世界三大投資家のひとり、ジム・ロジャーズが2019年にリリースした新著が『お金の流れで読む 日本と世界の未来 世界的投資家は予見する』(PHP新書)です。その中で日本のこれから伸びる産業として著者が挙げたのが「インバウンド」「農業」「教育」の3分野でした。どれくらい信憑性があるのか、リアルなデータと照らし合わせて見てみましょう。
ジム・ロジャーズが挙げた成長分野1:インバウンド
ロジャーズが挙げた1つ目の成長分野が「インバウンド」です。ロジャーズがインバウンドで伸びると主張する根拠は次の通りです。中国の人口は約14億人で日本のおよそ11倍。共産国家とはいえ、経済優先の政策をとる近年は、パスポートの入手や通貨の持ち出しも簡単に行えるようになりました。日本は地理的に中国に近いため、旅行先の選択肢に挙がりやすいというのです。
さらに日本には外国人が興味を持つ観光名所が多くサービスの質も高いことから、これから先もインバウンド需要の伸びが期待できるといいます。最近のインバウンドマーケットの動向を見ても、ロジャーズの上記の主張は説得力があるといえるでしょう。日本政府観光局発表の統計によると、訪日外国人数は2013年以降に増加幅が大きくなり、2013年の約1,036万人から2018年には約3,119万人とおよそ3倍に拡大しています。
さらに政府も省庁ごとに観光ビジョンを掲げ、さまざまな施策を進めています。これも成長の推進力になりそうです。一例を挙げると、「国立公園の『ナショナルパーク』としてのブランド化」(環境省)、「古民家等の歴史的資源を活用した観光まちづくりの推進」(内閣官房)といった具合です。
ジム・ロジャーズが挙げた成長分野2:農業
次にロジャーズが挙げたのが「農業」です。一見すると上り調子には見えにくい農業がどうして伸びているのでしょうか。理由に挙げるのがこれから日本で増える「外国人」と「高齢者」の農業での活躍です。内閣府の資料によると、2018年の「経済財政諮問会議」の記者会見で内閣府特命担当大臣は下記のように述べています。
「さまざまな分野で深刻な人手不足が生じている。IT、AIによる生産性向上を進め、女性・高齢者の就業環境を整備するとともに、専門的・技術的な外国人受け入れの制度の在り方について早急に検討を進める必要がある、といった議論があった」
こういった背景のもと入管法が改正。その結果、一定の技能を持つ外国人が対象の「特定技能1号」と熟練した技能を持つ外国人が対象の「特定技能2号」が新設されました。特定技能1号は在留期間が通算5年と限定され家族帯同は不可。2号は条件次第で永住ができ配偶者や子の帯同も認められます。制約の条件があるため、厳密な移民ではないものの、「移民政策」に近い制度といえるでしょう。
その中で介護、建設、小売りなどと並び農業も重点分野に挙げられています。この外国人の労働力を上手に活用すれば、日本の農業が成長する可能性はあります。ただし、賃金の高い都市部で働きたいという外国人のニーズも強いと考えられるため、農村部にも人が回るような施策も必要になるでしょう。さらに、高齢者の活用も重要な人手不足対策の一つです。
総務省の「人口推計」によると2018年10月1日時点での日本の総人口は約1億2,421万人でした。そのうち65歳以上の高齢者人口は約3,557万人となり全体の28.1%を占めます。およそ4人に1人が高齢者ですが、今後少子高齢化の進展を考えると外国人とシニアを労働力確保の両輪として活用していくことが望まれます。
ジム・ロジャーズが挙げた成長分野3:教育
最後の3つ目の分野が「教育」です。この分野が伸びる理由は日本教育の質の高さです。現に日本での教育を求め、外国人留学生の数は飛躍的に増加しています。日本学生支援機構の調査によると、2018年5月1日現在の外国人留学生の数は29万8,980人で対前年比3万1,938人(+12.0%)でした。中でも中国人留学生は11万4,950人で全体の38.4%を占めています。
インバウンドとともに、日本への国別貢献度では圧倒的な存在感を示しているといえるでしょう。少子化で学生数の減少に悩んでいる各大学でも、外国人留学生の受け入れを積極的に進めています。「インバウンド」「外国人労働者」「留学生」と、今後も外国人を迎える機会が多くなることを考えると、英語の習得は必須の課題となるでしょう。教育ビジネスはその意味でもまだ伸びしろがありそうです。
ロジャーズが提唱する日本の3つの成長分野「インバウンド」「農業」「教育」はリアルデータと照らし合わせると説得力があります。投資や新規ビジネスのヒントとして意識したいところです。(提供:Wealth Lounge)
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