マンションや土地など手持ちの不動産を売却することで、売却益を得ることができる。しかし売却益を得た場合には、税金の支払いが必要だ。そこで今回は不動産売却時にかかる税金について、種類や金額、節税方法など詳しく解説していく。

不動産売却時に課される税金の種類

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(画像=Princess_Anmitsu / Shutterstock.com)

それでは不動産売却時に課される税金について解説していこう。売却益が出ようと出まいと、必ず必要になるのが以下の2つだ。

・印紙税
・登録免許税

印紙税は、不動産を売却する際に作成される「不動産売買契約書」に貼る印紙の料金だ。その額は契約書に記載されている不動産の額によって異なるので、以下の表を参考にしてほしい。またこの金額は、租税特別措置法による軽減税率が適用されている。この軽減措置は2020年3月31日までの間に契約書が作成されたものになるため、2020年4月1日以降は確認が必要だ。

記載金額 印紙代
1万円未満 非課税
10万円以下 200円
50万円以下 200円
100万円以下 500円
500万円以下 1000円
1000万円以下 5000円
5000万円以下 1万円
1億円以下 3万円
5億円以下 6万円
10億円以下 16万円
50億円以下 32万円
50億円を超えるもの 48万円
記載金額のないもの 200円

登録免許税は、不動産を売却し名義を変更する際に必要となる税金だ。登録免許税の額は登記の種類によって税率が異なる。売却により所有権を移す場合は「固定資産税評価額」×2%だが、2020年3月31日までは軽減税率が適用されており、1.5%となる。

次に必要となるのは、譲渡所得(売却益)が出た場合に支払わなくてはならない税金だ。それらは「譲渡所得税」と「住民税」の2種類となる。

譲渡所得は、「譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)」でプラスが出た場合、利益が発生したものとみなされる。

取得費は、次の2つの計算式のうち、大きい金額を使う。

  1. 実額法…土地建物の購入代金と取得に要した費用の合計から、建物の減価償却費を差し引いた金額

  2. 概算法:譲渡収入金額×5%

取得費はその不動産を取得した金額だが、実額法で計算する場合は取得時の金額そのままでなく、建物の場合は所有期間中の減価償却も計算しなくてはならない。居住用の建物の場合は、「建物の取得費×0.9×償却率×経過年数」という計算式で算出する。償却率は居住用の場合は以下のようになる。事業用不動産とは計算式が異なるため注意してほしい。

建物の種類 耐用年数 償却率
木造 33年 0.031
軽量鉄骨 40年 0.025
鉄筋コンクリート 70年 0.015

譲渡費用とは、売るために直接かかった費用のことで、土地建物を売るために不動産会社に支払った仲介手数料、登記や登録に必要な費用、売主が負担した印紙税などが含まれる。また土地の場合は、埋め立てや地ならしなどの造成費用、測量費、古家があった場合の解体費用も含めることが可能だ。

譲渡収入金額は、土地や建物などの譲渡代金に、固定資産税・都市計画税の清算金を足したものとなる。さらに譲渡する不動産が自分の居住する家である場合は、譲渡所得から3000万円の特別控除を受けることが可能だ。

先ほどの計算で売却益が出た場合、不動産を所有していた期間の長さによって税率は異なる。不動産の購入日から譲渡した年の1月1日までの期間が5年以下であれば「短期譲渡所得」、5年以上であれば「長期譲渡所得」として計算される。売却した日ではなく、「その年の1月1日」までであるから注意すること。

短期譲渡所得よりも長期譲渡所得の方が税率が20%近く低いため、少しの日時の差で支払う税額が大きく変わる。この計算式は必ず頭に入れておきたい。

譲渡利益に対する住民税と所得税の税率は以下の通りだ。

長短区分 短期 長期
期間 5年以下 5年超 10年超所有軽減税率の特例 (課税譲渡所得6000万円以下) 10年超所有軽減税率の特例 (課税譲渡所得6000万円以上)
居住用の場合
所得税
30.63% 15.315% 10.21% 15.315%
居住用の場合
住民税
9% 5% 4% 5%
居住用の場合
合計
39.63% 20.315% 14.21% 20.315%
非居住用の場合
所得税
30.63% 15.315%
非居住用の場合
住民税
9% 5%
非居住用の場合
合計
39.63% 20.315%

ここまでの項目を元に、2009年に取得した新築鉄筋コンクリートマンションを2020年5月1日に売却した場合の税金を計算していこう。マンションの取得価格は5000万円、築11年、所有期間は10年、譲渡価格は4000万円とする。また購入時と譲渡時の諸費用はそれぞれ100万円とする。マンションは転勤により賃貸に出しており、マイホームとして利用していないものとする。

