株やFXと並行してできる投資として注目を集めているのが、不動産投資だ。分散投資の一つとしてすでに始めている人も多いのではないだろうか。しかし不動産投資は株などと違い、固定資産税など支払うべき税金がある。税金を払うとしても、出来るだけ節税できれば利益率が上がる。そこで今回は不動産投資を行うときにできる節税対策と、その仕組みについて解説していく。
節税の強い味方「経費」とは
節税するうえで、必ず確認しておきたいのが「経費」だ。経費とは、収入を得るために支出した金額のことで、収入から差し引きすることができる。経費をしっかりと計算し、支出に計上することは、節税対策として必ずやっておきたい。そこで不動産投資に関する経費について詳しくみていこう。
確定申告で不動産投資関係の経費を計上できる
不動産投資で収入を得た場合、いくら利益が出たのか確定申告する必要がある。この際、同時に申告できるのが経費だ。では確定申告時に経費として計上できるものには、どのようなものがあるのだろうか。経費になるものとならないものをしっかりと把握しておこう。
経費計上できるもの
国税庁HPによると、必要経費として計上できるものは、「不動産収入を得るために直接必要な費用のうち家事上の経費と明確に区分できるもの」とされている。
・固定資産税
・損害保険料
・減価償却費
・修繕費
以上の4つは不動産投資にかかる経費として計上することができる。
固定資産税は所持している不動産にかかる税だ。損害保険料は建物にかけている火災保険料、地震保険料などがそれにあたる。
減価償却費とは、建物、建物付属設備、器具備品など、時間がたつにつれて価値が減る「減価償却資産」を計上する場合の費用で、購入した時に一度に経費にしてしまわず、耐用年数などに応じて購入金額を分割して期間中毎年計上できるものだ。2007年4月1日以後に取得した減価償却資産については、定額法や定率法を用いて減価償却をおこなう。
修繕費とは建物の修繕のために支払ったお金のことだ。床や壁紙などの交換から共有部分の電球の取り換えなどに支払ったお金を、経費として計上できる。
・さらに経費計上できる項目
その他、以下のようなものも経費として計上できる。
・管理費
・修繕積立費
・賃貸管理代行手数料
・借入利子
マンション、アパートなどの共有部分の清掃や、エレベーターや電気設備などの保守・点検にかかる費用、管理組合のサポート業務にかかる費用などは、管理費として計上できる。またマンションの一室を購入し賃貸に出している場合、マンションの管理組合に支払う積立金も経費にできる。さらにローンを借り入れて不動産を購入している場合、ローンの利息部分も経費になるのできちんと申告しておこう。
さらに細かいものでは、不動産投資を勉強するために購入した書籍の購入費用や、不動産相場を把握するための新聞の購読費なども「新聞図書費」として経費となるので、領収書をとっておくとよい。
経費計上できないもの
不動産収入を得るために必要な支出以外の部分、特に自分の生活費と重なる部分は経費として計上できない。具体的には修繕費や各種保険料の中でも、自宅にかかる部分の費用だ。例えばマンション一棟を所有し、一室を自宅、残りの部屋を賃貸物件に出している場合は、自宅部分にかかる金額は経費にならない。
またローンの利息は経費に計上できることは説明したが、ローン返済額の元本に当たる部分は経費とは認められない。
もうひとつ確認しておきたいのが不動産売却時に生じた譲渡損だ。譲渡損については経費ではなく譲渡所得となり、損失として計上することができる。ただし事業所得や給与所得とは、損益通算することはできない。
その他、飲食費用や通信費用など、私生活の費用についても当たり前だが経費として計上することはできない。ただし通信費の中でも、管理会社に連絡するための電話代や書類を送るための郵便料金などは経費計上できる。私用のものではなく、不動産投資のために必要な費用であったということが説明できるものについては、経費として大丈夫だ。
不動産投資で得られる節税効果
不動産投資は節税につながるというメリットがある。そもそも不動産投資で収入を得た場合、他の給与所得とあわせると所得が上がり、税金が高くなるのだが、どうして節税につながるのだろうか?
