分散投資先のひとつとして不動産投資を選ぶ個人投資家が増えている。不動産投資は節税にもつながる安定投資として勧められることもあるが、投資である限りリスクは必ず伴うものだ。より安定したリターンを得るために、不動産投資で想定しておくべきリスクと、対策方法を紹介しておこう。

不動産投資でリスクを想定する理由は?

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(画像=Brian A Jackson / Shutterstock.com)

不動産投資をおこなううえでリスクを想定する理由は、正しい収益をシュミレーションし、投資で利益を出すためだ。

投資では、株でもFXでも必ずリスクが伴う。不動産投資でもそれは同じだ。しかしあらかじめ起こりうるリスクを想定し、織り込んだうえで収益をシミュレーションしておくことで、より安定した投資ができる。

あらかじめ起こりうるすべてのリスクを考慮し、投資を成功に近づける正しい収益シミュレーションを立てて投資先を選ぶようにしておきたい。

不動産投資で生じるリスクと対策を紹介

では、不動産投資ではどのようなリスクが生じるのだろうか。起こりうるリスクと対策について紹介していこう。

費用

投資先となる不動産を購入する際、物件価格だけでなくさまざまな費用が必要となる。不動産会社が提示する想定利回りには、この諸費用が含まれていないことが多いため、あらかじめ織り込んで収益シミュレーションをおこなうことが大切だ。

不動産を購入する際にかかる費用には、以下のようなものがある。

・不動産仲介手数料
・税金
・銀行での融資手数料
・火災保険や地震保険の保険料
・司法書士への報酬

不動産仲介手数料は、物件を購入する際に不動産会社に支払う費用だ。売買価格が400万円以上の場合、「(売買価格×3%+6万円)+消費税」で求めることができる。ただしこちらは上限であり、交渉によって手数料を安く抑えることは可能だ。

不動産購入時にかかる税金は、印紙代、登録免許税、不動産取得税、固定資産税などがある。これらは購入する不動産の価値や価格によって異なるため、あらかじめ不動産会社に確認しておくとよい。

銀行での融資手数料はローンの申し込みをした銀行によっても異なる。定額の場合や、借入額の0.5~2%ほどを支払う場合など、それぞれ異なる設定になっているため、なるべく手数料が安い銀行を選ぶことがポイントだ。

火災保険や地震保険の保険料も決して安い金額ではない。しかし災害が起きた時の被害の大きさを考えると、きちんと加入することがリスク回避につながる。リスクを軽減するためにも、あらかじめ収益シミュレーションに保険料を織り込んでおくのがよいだろう。   司法書士への報酬は、必要書類の取得など、自分でできる部分は自分でやるようにすれば安く抑えることができる。しかし手間や時間がかかるうえ、専門的知識も必要となる。不動産仲介会社に自分で申請することを断られる場合もあるため、ほとんどの場合は必要な費用だ。不動産購入時の場合は5万円から10万円が報酬の相場となる。知人や親族などから不動産仲介業者を挟まずに土地建物を購入する場合は、自分で手続きをおこなって節約するのもよいだろう。

これらの費用をすべて合わせると、物件価格の8%から10%ほどになる。収益シュミレーションをたてる場合は、これらの費用も物件価格に加えておき、より現実的な利回りに近づけることが物件購入のリスクを減らすことにつながる。

欠陥・瑕疵物件購入

購入した物件に欠陥があったり、瑕疵があることも想定しておきたいリスクのひとつだ。投資のために購入した不動産物件に瑕疵があれば、想定していた家賃収入を得ることは難しい。物件を売却する場合でも、購入した時より価格が下がってしまう。

不動産投資で購入する物件には、大きく分けて3つの瑕疵や欠陥が想定される。まずは物理的な瑕疵だ。例えば建物の老朽化や建築時のミスで雨漏り、白アリの発生、耐震強度が不足しているなど、物理的な瑕疵や欠陥が生じているものがこれに当てはまる。

古いマンションや戸建てを購入した時だけでなく、新築や築年数が新しい大規模マンションでもしばしば欠陥が発覚することもあるのだ。例えば2015年に横浜の大型マンションで杭の打ち込みが足りていないことが発覚した事件は、記憶にある投資家も多いのではないだろうか。ある程度事前に物件を確認し、瑕疵や欠陥がないかチェックすることはできるが、壁の中や土台など確認できない部分もあり、すべての瑕疵や欠陥を見逃さないというのは難しい。

物理的瑕疵がある物件を買わないようにするには、購入前にしっかりと「物件状況確認書」をチェックすることが大切だ。一般的な不動産売買契約書では、売り主が買い主に対して負う瑕疵担保責任について、土地建物の4種類に限定しており、引き渡しから3カ月以内に請求があった場合は、売り主に修復義務を課すこととしている。4種類とは以下のようになっている。

