多くの人は、国境を越えて事業を展開する世界の大手IT企業に、あまり意識することなく自身の個人情報を提供しサービスを受けています。GAFA(ガーファ)は、グーグル(Google)、アマゾン(Amazon)、フェイスブック(Facebook)、アップル(Apple)の巨大ITグローバル4社の頭文字です。この4社だけで数十億人規模の個人情報を抱えています。
登録された個人情報のデータは「現代の石油」として、さまざまな側面から注目を浴びています。その膨大な個人情報データの流通を国際ルールで守るため、2019年6月末、G20大阪サミットでの1つの議題として挙がったのが「大阪トラック」です。
テクノロジー企業がもたらす光と影
企業は、年齢や性別、住所などの登録情報から健康管理、購買履歴、検索履歴、顔認識技術などまで、あらゆる情報を個人から収集しています。また収集した個人情報は分析や予測し、個人の手元に広告や新たなサービス案内を配信するのに使われているのです。世界最大手のショッピングサイトであるアマゾンが良い例でしょう。
Amazonのサイト上の商品をクリックしていくと、興味深い関連商品が次から次へとすすめられてきます。クリックや購買履歴などの情報を基に、消費者にマッチした商品を紹介しているわけです。レコメンデーションと呼ぶこうした広告表示は、自身にピンポイントでマッチしたモノやサービスを紹介してくれることから、便利と感じる人も多いでしょう。
一方、体温や脈拍、心拍数を測るスマートウォッチなどは、センサーにより健康状態を収集、分析し、病気の予防や将来の医療革新につなげるなど、情報が健全な意味合いで利用されています。これらの情報活用が企業を成長へと導き、将来の経済成長や技術革新にも大きく貢献していることは事実です。しかし、その個人情報が個人の合意なく他の目的で流用および悪用されてしまうことが問題視されています。
GAFAなどの世界大手企業は、宇宙に人工衛星を打ち上げ、世界の隅々までつながるインターネットサービスを提供しようとしています。ネットを介して世界とつながっていない残りの人口20億人をグローバルマーケットとつなげるとともに、自社サイトに誘導し、新たに個人情報を吸い上げ、さらなる収益確保を狙っているわけです。
テクノロジーの飛躍的な進化は、世界の暮らしを豊かにしていますが、自身の情報が想定できないエリアで悪用されると、大変なことになります。世界で約23億7,500万人(2019年第1四半期)のユーザーを抱えるとされるフェイスブックが、2018年3月には最大8,700万人の個人情報を流出させ、その情報が大統領選挙の情報戦略で利用されました。最終的にフェイスブックは50億米ドルもの罰金を支払うことになります。
さらに同社は2019年6月、暗号資産市場への参入を発表。今後あらゆるデータがネットで流通することが当たり前の世の中になりつつあります。また中国大手通信機器メーカーのファーウェイ製品を使うことで、機密情報の漏えいにつながることを批判し各国・各社が措置を実施しました。しかしGAFAが世界各地から吸い上げている個人情報の量が膨大であることは確かです。
今後も情報流出に対する心配は絶えないでしょう。個人情報が流出、利用されれば、振り込め詐欺や仮想商品の詐欺、ハッキングなどにも巻き込まれる可能性があります。日本には個人情報保護法がありますが、あくまでも日本の法律であり、他国では適用されません。
デジタルデータ流通や電子商取引に関する国際ルールへ
そのような中、今回のG20サミットで議論されたのが、国境を越えた自由なデジタルデータの流通や電子商取引に関する国際ルール作り「大阪トラック」です。情報は国境を越えて瞬時に飛び交う時代です。しかし大阪トラックはただの開始宣言に過ぎず、現在のところ規制と罰則、罰金などの措置により、個人情報が守られているわけではありません。
政府が訴えるよう、国際的なルール作りに欠かせない強力な紛争処理と制裁措置の能力を持つWTO(世界貿易機関)の役割にも期待したいところです。
・価値観や法律/規制が異なる各国政府が、GAFAのスピード感ある動きについて来られるのか
・GAFAの動きをコントロールできるのか
・国際経済の成長を妨げることなく、国際社会が求めるルール作りができるのかなど
今後も各国政府の迅速な動きに注目が集まりそうです。(提供:JPRIME)
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