それは、不動産投資にかかる経費を給与所得とあわせて損益通算し、節税することが可能となるからだ。また相続で土地や建物を得た場合、相続税を支払う必要があるが、不動産投資を行うことでそれを節税できるという面もある。
それぞれの節税効果について確認していこう。
所得税に対する節税効果
所得税に対する節税効果についてみていこう。所得税とは、1年間に得た所得に対してかかる税金だ。不動産投資で得た収入に加え、給与所得などを得ている場合はそちらとあわせて所得を計算する。給与と不動産投資での収入をあわせて計算するだけでなく、経費についてもあわせて計算し、最終的な所得額を決めるのだ。そのため不動産投資にかかる経費が多い場合、所得が減り、税金の支払い額が少なくなるという節税効果がある。
・所得税の節税効果の具体例
具体的な例をあげてみていこう。給与のうち、課税対象所得額が800万円の場合、所得税の税率は23%だ。この場合所得税の税額は「800万×0.23-63万6000」で120万4000円となる。
しかし不動産投資の収入と経費を差し引きし、120万円の赤字となっている場合、この120万円を給与の課税対象所得額から引くことができるのだ。この場合課税対象所得額は、「800万-120万=680万」となり、所得税は680万円にかかる。この場合の税率は20%となるため、支払う額は「680万×0.2-42万7500」で93万2500円となり、30万円近く支払い額が少なくなる。
・赤字が出ていてはマイナスではないのか?
収入と経費を損益通算し、マイナスが出ていた場合、給与所得への所得税を節税できるとすると、逆に損なのではないかと考える人もいるだろう。しかし経費の中には減価償却費が含まれている。この減価償却費というのは、実際に支払った金額ではなく「建物の価値」が減少したことを表すものだからだ。
建物は新築時が一番価値が高く、時間が経過するごとに価値は目減りしていく。1000万円で購入した不動産は1年後には価値を減らしてしまっている。その減ってしまった価値を、経費として計上しているのが減価償却費だ。具体的には、価値の目減りする資産への支出を、購入時に一度に経費に計上せず、価値の減少を勘案しながら耐用年数で分割された金額を、期間中毎年経費として計上する。
こちらを含めることで実際の支出よりも経費が多く計上され、キャッシュフロー的にはプラスとなる場合がある。
住民税に対する節税効果
次に住民税に対する節税効果についてもみていこう。住民税も所得税と同じく1年間の所得に対して税率および税額がきまる。所得税と同じく、不動産投資にかかる経費と給与所得を損益通算し、課税所得を減らすことで住民税の税額を減らすことが可能だ。
相続税に対する節税効果
相続で土地、建物などの不動産を手に入れた場合、相続税を支払わなくてはならない。その節税のためには、不動産投資が有効となる場合がある。
相続税の支払いをする場合、更地の場合が一番税金が高くなる。これは土地評価額がそのまま課税対象額となるからだ。しかし土地の上にアパートなどの貸家を建てると、土地の評価額が下がり、相続税額を下げることにつながる。
貸家建付地の評価額は、その家屋の固定資産税評価額に借地権割合と賃貸割合を乗じた価額を、固定資産税評価額から控除して評価される。具体的には以下のような計算式だ。
貸家建付地の評価額=土地の評価額-(土地の評価額×借地権割合×賃貸割合)
例えば家屋の固定資産税評価額が1000万円、借地権割合が30%、賃貸割合が100%である場合「1000万円-(1000万円×30%×100%)」で計算し、評価額は700万円になる。
・空き家の場合は賃貸にすると評価額が下がるが、売却した時の特別控除は受けられない
空き家の場合は、そのままにしておくよりも賃貸に出したほうが評価額が下がり、相続税は下がる。これも先ほどの計算式で建物の評価額から借地権割合と賃貸割合を掛けた額を引いた額が賃貸物件の評価額となるからだ。
空き家をそのままにしておくのではなく、賃貸に出して家賃収入を得ることは、その後の節税にもつながるため、親が空き家を持っている場合は賃貸に出すように勧めておくのもひとつの手である。
不動産投資の節税モデルをシミュレーション
不動産投資をして節税できるのか、年収600万円の独身会社員を想定してシミュレーションを行っていこう。