まずはマンションの減価償却額を算出してみよう。「建物の取得費×0.9×償却率×経過年数」という計算式に当てはめると「5000万円×0.9×0.015×11」で742万5000円となる。

次に取得費を計算する。マンションの購入費用5000万円と購入時諸費用100万円の合計額5100万円から、先ほどの減価償却相当額にあたる742万5000円を引いた4357万5000円が取得費だ。減価償却相当額は建物の場合に算出するもので、土地の場合は必要ない。

最後に譲渡所得を計算する。譲渡所得は「譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)」で計算されるから「4500万円-(4357万5000円+100万円)」となり、譲渡所得は42万5000円となった。

今回は居住用ではない不動産を売却しているため10年超所有軽減税率の特例は利用できない。そのため譲渡所得42万円に対して課せられる税率は、所得税15.315%、住民税5%、合計20.315%だ。それぞれ所得税6万4323円、住民税2万1000円、合計8万5323円となる。

譲渡所得算出の際におさえておくべきポイント

住民税、所得税ともに5年以上所有していた場合は税率が大きく下がる。そのため、不動産を売却する際は、必ず所有年数を確認しておきたい。その場合注意したいのが年数計算の方法だ。所有年数は実際の日時ではなく、「不動産の購入日から譲渡した年の1月1日までの期間」で計算される。

例えば2015年10月2日に取得した不動産を2020年11月10日に譲渡したとしよう。実際の日時で計算すれば5年以上所有したこととなるが、2020年1月1日で所有期間が計算されるため、保有期間は4年となる。しかし譲渡を2021年1月1日以降にすれば、保有期間は5年で計算されるのだ。これだけの期間の違いで、住民税と所得税の税率は合計で39.63%から20.315%と、19.3%も下がる。

やむをえない事情がある場合を除き、あと少し待てば5年になるのであれば翌年1月1日以降に売却するのがおすすめだ。

さらに売却する不動産が自宅である場合は、10年以上所有していた場合の税率がさらに大きく下がる。10年という期間は、短期譲渡所得と長期譲渡所得の計算法と同じく「不動産の購入日から譲渡した年の1月1日までの期間」で計算される。例えば不動産取得が2009年5月1日の場合、2019年8月20日に売却したとしても実際の年数は10年だが、この計算法では9年となり、特別控除を受けることはできない。マイホーム売却の場合は特に注意しよう。

また売却益(譲渡所得)を計算する場合、仲介手数料や印紙代など、取得や売却にかかった費用も含めることができる。特に土地の造成などをおこなっている場合は金額も高額なため、売却益の計算が大きく変わることとなる。こちらも忘れずに計算に入れておくようにしてほしい。

【節税対策】土地を賢く売る方法

すでに持っている土地や不動産を売る場合、利用できる特別控除は必ずチェックしておこう。日本では不動産の流動性を上げるため、さまざまな特例措置が取られており、条件を満たせば特別控除を受けることができる。

押さえておきたい特別控除を紹介しておこう。

マイホームを売った時の特例

1 3000万円の特別控除
マイホーム(居住用財産)を売った時は、さまざまな特例が適用される。まずは所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3000万円まで控除がうけられる。

この控除は住んでいる家屋を売るか、家屋と共にその敷地や借地権を売ることが条件だ。また現在は居住しなくても、以前に住んでいた家を引っ越しから3年が経過する日が属する年の12月31日までに売る場合は適用される。

例えば2018年3月30日まで居住していた家の場合、3年が経過する日が属する年の12月31日まで、つまり2021年12月31日までに売却すれば適用が可能だ。

では住まなくなった家屋を取り壊し、更地として売却した場合はどうなるのだろうか?その場合、次の2つの要件すべてに当てはまればよい。

イ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること ロ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと

2019年3月30日に新居に引っ越し、古屋を取り壊して更地で売却する場合で当てはめてみよう。この場合、特別控除を受けるにはまず、2022年12月31日までに売却しなくてはならない。また古屋の取り壊しから売却までは1年以内となるため、2022年12月31日ギリギリに売却するとすれば、取り壊しは2022年1月1日以降からでなくてはならない。古家を残すよりも更地の方が売却しやすいが、特例を受けるのであれば取り壊しから早めに買い手を探すことが大切だ。

またこの控除を受けるには、他のマイホームに関する特例などを受けていないことも要件となるので注意してほしい。売り手が親子や夫婦など特別な関係にある場合もあてはまらない。