・雨漏り
・白アリの害
・建物構造上主要な部位の木部の侵食
・給排水管の故障

この4点があった場合、瑕疵があったことを知ったときから1年間、買い主が瑕疵の存在に気付くことがなくても引き渡しから10年間は売り主に修復費用を負担してもらうことが可能だ。ただし瑕疵担保責任を負わないこととする特約や、瑕疵担保責任を負う期間を制限する契約を結んでいた場合は、そちらが優先されることもある。そもそも瑕疵とは、見えない部分の欠陥のことをいうため、物件をくまなく調べなければ発覚しにくく、買い主側に不公平となる。それを防ぐために、物件について正しく情報開示させるために作られるのが物件確認書だ。

物件状況確認書とは、売り主から買い主へ物件について知っていることを開示・交付するもので、買い主に伝えるべきとされる事実については、正確かつもれなく記載されることが望ましい。国道交通省も「宅建業法の解釈・運用の考え方(平成15年7月10日改正)」のなかにある、「不動産の売主等による告知書の提出について」の項目で、「告知書を提出してもらい、これを買主等に渡すことにより将来の紛争の防止に役立てることが望ましい」としている。

告知書に記載される事項としては以下のようなものがあげられている。

・新築時の設計図書等
・増改築および修繕の履歴
・石綿の使用の有無の調査の存否
・耐震診断の有無
・住宅性能評価等の状況
・建物の瑕疵の存否または可能性の有無
・過去の所有者と利用状況

売主は、土地及び建物について、瑕疵担保責任の範囲とされる4種類の欠陥以外でも、買い主にとって利用上や財産上の影響が及ぶ事項がある場合は、物件状況等報告書に記入し、説明しなければならない。調べていない、または不明な点は「知らない」と記載されるため、基本的には虚偽の説明はなされることはない。これをきちんと確認することで、雨漏りや白アリなどの欠陥をきちんと確認することができる。

注意したいのが物件状況等報告書に雨漏りが「ある」と記載されている場合は、瑕疵担保責任を売り主に請求することはできないという点だ。物件状況等報告書に瑕疵・欠陥が記載されており、売り主と買い主が捺印している場合、「物件の瑕疵・欠陥を了承して物件を購入した」ということになるからだ。物件購入の際はしっかりと確認することが大切となる。

次にあげられるのが心理的瑕疵だ。心理的瑕疵とは、その物件で自殺や殺人事件など、住むうえで気になってしまうような事柄があることをいう。こちらも物件状況等確認書の「事件・事故・火災等について」という項目で記載される。ただし記載すべき事柄が起きてからいつまで記載するべきかなどの明確な決まりはない。心配な場合は事故物件の専門サイトなどで確認しておくのもよいだろう。

最後にあげられるのが環境瑕疵だ。これは物件には問題がないが、周辺の環境に問題がある場合のことを指す。具体的には物件の付近に火葬場がある、騒音がある、暴力団事務所があるなどの場合だ。こちらも物件状況等確認書の記載事項になるが、購入前に自分できちんと確認しておくとよりリスクを減らすことができる。

空室

不動産投資で利益が出せるのは家賃収入が得られるからだ。しかし借り手がつかず空室のままでは利益が出せない。ローン返済がある場合は、収入がないのにローンの返済だけをしなくてはならず、マイナスになってしまう。空室は不動産投資において最も避けたいリスクだ。

空室でも支払わなくてはならない支出は、ローンの支払い額以外にも、毎月の管理費や修繕積立金などがある。これらの金額が借り手がつくまで毎月マイナスとなってしまうのだ。これらの支出がかさんでキャッシュフローが破綻してしまえば、最悪の場合物件を売却しなくてはならないことになる。

空室リスクを減らすには、まずは「借り手がつきやすい」物件を選ぶことが大切だ。最寄り駅からの距離はもちろん、駅の利便性、建物の設備、間取り、周囲の生活環境などを見て、「借り手がつくか」を検証していく。

もちろんすべてを満たす物件というのはなかなか見つからず、あったとしても物件価格が高額になりがちだ。しかしいくら価格が安く一見お買い得な物件であっても、借り手がつかないままでは収益フローは成り立たない。価格だけでなく立地や建物の状況など、借り手側の目線に立って吟味しよう。

購入前の実質利回り計算でも、空室リスクを想定しておくことが必要である。最悪空室が出た場合でも、数カ月から半年は物件を売却しなくても大丈夫なように、キャッシュフローを組んでおくとよい。