税金は年収にかかるが、金額すべてに対して課税されるわけではない。会社員の場合、基礎控除と給与所得控除が差し引かれ、さらに社会保険料控除を受けることができる。
基礎控除は所得がある人すべてが受けられる控除で、収入にかかわらず所得税は38万円、住民税は33万円と決まっている。
給与所得は収入に応じて控除額が変わる。年収600万円の場合、収入金額×20%+54万円が控除額だ。
社会保険料は支払った全額が控除の対象となり、会社員の場合は厚生年金、健康保険、雇用保険をあわせて14.4%が目安の額となるが、勤めている会社や地域によって異なる場合もある。
これらを差し引きして課税所得を計算していこう。年収600万円の場合、給与所得控除は174万円、社会保険料は86万4000円だ。所得税の基礎控除38万円とあわせて差し引きすると、301万6000円が所得税の対象となる。
所得税の税率は以下の表を参考にしてみてほしい。
課税対象となる所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 9万7500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 42万7500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 63万6000円 |
900万円を超え1800万円以下 | 33% | 153万6000円 |
1800万円を超え4000万円以下 | 40% | 279万6000円 |
4000万円超 | 45% | 479万6000円 |
課税所得をこの表にあてはめていくと、税率は10%、控除額は9万7500円となる。計算すると「301万6000円×10%-9万7500円」で20万4100円が所得税の支払い額だ。
それでは不動産投資で損益通算し、50万円の赤字となった場合はどうだろうか。先ほどの課税対象所得額301万6000円から、50万円をさらに差し引きすることができる。つまり課税対象所得額が251万6000円に下がる。税率、控除額は同じで計算すると「251万6000円×10%-9万7500円」で、所得税額は15万4100円と5万円の節税となった。
・住民税の節税効果は
住民税についてもみていこう。住民税の基礎控除は33万円のため、課税対象所得額は306万6000円だ。
住民税は所得割と均等割の2つの部分に分かれており、所得割は基本的に全国一律で10%となっている。均等割は基本的に5000円前後だが、自治体によって異なる。均等割は収入がいくらであっても変わらないため、ここでは収入に応じて変わる所得割部分についてのみ、みていこう。
住民税の所得割の金額は「306万6000円×10%」で30万6600円となる。では不動産投資で損益通算し、50万円の赤字となった場合はどうだろうか。所得税の時と同じく50万円を引き、256万6000円が課税対象所得額となる。この10%であるから、所得割部分の税額は25万6600円と、5万円の節税となるのだ。
まとめてみると以下のような節税効果が得られる。
不動産投資をしなかった場合 所得税20万4100円 住民税(所得割)30万6600円
不動産投資をした場合 所得税15万4100円 住民税(所得割)25万6600円
所得税・住民税をあわせて10万円の節税ができるという結果となった。
さらに節税効果を高めるためのポイント
不動産投資をおこない、さらに節税効果を高めるために押さえておきたいポイントについても解説していこう。
不動産を赤字決算にし損益通算を利用する
不動産投資を節税につなげるには、投資の収益を赤字決算にすることが必要となる。そこで出た赤字を給与所得と損益通算することで、収入全体に対して節税することが可能となるからだ。
損益通算とは、ある所得で出た損失を、他の所得で得た利益と相殺することだ。不動産所得と給与所得は総合課税の対象となっているため、損益通算が可能となる。家賃収入と経費を計算し赤字にすることで、所得全体としては節税につなげることができるのだ。
ただし注意したいのが金融機関からの心象悪化である。不動産を購入する場合、ほとんどの個人投資家は金融機関で借入を行い資金を用意するはずだ。しかし不動産投資で赤字が出ている場合、次の借り入れが難しくなることもある。1件ではなく、さらに物件を追加して投資を行う場合、利回りなどを健全化しておかなくては借入できない場合があるため、その点も考慮しておこう。