2 10年超所有軽減税率の特例
売却するマイホームの所有期間が10年以上の場合は、売却益(譲渡所得)が6000万円までなら軽減税率の特例を受けることが可能だ。これはマイホームを取得した年から売却する年の1月1日までで、家と土地の所有期間がともに10年を超える場合に適用されるもので、譲渡所得にかかる所得税と住民税を軽減することができる。もちろん先ほどの3000万円の特別控除とあわせて利用することが可能だ。

例えばマイホームとして18年住んでいた家と土地をあわせて8000万円で売却した場合、まず売却益から3000万円を引き、残った売却益が5000万円なので、軽減税率が適用される。

3 特定居住用財産の買い替え特例
2019年12月31日までにマイホームを買い替えた時に受けられるのがこちらの特例だ。10年以上住んでいた家を売却し、新しいマイホームを購入した場合に適用される。譲渡価格が1億円以下の場合、買い替え代金よりも譲渡代金の方が多かった場合は、買い替え代金に当たる額は課税されず、差額にのみ所得税と住民税がかかる。譲渡代金よりも買い替え代金の方が多かった場合は、課税されない。

15年住んだ家と土地を6000万円で売却し、新居を7000万円で購入した場合で考えてみよう。譲渡価格と買い替え代金を差し引きすると、買い替え代金が1000万円高いため、譲渡所得があったとしても課税はされない。先ほどの3000万円の特別控除よりもさらに差し引きできる価格が大きいため、より節税となる。

こちらは譲渡した年の1月1日時点で、所有期間が10年以上、居住期間が通算10年以上のマイホームに限る。住み替えてから3年を経過する日の属する年の年末までに売却する、家屋を取り壊した場合は取り壊した日から1年以内に敷地の売却に関する契約が締結されており、他の用途に土地を使用していないことも条件だ。転勤などで単身赴任の場合は、配偶者や子供が居住している住宅を売却した場合も適用される。先ほどの1、2の特例と重複して適用することはできない。

4 譲渡損が出た場合の特例
マイホームを売却した場合、譲渡損が出た場合にも特例が適用される。損益通算をしてもなお引ききれない譲渡損がある場合、翌年以後3年間、その他の所得から繰越控除をうけることが可能だ。こちらは居住期間や所有期間に制限がないため、譲渡損が出た場合はぜひ利用したい。

2009年及び2010年に取得した土地等を譲渡したときの1000万円の特別控除

2009年から2010年までの2年間に購入した土地を売却する場合に適用できる控除がこちら。これは低迷する不動産市場を活気づけ、土地の流動化を推進するために設けられたもので、土地の譲渡所得から1000万円を控除できるというものだ。

条件は個人が2009年1月1日から2010年12月31日までの期間に取得した土地であること。親子や夫婦など特別な間柄にあるものから取得した土地でないこと、相続、遺贈、贈与、交換、代物弁済および所有権移転外リース取引により取得した土地でないこと、譲渡した土地について他の特別控除や特例を受けていないことなどがある。

たとえば譲渡所得が1200万円の場合、1000万円を控除できるため、所得税と住民税は200万円のみにかかる。譲渡所得が800万円であれば、所得税と住民税はかからない。特例の適用は確定申告で必要書類を提出することにより受けられるため、条件に当てはまる場合は必ず手続きをしておこう。

空き家の3000万円特別控除

相続や遺贈などで取得した空き家を2019年12月31日までに売却した場合、譲渡所得から最高3000万円までの特別控除を受けることができるのがこちらの制度だ。近年問題となっている空き家問題を解決するためにとられた特例で、相続などで自分のものになったものの、すでにマイホームを所有している場合など、持てあましがちな空き家が売りやすくなる。

譲渡所得から3000万円を控除できるため、支払う税金がかなり減るのがメリットだ。相続で建物を得たのち、賃貸などに出していないこと、1981年5月31日以前に建築されたものであることなどの条件があるが、相続で得た親の家などを売却する時はぜひ確認しておきたい。

いくらかかる?税金の計算方法

ここからは、さまざまなケースで税金をいくら支払わなくてはならないのかをシミュレーションしていこう。

ケース1 所有期間5年以下の場合
2014年3月に土地2000万円、建物3000万円で購入した木造新築一戸建ての賃貸物件を、2019年8月に6000万円で譲渡した場合の、譲渡所得および所得税と住民税を計算してみよう。譲渡費用は200万円とする。

まずは譲渡益を算出していこう。

譲渡収入 -〔(    取得費     )+減価償却費〕= 譲渡費用
6000万円 -〔(5000万円-334万8000円)+200万円〕 =1134万8000円

  ※減価償却費は(建物購入費用 × 木造償却率 x 経過年数)で算出
       ( 3000万円  × 0.9 × 0.031 × 4 )