空室リスクを減らす方法として、賃貸管理会社の「空室保証サービス」を利用するという手もある。これは賃貸管理会社が入居者の有無にかかわらず毎月決まった家賃を保証する制度だ。家賃の徴収や部屋の管理なども賃貸管理会社がおこない、安定した賃貸経営ができるが、手数料や管理料を支払わなくてはならないのはデメリットだ。利用する場合は、あらかじめこの金額を含めた実質利回りをきちんと計算しておくことが必要となる。

家賃滞納

借り手がついたとしても、家賃をきちんと支払ってくれなければ不動産投資で収益をあげることはできない。家賃を滞納されてしまえば、空室と同じく収益はゼロになるどころか、ローンの支払い分マイナスとなってしまう。

家賃滞納のリスクを減らすには、まずは入居者審査を厳しくすることがひとつの手だ。勤務先や年収の確認を行い、親類を連帯保証人につけることで、滞納した家賃を請求しやすくする。連帯保証人がいない場合は保証会社をつければ、補償会社から家賃の補填をしてもらうことも可能だ。しかし入居審査を厳しくし過ぎることで、入居者が決まらず空室が出るリスクを増やすこともある。

もうひとつの手として賃貸管理会社に管理を委託することで、家賃滞納リスクを減らすことができる。管理会社に家賃の督促や徴収を任せることで、滞納があった場合に立て替えを求めることができる。委託する場合は家賃の5~6%の手数料を支払う必要があるが、管理の手間を省けてある程度の保証がつけられるため、一考する価値はある。

ただし借主がいる物件を前の売り主から購入した「オーナーチェンジ物件」の場合は、賃貸管理会社による家賃の建て替えをしてもらえなかったり、できても期間が短い場合があるため注意しておきたい。

家賃下落

築年数が経った、需要が低下したなどの要因で、所有している物件の価値が下がった場合、家賃を下げなくてはならないリスクがある。当初想定していた家賃よりも金額が下がれば、想定していた収益をあげることはできなくなる。

特に大きいのが建物の経年劣化だ。不動産物件の価値は建った直後が一番高く、年数が経過するごとに大きく下がっていく。賃貸物件市場でも同じで、新築物件は家賃を高く設定していても入居者が見つかりやすいが、一人目の入居者が退室し、次の入居者を探す場合、新築時と同じ家賃では入居希望者が見つからない場合もある。経年劣化によって平均的に1年で1%ずつ家賃が下落するといわれているほどだ。

その他、周辺環境の変化により需要が低下することで、周辺の同等物件の家賃が下落することもある。

家賃の下落リスクを減らすには、年数が経っても需要が高い物件を選ぶことがポイントだ。特に大きいのが立地である。駅から徒歩10分以内やターミナル駅へのアクセスがよいなど利便性が高い立地の物件は、築年数が経っても需要が見込めるからだ。逆に利便性が低い物件は、新築時はある程度入居者がつくものの、築年数が経てばたつほど家賃の下落リスクが大きくなる。

また入居者から人気の間取りを選ぶのも大切だ。バス・トイレ別、収納が多い、オートロック、宅配ロッカーなど、人気の間取りや設備がある物件であれば、ある程度の需要を保つことができる。

新築物件、築浅物件を購入する場合は、数年後の家賃下落リスクを見越して実質利回りを計算しておくことも有効だ。周辺物件で築年数が古いものを確認し、家賃相場をチェックすることで、どの位家賃が下がっても収益を出し続けることができるかを判断しておくと、より安定した不動産投資をおこなうことができる。

金利上昇

金利の上昇リスクも考えておきたい。不動産投資において、現金で物件を購入するよりもローンで購入する投資家のほうが多いのではないだろうか。家賃収入とローン返済額やその他諸経費を差し引きし、家賃収入の方が上回ることで不動産投資では利益を出す。

しかし金利が上昇し、ローン返済額が上がることで想定していた利回りが崩れてしまえば、収益が出せなくなる可能性もある。

金利の上昇リスクを減らすには、ローンを借りる際「固定金利型ローン」を選ぶのが有効だ。固定金利型ローンでは、返済期間すべて同じ金利となるため、金利の上昇リスクがなくなる。逆に変動金利型ローンでは、金利は半年に1回、返済額は5年に1回見直されるため、金利上昇リスクを受けることになる。

しかし固定金利型と変動金利型を比較すると、後者の方が金利が安い。変動金利型を利用しつつ、金利の上昇リスクを少なくすることはできないのだろうか。それを有効にするのが繰り上げ返済だ。金利が上昇した時点で繰り上げ返済をし、返済期間を短くすることで金利の上昇リスクを抑えることができる。

災害

火災、震災、津波などの災害は、避けようと思っても避けることは難しい。これらの災害で物件が全壊または半壊してしまうリスクもある。これらの災害をあらかじめ起きなくすることはできないが、リスク回避として保険を利用することができる。