・不動産売却に関する赤字は損益通算できない
同じ不動産から得られる所得であっても、不動産の売却代金は損益通算の対象とはならない。総合課税の対象となる不動産収入は家賃収入で、不動産を売却して得られる所得は譲渡所得に分類される。譲渡所得は他の所得とは分離し、個別で課税されるものだ。そのため不動産売却で損失が出た場合は、譲渡所得内で損失を計上できるが、給与所得や不動産所得と損益通算することはできない。
減価償却を活用する
損益通算をする際、活用しておきたいのが減価償却である。減価償却とは実際に現金を支払ったそのままの金額ではなく、所有している建物の価値が時間とともに減少することを計上したものだ。建物を所有していれば必ず計上できる経費であるから、キャッシュフローに悪影響を与えずに経理上は赤字にすることが可能である。
減価償却費は利用できる期間が決まっており、期間中毎年経費計上できる。建物を購入した際はこの金額を考慮して、キャッシュフローを計算しておくと良い。
国外の不動産に投資する
節税効果を期待して不動産投資を行う場合は、日本よりも海外の不動産に投資することもひとつの手だ。特に注目されているのがアメリカの不動産投資となる。
アメリカの不動産投資が注目される理由は、日本よりも築年数の経った木造建築でも、高い価格で売却しやすい点や、土地価格よりも建物の比率が高く、減価償却費が大きくとれる点などがあげられる。アメリカの経済は世界金融危機後長期にわたって景気回復が続いており、住宅市場も緩やかに増加していることから、日本よりも期待値が高い点もメリットだ。
ただし海外不動産は国内の不動産を購入するよりも自己資金が必要で、物件を見極めるのも難しい。ある程度資金に余裕がある富裕層向けの投資といえるだろう。
かしこく節税に取り組むためにデメリットも理解する
不動産投資を節税に使うにはデメリットもある。その部分を理解してかしこく節税に取り組んでいこう。
節税効果を狙いすぎると失敗することもある
節税には減価償却を活用することが有効ではあるが、節税効果だけを考えて不動産投資をすると失敗する場合がある。もっとも注意したいのがデットクロスだ。
デットクロスとは減価償却費がローンの元本返済額を上回ってしまった状態のこと。ローン返済額は返済を続けていくと少なくなる。それに対して減価償却費は一定の期間中、同じ額を振り分けて計上していく。ローン返済額が減ることで減価償却費が上回ってしまうと、帳簿上は黒字となる。そうなると他の所得に加えて不動産所得も計上され、節税どころか支払うべき所得税が多くなり、不動産経営での収支はマイナスとなってしまうのだ。
デットクロスを回避するには事前のシミュレーションが大切だ。ローン返済額、減価償却額、家賃収入、その他必要経費を計算し、しっかりとシミュレーションをすることでデットクロスを回避し、きちんと節税につなげておきたい。
税法のしくみを理解し節税にとりくむ
不動産投資を節税につなげるには、確定申告で不動産所得を給与所得等と損益通算し、支払うべき税金の額を全体として減らすことが大切だ。それにはまず確定申告をきちんとおこなう必要がある。そこで必要な経費などをしっかり計上することで、より節税につながるからだ。経費になるもの、ならないものをはじめ、損益通算できる所得とできない所得の違いについても確認しておきたい。
青色申告制度を利用するのもおすすめだ。この制度は、不動産所得、事業所得、山林所得のいずれかがある人が利用できるので、不動産投資をおこなっていれば可能だ。青色申告制度を利用すると最高65万円を控除することができるため、節税効果が高い。利用する場合は、その年の3月15日まで青色申告申請書を納税地の所轄税務署長に提出すること、正規の簿記を記帳し、賃借対照表を損益計算書とともに提出する必要があるが、メリットは大きいため一度検討してみてほしい。
不動産投資は高い節税効果が期待できる資産運用のひとつ
不動産投資は投資としての利益が狙えるだけでなく、節税効果も期待できる資産運用のひとつだ。分散投資のひとつとしてぜひ検討してみてほしい。(ZUU online 編集部)
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