譲渡所得は1134万8000円となった。この譲渡所得に対して税金がかかる。税率は所有期間が5年以下であるため、所得税が30.63%、住民税9%、合計39.63%となる。

それぞれ計算すると所得税は347万5892円、住民税は102万1320円となる。

ちなみに同じ金額、条件で賃貸物件ではなく自分が住んでいたマイホームを売却した場合は、マイホーム特例3000万円の特別控除をうけることができるため、所得税・住民税ともに支払わなくてもよい。

ケース2 所有期間5年以上の場合
2008年5月に4000万円で購入した賃貸用マンションを2019年8月に4500万円で譲渡した場合で、譲渡所得および所得税と住民税を計算してみよう。譲渡費用は200万円とする。マンションは鉄筋コンクリート製、築年数は10年とする。

まずは譲渡益を算出していこう。

譲渡収入   -〔(   取得費   )+ 減価償却費〕= 譲渡費用
4500万円 -〔(4000万円-540万)+ 200万円〕  = 840万円

※減価償却費は(建物購入費用 × 鉄筋コンクリート償却率 × 経過年数)で算出
       ( 4000万円  ×   0.9 × 0.015   ×  10  )

譲渡所得は840万円となった。所有期間が10年以上となるため、税率は所得税15.315%、住民税5%、合計20.315%となる。税額を計算すると、所得税は12万8646円、住民税は4万2000円、合計17万646円だ。

ケース3 所有期間10年以上のマイホームの場合
マイホームの場合は、所有期間が10年を超えると税率が下がる。2007年6月に9000万円で購入した賃貸用マンションを2019年10月に8000万円で譲渡した場合で、譲渡所得および所得税と住民税を計算してみよう。譲渡費用は200万円とする。マンションは鉄筋コンクリート製、築年数は15年とする。

まずは譲渡益を算出していこう。

譲渡収入 -〔(取得費 - 減価償却費)  + 譲渡費用〕= 譲渡益
8000万円 -〔(9000万円-1822万5000円)+ 200万円〕= 622万5000円
  ※減価償却費は(9000万円 × 0.9 × 0.015 × 15)で算出

譲渡所得は622万5000円となる。マイホームの場合、所有年数が10年を超えた場合は、譲渡所得が6000万円以下の部分は軽減され、所得税10.21%、住民税4%、合計14.21%が課せられる。住民税は63万5572円、住民税は24万9000円、合計88万4572円が支払うべき税額だ。

ただしマイホームの場合、さらに3000万円までの特例控除がある。このケースの場合、2016年1月1日以降まで住んでいたのであれば、譲渡所得から3000万円まで控除できるため、所得税と住民税は支払わなくてもよい。マイホームとして住んでいた期間が2015年12月31日以前までであったり、引っ越し後賃貸に出したりしていれば上記の税金がかかってくる。

マイホームを住み替えるとき、今までの住まいを売却するか賃貸に出すか迷う方もいるだろう。賃貸に出した場合の収益シュミレーションを考える場合、この税金についても考慮に入れて決断してほしい。

ケース4 相続で得た親の家を売却する場合
親から2018年4月に相続した築40年の木造一戸建てを、2019年6月に5000万円で売却した場合を考えていこう。相続までは親が居住しており、その後は賃貸などには出さず空き家のままだった。相続であるため、取得費は不明とする。この場合は概算法を利用して、取得費を計算することが可能だ。概算法では「譲渡収入金額×5%」で計算される。譲渡費用は200万円とする。

まずは譲渡所得を算出していこう。

譲渡収入  -〔取得費 + 譲渡費用〕= 譲渡所得
5000万円 -〔250万円 + 200万円〕= 4550万円

譲渡所得は4550万円となり、このまま所得税と住民税を支払うとなるとかなりの高額だ。ここで利用したいのが「被相続人の居住用採算(空き家)を売ったときの特例」である。これは2019年12月31日までに空家を売却すれば、最高3000万円までの控除が受けられるというものだ。計算してみよう。

譲渡所得:4550万円
特別控除:3000万円
4550万円 - 3000万円 = 1550万円

このケースでは、控除額を差し引いた1550万円に対して税金を支払う。所有期間は5年以下となるため、税率は、所得税が30.63%、住民税9%、合計39.63%となる。

それぞれ計算すると所得税が474万7650円、住民税139万5000円、合計614万2650円だ。   不動産投資に関わる税金はさまざまなものがある。支払う額は高額となる場合もあるが、特例などを利用すれば節税することも可能だ。不動産投資での収益を計算する場合は、支払う税金についても考慮しておくと損失が出にくい。ぜひ参考にして、不動産投資にいかしてみてはいかがだろうか。(ZUU online 編集部)

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