前週末については、米雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数が16.5万人増予想が16.4万人増、失業率が3.6%予想が3.7%、平均時給(前月比)が+0.2%予想が+0.3%とまちまちの内容になりましたが、ほぼ予想通りの結果となりました。ただ、6月の非農業部門雇用者数変化が22.4万人から19.3万人に下方修正されたことで、一旦ドル円は106.60円付近まで下落しました。

雇用統計発表直後に、「トランプ大統領は対中制裁関税の発動延期や中止にオープン」とCNBCの報道により、ドル円は107.28円付近まで反発しましたが、クドロー米国家経済会議(NEC)委員長が「対中追加関税延期の可能性については何も聞いていない」との声明を出したため、米中貿易協議の進展期待が剥落し、ドル円は一時106.51円付近まで値を下げました。トランプ大統領がEUの貿易に関して声明を出すとのことから、日本時間3日2時45分に行われる声明に注目が集まりましたが、内容としては「EUが米国産牛肉に対して無関税の輸入枠を設けることで合意した」との内容に留まりました。依然としてEUの自動車への関税計画は検討中とのことですが、今回の合意は米欧関係の改善につながるとの見方もあり、その後は106円台半ばでの動きに終始しました。

また、前回のFOMCにてパウエルFRB議長は、「貿易(trade)」による「不確実性(uncertainty)」という言葉を30回以上も言及しました。対中国との貿易摩擦については、この不確実性が確実に高まったと考えられるため、次回FOMCへの利下げ懸念も、ドル売りの材料になると考えられます。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

今回の対中制裁追加関税については、5月31日(金)の日本時間朝8時半頃に、トランプ大統領が不法移民の流入が続いていることを理由に、メキシコからの全製品に6月10日から 5%の関税を課すことをツイッターで公表した後の動きに似ています。この時も今回と同様、直後の動きは円高、ドル安の動きになりました。結局、メキシコへの追加関税については、トランプ大統領が関税賦課を無期限延期することを発表して決着となりましたが、リスクオフの次はドル安の動きが主導した経緯があり、問題が長期化するようであれば、今後はドル安に転じる可能性がありそうです。

英国のEU離脱問題については、「合意なき離脱」懸念が日に日に高まっており、ジョンソン首相は、EUに対して最後通告を突きつけ、メイ前首相とEUが合意した離脱条件の再交渉がない限り、EUとの協議を行わないと姿勢を貫いています。マイケル・ゴーブ環境・食料・農村相は英国政府は、既に「合意なき離脱」の想定で動いており、準備を強化していることも明らかにしました。EUとの合意が望ましいとしながらも、ジョンソン首相は、先週「合意なき離脱」に備えた財政資金を21億ポンド増やしています。また、関係当局に対して、医薬品の在庫を増加させ、国境管理のスタッフ増員を指示したほか、1億3,800万ポンドにのぼる国民への情報キャンペーンもスタートさせており、引き続きポンドの上値は抑えられると考えた方がよさそうです。

1.1140ドルを上抜けるまでは、ユーロショート戦略

1.1100ドルのユーロドルのショート、ドル売りの流れもあり、1.1120ドル付近での推移になっています。ただ、1.1140ドルが目先のレジスタンスポイントになるため、この水準を上抜けない限りは、ショート戦略継続を想定しています。損切りは1.1140ドル、利食いは1.1020ドル設定です。

海外時間からの流れ

米中通商交渉の長期化が懸念されているなかで、東京時間では、オフショア市場で人民元が急落しました。ドル・元はこれまでレジスタンスとなっていた7.0000元をブレイクし、ドル高・人民元安が進み、元は史上最安値を更新しています。また、ドル円は一時106円の大台を下抜け、105.802円まで下値を拡大しており、基本的には戻り売りスタンスが継続するのではないでしょうか。

今日の予定

本日は、トルコ・7月消費者物価指数、英・7月サービス業PMI、米・7月ISM非製造業景況指数などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。