトタイムエコノミー活性化には、都市全体での取り組みが必要
訪日外国人の消費を増やすために注目されているナイトタイムエコノミーですが、今後、日本でナイトタイムエコノミーが活性化するには、都市全体での取り組みが必要となってくるでしょう。新宿や丸の内だけの取り組みでは、どうしてもロンドンやニューヨークに比べると見劣りしてしまいます。
今後オリンピックもある中、ナイトタイムエコノミーの拡大のためにどのような施策が行われるのか、ますます注目が高まっていると言えるでしょう。(提供:JPRIME)
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