前日については、トランプ大統領が中国に対して「我々は中国と協議しているが、彼らはいつも最終的に自分達の利益のために取引を変更する」「中国との問題は、彼らが約束を果たさないこと」「私が選挙に勝てば、中国は今交渉しているものよりもさらに厳しいものになるだろう」と牽制しました。状況次第ではありますが、米中閣僚級通商協議は、これまで同様に物別れに終わる可能性が高まったと考えられます。また、トランプ大統領が「来年の大統領選で民主党の候補が勝利するかどうかを見極めようとしている」との発言が意識されてくるようであれば、このまま進展なく平行線を辿るかもしれません。
ジョンソン英首相は、「EUが妥協できなければ、英国が合意なき離脱に向けた準備を進めなければならないのは明白だ」との見解を繰り返し、「EUがアイルランド問題に関するバックストップを放棄しない限り、英国はEUと協議を開始しない」とも発言しており、日を追うごとに「合意なき離脱」の可能性が高まっています。新閣僚は完全に強硬離脱派で占められており、ポンドは急速に売られているものの、ここから反発する材料は乏しく、このまま軟調推移が継続する見通しです。
本日は、FOMCが予定されており、マーケットの関心はこのイベントに集約されるのではないでしょうか。現段階では、25bpの予防的利下げが確実視されています。基本スタンスとしては、今後数会合は緩和姿勢を維持するものと思われますが、焦点は回数になりそうです。3回程度であれば、市場は既に織り込み段階に入っていますが、4-5回の利下げを示唆するようであれば、ドル円は107円を目指す動きになりそうです。
今後の見通し
本日のFOMCでのリスクシナリオとしては、可能性は低いものの、パウエルFRB議長がトランプ大統領がの圧力に屈するかたちで50bpの利下げを断行することでしょうか。50bpの利下げ織り込み度は18%程度になっているため、ほぼ50bpの利下げは考えらえていません。当然大幅利下げは株価上昇に寄与しますが、それ以上にドル売りが強まることが想定されるため、50bpの利下げを断行した場合はドル急落、連れる形でクロス円なども急落する見通しです。
昨日発表された日銀金融政策決定会合では、予想通り据え置きとなったものの、一部ではフォワードガイダンスの変更があるのではないかとの思惑もあったため、直後は円買いで反応しました。ただ、注目すべきは、声明文の最後に「物価安定目標に向けた モメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる」との文言を新たに追加したことです。また、片岡委員はこれまで同様イールドカーブコントロールの現状維持に反対しましたが、その理由として、 短期政策金利を引き下げることで金融緩和を強化することが望ましいとして反対したと報じられています。
上記にあるモメンタムが損なわれる可能性は、FRBの大幅利下げを指しているものと思われます。既に、主要な中央銀行が利下げに踏み切る、または利下げを検討している段階に入っているため、状況によっては日銀も追加緩和に踏み切らざるを得ないと考えているものと思われます。その意味でも、本日公表されるFOMCにて、今後の利下げ回数などを含めた展望次第で、ドル円を含めたクロス円の動きは決まってくるのではないでしょうか。
1.12ドルレジスタンスが続く限りはユーロショート戦略
1.11ドル付近では下値の底堅さが確認されますが、反面、1.12ドルでは上値の重さも確認できます。ただ、テクニカルだけでなく、ファンダメンタルズ要素を加味すると、再度1.11ドル割れの方向に動くと考えています。1.1160ドルでのショート、1.1200ドル上抜けを損切りとし、利食いについては、1.1100ドル下抜けを想定し、1.1060ドル付近に設定します。
海外時間からの流れ
トルコリラ円については、19.50円付近までトルコリラ買いが進行しています。S400を巡る米国からの制裁が軽微なものになりそうなこと、さらには、先日の会合で425bpの利下げを行っても、同国の経済回復がバックボーンとしてあるため、正当な利下げであるとの見方が強まっていることもトルコリラをサポートしています。アルバイラク・トルコ財務相は、トルコ経済に対してポジティブな見解を示し、9月には新たな経済プログラムを公表すると述べました。また、トルコ中銀が大幅に引き下げた政策金利についても、更なる利下げを望む発言が伝わっており、目先トルコリラは堅調に推移することになりそうです。
今日の予定
本日は、独・6月小売売上高、独・雇用統計、ユーロ圏・7月消費者物価指数、ユーロ圏・6月失業率、米・7月ADP民間雇用者数、加・5月GDP、米・7月シカゴ購買部協会景気指数、そして、FOMC政策金利発表/パウエルFRB議長定例会見などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。