注目のFOMCでは、政策金利こそ市場予想の25bpの利下げとなりましたが、サプライズとしてパウエルFRB議長の定例会見で、同議長が明確なハト派スタンスでなく、中立的、寧ろタカ派よりのスタンスをとっていることが判明しました。今回の利下げについては、「サイクル半ばの調整」であることを示唆し、「長期緩和サイクルの開始」を否定しました。当然ながら、トランプ大統領からは失望したとの声明が出ていますが、今回の利下げについても、声明文にて、ジョージ米カンザスシティー連銀総裁とローゼングレン米ボストン連銀総裁が反対票を投じ、金利据え置きを主張したと報じられています。パウエルFRB議長のみならず、FRB全体が今回の利下げはあくまで「予防的利下げ」であるということを意味しているのだと考えられます。

唯一のハト派寄りの政策としては、従来より2カ月前倒し、FRBのバランスシート(保有資産の縮小)終了を決定しました。今回の利下げが、あくまで「予防的利下げ」であるということを考えると、バランスシート縮小が唯一の緩和対策であり、長期緩和サイクルに入ることがある程度織り込まれていたマーケットにとっては、サプライズとなりました。NYダウは333ドル安となり、今回のFOMCの決定を嫌気しましたが、為替市場においては、ドル独歩高になりました。

昨日は月末に当たるため、月末のロンドンフィックスも注目されていましたが、結果としてはユーロ売りのフローが優勢となりました。また、上記FOMCの内容を受け、FRBの追加利下げ観測が大幅に後退したことを受け、ドル買いが強まり、ユーロドルではサポートラインとして意識されていた1.11ドルのラインを下抜け、1.10643ドルまで下値を拡大しました。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

FRBの中立スタンスを受け、明日予定されている米雇用統計の結果が非常に重要になってきました。経済見通しを巡る不確実性や目標を下回るインフレ率を前面に押し出せば、緩和的な政策が正当化されるはずでしたが、今回の利下げはあくまで「予防的利下げ」であると表明している以上、強い労働市場を維持することにより、さらに追加利下げの回数を減少させるのではないかとの思惑が強まりそうです。裏を返せば、強い雇用統計の結果となれば、世界経済がより悪化の一途をたどらない限り、追加利下げは限定的なものになると言い換えることができます。雇用統計の結果次第では、ドル円は明確な上昇トレンドに入る可能性があります。目途としては、中期的には110円、長期(年末に向けて)的には112円がポイントになると考えています。

ポンドについては、本日の早朝に英財務省がEUからの「合意なき離脱」に備え、21億ポンド(2,775億円)の追加予算が発表されました。これは、ジョンソン首相の意図を汲み取るものであり、10/31には、合意があろうがなかろうが離脱するという意思の表明だと思われます。また、追加予算では主要な国境、税関インフラの整備と重要な医療用品へのアクセスを確保する緊急の現金支出に11億ポンドを充てることも発表されました。これで、「合意なき離脱」に備える予算総額は63億ポンドに拡大されています。

そんな中、本日はスーパーサーズデー(英中銀政策発表、インフレ報告発表、議事録発表)になります。党首選のキャンペーンでは、ジョンソン首相は「合意なき離脱となるのは、100万分の1の確率でしかない」と表現していましたが、既に「合意なき離脱」ありきの組閣、そして政策を打ち出しています。BOE(英中銀)は、これまで離脱条件に沿ってスムーズに離脱する前提で物事を考えていましたが、「合意なき離脱」を前提とするのであれば、今後の政策金利、そしてGDPなどの主要な経済指標見通しも大幅に下方修正されるでしょう。時期的に「合意なき離脱」前提の結論を言及するとは思えませんが、ジョンソン首相の政策に難を示せば、ポンドはもう一段安に向かうでしょう。

ようやく1.11ドルのサポートラインを下抜けてきた

強固であった1.11ドルのサポートラインを下抜けており、ユーロドルについては、もう一段安となることが考えられます。ファンダメンタルズ要素では明確に下落を示唆していましたが、テクニカルが踏みとどまっていただけに、1.11ドル割れは思ったよりも大きな影響があると思われます。1.1160ドルでのショート、逆指値を利食いの逆指値に変更し、1.1120ドルに設定、利食いについては、1.1060ドルから1.1020ドルに引き下げます。

海外時間からの流れ

トルコリラ円については、ドル独歩高の中でも、19.50円付近で踏みとどまっています。トルコ中銀が発表したインフレレポートでは、2019年末予想で14.6%→13.9%(▼0.7%)、2020年末8.2%→8.2%(±ゼロ)となり、さらなるインフレ率低下が見込める状況になっています。今後の利下げの正当性を確保し、S400購入にあたっての米国からの制裁も軽微なものになりそうなことから、トルコリラについては、底堅い動きが期待できそうです。

今日の予定

本日は、英・7月製造業PMI、英中銀(BOE)政策金利発表、米・新規失業保険申請件数、米・7月ISM製造業景況指数などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。