大阪にある「百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群」は、2019年7月に世界遺産に登録されています。これまで何度も国内推薦に挑戦し、ようやく世界遺産へ登録となりました。日本国内で23番目、大阪では初めてユネスコ世界遺産への登録となります。そこで今回は、この世界遺産誕生で大阪にどれくらいの経済効果があるのかを中心に解説します。

日本各地の巨大古墳ベスト10のうち5基を含む古墳群

大阪,世界文化遺産.経済効果
(画像=PIXTA)

はじめに「百舌鳥・古市古墳群」の特徴を整理しましょう。国内最大の前方後円墳「大山古墳(仁徳天皇陵)」(百舌鳥古墳群)や「応神天皇陵古墳」(古市古墳群)など、日本各地の巨大古墳ベスト10のうち5基が同古墳群に含まれています。なかでも仁徳天皇陵はエジプトのピラミッド、中国の始皇帝陵と並び世界三大墳墓の一つとされていて、その全長840メートル(濠を含む)は他を圧倒しています。

現状見ることのできる古墳は、周囲の建物の中に突然現れた小山のような存在ですが、建設当時は全くの正反対でした。生い茂る一面の木々の中に、葺石で白く装飾された建造物が整然と立ち並んでいたようです。大阪湾岸から約3キロメートル離れている仁徳天皇陵。当時はすぐ近くに海岸線が迫り、海上を行き交う船々から白く輝く巨大な姿を見ることができたようです。

そうした古墳は、当時のヤマト王権の権力を内外に知らしめるように配置されたと考えられています。

世界遺産登録による経済効果1,000億円の試算も

古墳群のある堺市、藤井寺市、羽曳野市をはじめ、大阪各地で世界遺産への登録を祝福するイベントが開かれ、たくさんの市民や関係者が世界遺産登録を祝いました。2017年7月に公営社団法人堺都市政策研究所が公表した資料によると、百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録による経済波及効果は堺市で約340億円、大阪府全体で約1,000億円です。

また大阪府における来訪者は約561万人増加すると推計しています。さらに2025年には大阪で国際博覧会(大阪万博)が開かれます。三井住友DSアセットマネジメントの試算によると、大阪万博には約3,000万人の来場が期待され、消費支出の経済効果は約1.1兆円(建設費などを合わせた総計では約1.9兆円)が見込まれています。

大阪府や大阪市は大阪万博に合わせて、会場の人工島「夢洲(ゆめしま)」でカジノを含む統合型リゾート(IR)の開業を計画していることもあり、地下鉄延伸や湾岸エリアの大規模な再開発などインフラ整備も加速していくことでしょう。今回の百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録と大阪万博との相乗効果は、そうした試算以上の経済的恩恵がもたらされることも期待できます。

またとない好機を最大限に生かし、国内だけではなく海外からの観光客も呼びこもうと地元や周辺地域では観光ルート作成やガイド整備などの取り組みも相次いで動き始めています。

世界遺産登録後の課題「地上からだと全体像がわかりにくい」

百舌鳥・古市古墳群にも観光資源としてのウィークポイントがあります。古墳は地上からは全体像がわかりづらく、内部も公開されていないのでその魅力が観光客に伝わりづらいことが課題です。そのほとんどは宮内庁が管理する天皇陵なので敷地に立ち入ることもできません。堺市の永藤英機市長は、上空から古墳を見てもらえるように近隣の公園から20~30人乗りの気球を飛ばす構想も検討し「2020年の春には実現したい」としています。

大阪万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。人工知能(AI)や仮想現実(VR)などを体験できる「最先端技術の実験場」にすることがコンセプトです。あわせて百舌鳥・古市古墳群でもドローンで上空から撮った古墳群の映像や、古墳内部の石室を再現したCG映像を鑑賞できる「仮想現実(VR)ツアー」など、最新テクノロジーを生かした新しい観光コンテンツの開発なども期待されるでしょう。(提供:JPRIME


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