「約66%が資産価値よりライフスタイル優先」。こんな結果がある民間企業の調査で明らかになり、話題となっています。リセールバリューが維持されやすい駅近でなく、駅から遠くても構わないという人が増えているようです。不動産の選び方がいま変わりつつあります。
「ライフスタイル」重視は66.7%
この調査結果は、不動産情報を自動配信する「物件提案ロボ」事業を手掛けるリニュアル仲介株式会社によって、2019年6月に発表されたものです。購入する不動産の立地に関してインターネット形式でアンケートを行い、621人が回答。
アンケートでは2つの質問が投げかけられ、まず「自宅の購入は、駅から徒歩何分まで許容できますか?」という質問では、バスを使う人を含めて10分以上を許容できる人が全体の46.0%に上っています。特にその傾向は30代で高く、50.0%に上っています。同社は報道発表で「子育て世代は駅からの距離に寛容であることが分かります」としています。
また「自宅を購入する場所は、どちらを優先させますか?」という「ライフスタイル」と「リセールバリュー」のどちらかを選ぶ質問では、3人に2人の割合となる66.7%の人がライフスタイルを優先することが明らかになっており、バスでの行き来に関してもより受容できるという結果となりました。
不動産を購入する際はこれまで一般的に、売却するときのことを考えてリセールバリューが高い物件を選ぶことが定石でしたが、いまなぜこうした変化が起きているのでしょうか。
なぜこうした状況になったのか?
こうした結果が出た理由を考える際、一つのデータとなるのが不動産価格の変動でしょう。
1980年代後半から1990年代初頭におけるバブル時代においては、不動産価格は上がるもの、というのが定説でした。そのため住宅購入の動機が価格の高騰を見越したものだった人たちは少なくなく、リセールバリュー重視で不動産の立地を選んでいた人も多かったはずです。
ただバブルの崩壊でその神話は崩れ、現在もエリアによってはリセールバリューが高くなっているものの、少子化などで将来の不動産市場に対する期待感も低くなりつつある中、そもそも住宅購入に投資的な意味合いを持たせる人が少なくなっていると指摘する人もいます。
また、インターネットの普及でクラウドワーカーとして自宅で働く人も増えているほか、民間企業でも効率化や社員のワーク・ライフ・バランスの向上などに向けて在宅勤務制度が徐々に導入されつつあり、これまでは職場へのアクセスなどの面で便利だった駅近不動産を選ぶ人が少なくなったとも考えられます。
考え方の変化、立地選びだけではない?
こうした意識の変化の兆しが表面化している不動産の立地に対する人々の考え方ですが、変化は立地選びだけに留まらない可能性もあります。
最近では特に都市部ではシェアハウスなどが一般的になりつつあるほか、「全国どこでも住み放題」といったサービスを提供しているスタートアップ企業もあります。グローバル化によって海外と日本を行き来しながら働く人も少なくないため、より住む場所に対して多様な考え方を持つ人が増えていると言えるでしょう。
そしてこうした社会的背景は、駅近かそうでないかということのほかに、持ち家か賃貸か、新築か中古かといった傾向にも影響してくるため、不動産業界の将来を予測する上で今後も注目していきたいところです。
不動産に対する考え方は、社会の「鏡」
このように考えれば、不動産選びに対する人々の考え方はまさにいまの社会を映し出す「鏡」であるとも言えます。10年、20年後に今とは異なる社会情勢となったとき、人々の不動産に対する考え方はより異なる方向性となっていくかもしれません。(提供:JPRIME)
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