保険加入時は、保険料はもちろん、どこまでの災害が補償されるかを確認しておこう。オーナー側が補償を受けたいのは「建物」を対象とする保険だ。家財を対象とする保険は入居者が加入するものとなる。

また物件選びの際に、これまで水害が起きていない土地であるか、建物は火災に強いか、耐震性はあるかなどを確認しておくことで、より被害にあう可能性を低くすることができる。

賃貸管理会社倒産

所持している不動産を管理会社に任せている場合、管理会社が倒産するリスクもある。倒産した場合は家賃や敷金などの費用が回収できなくなり、大きな損失が出てしまう。

リスクを減らすには、信頼できる管理会社を選ぶことが大切だ。資本金や経営状態がしっかりしており、管理内容も充実している会社を選ぶことで、ある程度リスクを減らすことができる。

事故物件

所持している不動産で事件や事故など「心理的瑕疵」につながることが起きるリスクもある。これらの事例が起こると、入居希望者が見つかりにくくなり、見つかったとしても家賃を減額しなければならない場合もある。マンションの一室のみを購入してオーナーになる場合は、マンション内の別の部屋で起きた事件や事故により、不動産の価値が下がることもある。

これらのリスクは防ごうと思ってもなかなか防げるものではない。リスクを軽減するには、保険に加入することや入居者の審査を厳しくすることなどがあげられる。万が一自分が所持している物件で自殺などの事件が起こった場合は、保証人や親族に損害賠償請求することで部屋のクリーニング代などを回収することができる。

もうひとつ有効となるのが、キャッシュフローに余裕を持たせておくことだ。空室リスクと同じく、事故が起きて家賃収入が途絶えた時や家賃を下げざるを得なかった場合、ある程度余裕を持ったキャッシュフローを組んでおけば余裕をもって対処できる。

借入金

不動産を購入する場合、現金で一括購入するのではなくローンを組む個人投資家が多い。投資であっても借入金を作ることで、返済が出来なくなるリスクを負っていることは忘れてはいけない。

借り手がつき、家賃が入っていれば返済ができるが、空室が続くなどして家賃が入らない状態が長期に続いては、返済が滞ってしまうことがある。返済ができなくなれば自己破産や任意整理などの債務整理が必要となる可能性もあるのだ。

借入金を負うリスクを減らすには、やはり余裕を持ったキャッシュフローを組むことが大切といえよう。空室リスクがあることも想定し、数カ月から半年空室が出た場合でも、ローン返済が出来るように資金に余裕を持たせることも大切になる。

不動産売却時

不動産投資で利益を出すのは家賃収入だけではなく、売却益を得ることも可能だ。ただし不動産売却時には購入時と同じくさまざまな経費が必要となる。売却益を計算する場合、これらの諸経費も入れておかなくては損失が出てしまうので注意しておこう。

不動産売却時にかかる費用には以下のようなものがあげられる。

・不動産仲介手数料
・税金
・銀行に支払う手数料

不動産仲介手数料は、不動産仲介業者に依頼して物件を売却した場合に支払う手数料だ。税金は印紙代や抵当権抹消登記の登録免許税、不動産譲渡所得税などがある。売却時にローンの残金があり、売却益でローンを一括繰り上げ返済する場合も手数料が必要だ。

流動

不動産投資には流動性リスクがある。それは「資産を換金したくともすぐにはできない」というリスクだ。株やFXと比較すると、不動産は売却するまでに手続きや期間が多い。資産を現金化したいと思ったとしても、数カ月から1年ほどかかってしまうこともある。借り手がついていない賃貸物件を所持している場合、手放すまでローン返済や管理手数料などの費用がかかり、マイナスの期間が続いてしまうリスクもある。

流動性リスクを減らすには、なるべく売却しやすい物件を選ぶことが大切だ。売却しやすい物件とは、他の投資家が欲しがる物件や、購入したいと思う人が出やすい物件になる。具体的には、利回りが相場よりもよい、賃貸需要が高い利便性の高さ、商業施設やオフィスが近く好立地な物件などがあげられる。

これらの物件は収益を上げるうえでも有効となる。つまり不動産投資のリスクを軽減するには物件選びが最重要であるといえるだろう。

リスクを正しく把握して不動産投資を成功させる

不動産投資には空室リスクをはじめとしてさまざまなリスクがある。それを知ったうえで、なるべく軽減するように努めることで、安定した収益を出すことにつながる。リスク軽減のポイントはそれぞれあるが、重要なのは実質利回りを厳しく計算し、余裕を持ったキャッシュフローをたてることと、借り手がつく需要が高い物件を選ぶことだ。この二つをきちんとおこなうことで、より安定した収益を出すことになる。

不動産投資のリスクをしっかりと把握し、それを踏まえた計画をたてて投資を成功させてほしい。(ZUU online 編集部)